Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    Hana

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    Hana

    ☆quiet follow

    君はペテン師⑤の没案「まったく、小人閑居しょうじんかんきょして不善ふぜんす、とはこの事だな。自分を小人と言うのは、心楽しくはないが」
    「え、と、カインそのショウジンカンキョシテって、どういう意味だ……?」
    「ああ、ロック君には馴染みのない言葉だったかな。人間、暇を持て余すと良くないことをしがちだろう?」
    「まあ、確かに」
     ロックの脳裏に、休日、ファストフードをお供に日がな一日にテレビゲームに勤しむテリーの姿が浮かぶ。
    「だから暇な時こそ、自己を向上させる努力をするべきで、それを怠ると悪い方に向かってしまう。そういう意味だ。一週間程度の先行で、休もうと思った私の慢心が、この様な事態を引き起こしたのだ。本当に申し訳ない。今後は進められる分はどんどん進めて……」
    「休めよ!」
    「いや、しかしだな。また同じことを繰り返す訳にはいかないだろう?」
    「あのさ、そういう時は誰かに話せばいいんじゃねぇ?確かにマフィアのボスって、威厳とか?そういうの大事なんだろうけど、俺は甥だし、部下じゃないから、だから……寂しいとか辛いとか、ちゃんと言えよ。そういうの聞いたってカインが、俺の…………な、叔父さんってことは変わんねぇよ」
     耳まで赤く染めて言うロックにだけ聞こえるように、ボックスはささやく。
    「ロック、何で大事なとこ省いちゃうの?言ってあげなよ。カイン喜ぶよ」
    「わ、わかってる。今度、ちゃんと言うよ」

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    Hana

    MEMO※あくまで私の主観です。他の方の考察や意見などを否定するものではありません。
    カインの生き様と理想について カインの理想の原点は七歳の時、一人の少年が理不尽に命を奪われるところを目撃したことでした。単なる憂さ晴らしで複数人からリンチを受け、無抵抗でやり過ごそうとした少年。耐えていれば終わる……そう思って戦わず命を落とした少年。それは自分だったかも知れない——カインはそう思ったのではないでしょうか。海の見える丘に手厚く葬ったのは、その少年であり、自分の弱さだったのでは。そう私は思いました。
    「こんなところで朽ち果てるなんて……俺は嫌だ!」
     それは命に貴賎のあることへの純然たる怒りで、同時に、カインの燃えるような生命のきらめきが生まれた瞬間であったように思えます。


     カインにとって「足掻く」とは「生きる」ことそのものを指すのでしょう。だから年相応の落ち着きを見せるテリーやビリーに対し、落胆の気持ちを隠しきれないのだと思います。あの“伝説の狼”テリー・ボガードや、「歩く凶器」と呼ばれた“帝王の右腕”ビリー・カーンでさえ、足掻くのをやめるのか、と。同時に自分もいつかそうなるのだろうかと疑問を持ち、「いや、俺は違う」と、決意を新たにするのだと思います。カインの中にはずっと、あの日葬った少年と、自分の弱さ、黙って陰から見ていることしか出来なかった無力さ、その屈辱が、身を焦がす程の熱量で渦巻いているのだと。
    2530