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    お絵描き練習

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    7話のせいで未来捏造したラン暦。プロボーダーランガ×メカニック暦
    モブ女視点ですがただの当て馬なのでご安心ください。

    元ネタ:Rihanna「Don't Stop The Music」

    #ラン暦
    lanreki

    姿見に映る自分を見ながら、あたしは自分自身に魔法をかける。
     素肌に下地を塗り、薄くファンデーションを乗せる。散らばるそばかすは、コンシーラーとコントロールカラーで隠せばもう完璧。
     まぶたの上にはラメのたっぷり入ったゴールドのシャドウ。目を大きく見せるためにラインは欠かせない。黒いマスカラを睫毛に乗せれば、相手を射貫く大きな目の出来上がり。
     唇には全体をうるうるに見せるリップを塗る。目をしっかりとメイクしたから、唇は少し控えめに。でも、キスしたくなるほど魅力的な唇になるように、細心の注意を払う。
     チークを乗せてハイライト、そしてシェーディング。さりげないところも完璧に。それがあたしのモットー。眉も凜々しく見えるように整えて、ケアしたあとのブルネットの髪にアイロンをあてる。上手くカールさせれば、ボリュームのある艶めいたパーティヘアの出来上がり。
     背中を大胆に見せたミニのドレスに、ママから借りたジミーチュウのパンプスを履けば、イケてるセクシーな女の子が姿見に現れた。小さなパーティーバッグにスマホと財布をインして、あたしは胸を弾ませながら家を出た。
     これは一世一代のチャンスよ。夜が訪れたカリフォルニアの街をタクシーで疾走しながら、あたしはぐっと拳を握った。それというのも、今のカリフォルニアは八月。あたしが待ちに待ったXゲームスが、この地元で開催された。
     Xゲームス。年に一度開催される、エクストリームスポーツの祭典だ。全世界のエクストリームスポーツファンが、この大会に注目する。人類がかねてからの感染症を克服したのちに初めて開催された試合は、かつてないほどの盛り上がりを見せた。
     それに一役買ったのは、ここカリフォルニアから遠く離れた、日本からやってきた選手だった。すでに故国である日本では注目されていたらしいその選手は、並み居るプロを軽々と追い抜き、テクニカルなトリックを次々と決めて表彰台のトップに躍り出た。
     ランガ・ハセガワ。それが彼の名だった。イエティのようなモンスターの描かれたボードを持って、表彰台の上に現れたその姿に誰もが目を見開いた。薄く色づいた雪を思わせる髪に、それと同じ色の瞳。すらりとした長身は白人のようだったが、その顔立ちにはどこかオリエンタルな色気があった。彼がカナダ人と日本人の混血だと知ったとき、あたしは大いに納得したものだ。
     そして同時に、欲しい、と思った。選手の中でひときわ目立つ容姿と、天賦の才を持つこの男を。彼には、あたしの心を奪うだけの魅力があった。
     幸い、あたしのパパが経営する会社はこの大会のスポンサーにエントリーしていた。そのツテをたどり、あたしはこの街の繁華街にあるナイトクラブでの約束を取り付けた。あの場所はあたしの行きつけで、もはや庭のようなものだ。こちらのテリトリーに入れてしまえば、あとはあたしが手取り足取り、彼をもてなせばいいだけ。
     今まで、男たちはあたしの容姿と言葉にひざまずいた。ランガ・ハセガワ。いったい彼がどういう反応をするのか、興味がある。
     タクシーを下り、あたしは地下へ向かう階段を下りた。カツカツとヒールが鳴る。きらめくネオンに彩られた入り口を開けると、大波のような大音量の音楽があたしを震わせた。聞こえるのは、あたしが大好きなアーティストが歌っているダンスナンバーだ。
     ああ、最高よDJ。音楽がずっと止まないようにと祈りながら、あたしはフロアへと歩き出した。きらきらと明かりを反射するミラーボールに、体を密着させて踊る男女。あたしももうすぐ、このフロアで踊っている群衆の中へ加わるのだ。もちろん、あのランガ・ハセガワと。
     フロアを横切った場所にあるカウンターに、ひときわ目を惹く後ろ姿があった。シャツをまとったその上からでもわかる鍛えられた体。目立つ薄青の髪をキャップで隠しているが、体から立ちのぼるオーラは隠しようがない。
     あたしはカウンターに近づき、薄青の髪の持ち主に声をかけた。
    「ランガ・ハセガワ?」
     音楽の大音量の中でも、その言葉は届いたらしい。髪と同じ色の目線があたしに向けられる。彼はカウンターの上のグラスを一口傾け、イエス、と一言言った。よく見ると、彼の飲んでいるものはただのコークらしい。あたしがアルコールの味を教えてあげるのも悪くない。
    「誰?」
     彼が言う。思ったより平坦な口調だ。まあ、こんなものだろう。日本人はシャイだと聞くし、しばらく日本で暮らしていたらしい彼もそうなのかもしれない。あたしはにっこりと笑って声をかけた。
    「暇そうね。ここ、ナイトクラブなのに」
     あたしは質問をうまくはぐらかして、彼に問いかけた。彼はまたグラスを持ち上げ、いやそうに眉を寄せて吐き捨てた。
    「ほんとは嫌だったけど、行かないとダメだって言うから……連れてこられたんだ、レキに」
     子どものようにふくれて、彼はカウンターの上にあったタコスチップスを頬張った。見ると、そこには山積みになった皿があった。これを全部食べたのだろうか。少し気圧されてしまったが、ここでへこたれるあたしではない。気を取り直し、ふくよかな胸を強調しながら彼に身を寄せた。
    「あら、レキって誰?」
    「こい……いや、俺のボードを調整してくれる人」
     あたしはそれを聞いて納得した。パパからの情報によれば、ランガにはボードの調整やメンタルの安定を図ったりなど、影で細々としたサポートをこなす相棒がいるらしい。どうやらライバルではなかったようだ。それならこの場所はあたしの独壇場。アップテンポなナンバーの中、あたしのテンションは最高潮にアガってくる。
    「ねえ、あなた、ランガ・ハセガワでしょう? 素晴らしい試合だったわ」
    「……どうも」
     控えめな礼がかわいらしい。余計に落としたくなった。あたしは彼の肩に少しだけ寄りかかるようにしながら話しかける。ここで完全にしなを作らないのがコツだ。媚びすぎる女は嫌われる。
     ランガがちら、とあたしを見た。雪の結晶みたいな瞳は、間近で見るとやっぱりきれいだった。
    「こんな場所で会えるなんて嬉しいわ」
    「…………そう」
     そう、そのままあたしを見て。とびっきりの服とメイクで仕上がったあたしを。このあたしになびかなかった男なんて、今までいなかったのだ。
     ランガがあたしをじっと見ている。そう、それでいい。
     今度こそあたしは彼にしなだれかかろうとして――
    「ごめん。それ以上近づかないで」
     ――は?
     あたしは耳を疑った。近づかないで? それはどう聞いても拒否の言葉だった。まさか、そんなはずは。世界一のスケートボーダーをものにするという、あたしの計画が崩れていく。
     ふと気配を感じて、あたしは振り返った。少し離れたフロアの隅に、赤い髪にバンダナを巻いた男が立っているのが見えた。まさか、ランガが見ていたのはあたしではなく、この男だったのだろうか?
     ロゴの入ったパーカーにオーバーサイズのジーンズ。どこかのスケートボーダーだろうか? 日本人だろうか、中国人だろうか。それすらわからず、あたしは黙ってその男が近づいてくるのを見ていた。
     赤毛の男はつかつかと歩み寄ると、あたしから距離を取ったランガの目の前に立った。その目は何を映しているのかわからない。するとランガは、今までのクールな表情が嘘のようにおろおろとし始めた。
    「レキ、違うよ。たまたま話してただけだから。俺の試合が良かったって、それだけだから……ん!」
     あたしは目を疑った。
     レキと呼ばれた赤毛の男が、突然ランガにキスをした。それはすぐに深いものになっていく。男は角度を変えて何度も彼に口づけ、執拗に舌を絡ませた。フロアのナンバーが最高潮に盛り上がるのに合わせて、二人のキスも激しくなっていった。
     ダンスナンバーの歌詞は、あなたとの一夜は最高だというエロティックなものだった。その歌詞を象徴するように二人はキスを交わし、音楽が止んだ瞬間にそれは終わった。赤毛の男がびくりと体を震わせた瞬間、二人の顔は離れた。
     不意打ちのキスに、ランガがぽかんとしながら息を切らしていた。それは赤毛の男も同じだった。サイバーな色をしたライトに、ランガの唾液で濡れた唇が反射した。それは丁寧にメイクを施したあたしよりも――圧倒的にいやらしく見えた。
     男の赤い目があたしをまっすぐ見る。レキと呼ばれた男は、少し眉を下げて言った。その表情は、女のあたしでさえも胸が高鳴るものだった。
    「――ごめんな。こいつ、俺のなんだ」
     それだけ言って、男はランガの手を無言で引いた。
    「レ……レキ、」
     はずみでコークの入ったグラスが倒れ、床を汚した。だがそれにもかまうことなく、二人は音楽のやんだダンスフロアを横切るように去っていった。
     コークのこぼれたカウンターに残されたあたしは、口をあんぐりと開けながらその場に留まっていた。目の前で繰り広げられた光景に、頭がついていかない。
     唯一わかっているのは、あたしは始まる前から負けていた、ということだった。
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     これは一世一代のチャンスよ。夜が 3717

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