水も滴る良い男「はぁ……すっごい…………」
ペたペた。
「なんでこんな……………うわっ……………」
ペたペたペたペた。
「やだもう、しんじらんない………………」
「……………………」
湯上り状態のノイルの顔があんまりつるぴかなのでうっとりペたペたさわっていたら、かなり強めに手首をがちっと掴まれてしまった。
「あっごめん!あまりに美肌なので興奮してめちゃくちゃさわっちゃった!だってすごすぎるよこれ〜!」
ひとりで騒いでいたら、ノイルは無言で髪を縛っていた紐を取って放り投げた。きれいな放物線を描いたそれが、離れたベッドに落ちる。
「ノイル?」
閉じた口をむいっと曲げたノイルは、そのまま手を伸ばしてきて、私の頬を両手でぎゅっと押しつぶした。
「ひゃ、ひゃひ?」
つやつやひかる、ほんのり上気した無表情のノイルが、私の顔でぺちぺちむにゅむにゅ遊び始める。
ははあなるほど。これは「反撃」なのだ。じゃあ私は粛々と甘んじて受けなければならない。
頬を左右から押しつぶされて、かと思ったら上下でプレスするみたいに頭と顎をわしゃわしゃ挟まれて、指でむにむにつままれて。
くすぐったいけど、面白さが勝ってうふふ、とわらってしまう。私はいっつもノイルにこれ以上ないぐらいていねいな触り方ばかりされてるから、こんなのって新鮮で、楽しい。
にこにこしていたら、ノイルがやや微妙な表情になった。うーん本当にきれいな肌。内側からひかってる。クロードとはまた違った系統の美人さんだよね、ノイルは。
「なあに?どうしたのノイル?」
「…………今どんな気分だ?」
聞かれて首を傾げる。
「えっと……いつもと違って『おもちゃで遊ぶ』みたいな触られ方で楽しいなって」
ノイルはそれを聞くと相好を崩し、ただちに「いつもの」触り方に変えてきた。
お風呂上りの高い体温のゆびさきで、耳の後ろをくすぐって、前髪をすいて、目じりをたどって、くちびるをなぞる。
そうなると私の身体も自動的に落ち着かない感じになってしまい、さっきまでの呑気さが嘘のようにぷるぷるし始める。
「な、なに〜…?そういう感じじゃなかったのに…………?」
既に息切れし始めた声でそう抗議したら、ノイルは目を細めて口角を上げた。湯上りのつやつやした、さわやかな微笑。髪から滴る水滴も相まってやけに色っぽい。
「……こっちはなぁ、最初から『そういう気分』になってんだよ」
ごめんなさいって言おうとしたけど、別に悪いことじゃないなって思い直して、私は弱々しく、ノイルの顔をぺち、とさわった。
「はい、たいへん申し訳ございませんでした……えっと、その、こちらももう完全に『そういう気分』です、よろしくお願いします……………」
ぼそぼそ言って腕を伸ばしたら、ベッドに連れていくために、ノイルが私をしっかり抱き抱えてくれた。