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    Hana

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    Hana

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    ※あくまで私の主観です。他の方の考察や意見などを否定するものではありません。

    カインの生き様と理想について カインの理想の原点は七歳の時、一人の少年が理不尽に命を奪われるところを目撃したことでした。単なる憂さ晴らしで複数人からリンチを受け、無抵抗でやり過ごそうとした少年。耐えていれば終わる……そう思って戦わず命を落とした少年。それは自分だったかも知れない——カインはそう思ったのではないでしょうか。海の見える丘に手厚く葬ったのは、その少年であり、自分の弱さだったのでは。そう私は思いました。
    「こんなところで朽ち果てるなんて……俺は嫌だ!」
     それは命に貴賎のあることへの純然たる怒りで、同時に、カインの燃えるような生命のきらめきが生まれた瞬間であったように思えます。


     カインにとって「足掻く」とは「生きる」ことそのものを指すのでしょう。だから年相応の落ち着きを見せるテリーやビリーに対し、落胆の気持ちを隠しきれないのだと思います。あの“伝説の狼”テリー・ボガードや、「歩く凶器」と呼ばれた“帝王の右腕”ビリー・カーンでさえ、足掻くのをやめるのか、と。同時に自分もいつかそうなるのだろうかと疑問を持ち、「いや、俺は違う」と、決意を新たにするのだと思います。カインの中にはずっと、あの日葬った少年と、自分の弱さ、黙って陰から見ていることしか出来なかった無力さ、その屈辱が、身を焦がす程の熱量で渦巻いているのだと。
     テリーとビリーに対して、カインは元々悪印象はなく、それぞれに敬意を抱いていたと思います。だからこそ、ある部分においては、強く否定しなければならなかった。「足掻けなくなる」ことは、カインにとって「生きていると言えなくなる」ことだったから。その人達を超えて、ずっと先に進まなければ未来はない。そう考えたのかも知れません。


     カインは外見の優雅さに見合わず、夏の陽射しのような苛烈かれつさを持つ人間です。だから「七歳の自分に出来たことが、何故お前達には出来ない」と思うような、他者にも覚悟を示すよう求める部分はあると思います。そのはげしさを受け止め、包んでいたのがグラントで、そのことはカインも自覚していると思います。そしてそれが失われつつあることも。
    「グラント亡き後に、自分は足掻き続けることが出来るのか?」
     その不安はあったと思います。グラントがいたからこそ、カインは全力で足掻き、戦うことが出来ていた。二人一緒ならどこまでも飛べる、そう信じた七歳のあの日の誓い。グラントが自分の人生全てを与えてくれたことを知るカインは、片方の翼をもがれ、それがどれだけ辛くても、飛び続けなくてはいけない。それこそが、誓いを果たしてくれた親友以上の友、半身であるアベルに報いる唯一の道だと——そう思っている気がします。


     でもカインは、孤独になったわけではなく、グラントが託した弟子のボックス、甥のロック、協力関係にあるビリーが、それぞれの立ち位置、それぞれの距離感で立っています。カインが彼らとどう関わり、親交を深め、彼の足掻き方がどう変化するのか。あるいは、変化しないのか。そこはまだ未知数ですが、もしテリーの言っていたことをカインが受け入れるならば、その変化はロックにしか起こせないと思います。
     ロックは母メアリー、養父テリー、実父の側近であるビリー、そして叔父であるカイン本人から愛情を受けています(※ギースに関しては、秘伝書が見せたものであり、真偽が確定していないので省いています)。そしてギースとテリー、性質の異なる二人の強さを受け継いでいる主人公です。
     カインの過去は決して「可哀想」なものではなく、また、カインの誇り高い生き方の原点であります。だから単純に「大変だったね」と同情を示せば、それはカインをひどく傷つけることになります。そうではなく、幼い頃から戦い続けたカインに敬意を示し、その上で「そっちじゃない」と引き留められる。それはロックしかいないのではないでしょうか。
     恐らく生後間もなかったロックがスラム街で生きていけたのは、カインとアベルが得たチップにるものでしょうし、幼少期を過ごしたのがサウスタウンだったのも、カインがパパスから受け取った支度金でまかなった、そう私は考えています。そのことに気づかないロックではないと思うし、気づいたら全力で叔父であるカインを止めると思います。
     カインの生来の気質は悪い人ではなく、そのカインが敵を作ったり、そのほのおの烈しさで自らをくことをロックは望まないでしょうから。
     自分の道を模索するロックですが、どちらかを選ぶのではなく、テリー達のいる陽の当たる世界と、父ギースや叔父のカイン、ビリーやボックスのいる裏社会。その両方をロックはつなぐことが出来るのでは、と、思います。他の都市ならともかく、「欲望の街サウスタウン」と「自由の街セカンドサウス」であれば、(勿論最低限の治安という意味での正義は必要でしょうが)単純な善悪だけではない社会構造を生み出すことが可能なはずです。
     ロックが全力でカインと向き合った時、カインは七歳の時に感じた無力感、屈辱、そして「足掻き続けなければ生きていけない」と自らに課した呪縛から解放されるのではないでしょうか。勿論、カインはそれ以降も足掻き続けると思いますが、その足掻き方がそれ以前と変わってくると思います。僅か七歳で悟るような頭の良さに、テリーが望む「人を信じる心」が加われば、それぞれに合った熱量、それぞれに合った速度で、足掻くことが出来る世界——そういったものを作ることが出来るかも知れません。
     それはグラントとの誓いとは少し違うとは思いますが、そのことをグラントが責めることはないと思います。グラントはカインがカインらしく、生き生きと目標に向かって邁進している姿を、何よりも貴重に思っていたでしょうから。


     カインが抱える矛盾は、彼が誰よりも真摯しんしに生きてきた証だと思います。今後の展開で解消されるものもあれば、変わらず抱え続けていくものもあると思います。そのどちらもカインを語る上で欠かせないもので、そこを含めてこれからも見守っていきたいと思いました。以上です。
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    Hana

    MEMO※あくまで私の主観です。他の方の考察や意見などを否定するものではありません。
    カインの生き様と理想について カインの理想の原点は七歳の時、一人の少年が理不尽に命を奪われるところを目撃したことでした。単なる憂さ晴らしで複数人からリンチを受け、無抵抗でやり過ごそうとした少年。耐えていれば終わる……そう思って戦わず命を落とした少年。それは自分だったかも知れない——カインはそう思ったのではないでしょうか。海の見える丘に手厚く葬ったのは、その少年であり、自分の弱さだったのでは。そう私は思いました。
    「こんなところで朽ち果てるなんて……俺は嫌だ!」
     それは命に貴賎のあることへの純然たる怒りで、同時に、カインの燃えるような生命のきらめきが生まれた瞬間であったように思えます。


     カインにとって「足掻く」とは「生きる」ことそのものを指すのでしょう。だから年相応の落ち着きを見せるテリーやビリーに対し、落胆の気持ちを隠しきれないのだと思います。あの“伝説の狼”テリー・ボガードや、「歩く凶器」と呼ばれた“帝王の右腕”ビリー・カーンでさえ、足掻くのをやめるのか、と。同時に自分もいつかそうなるのだろうかと疑問を持ち、「いや、俺は違う」と、決意を新たにするのだと思います。カインの中にはずっと、あの日葬った少年と、自分の弱さ、黙って陰から見ていることしか出来なかった無力さ、その屈辱が、身を焦がす程の熱量で渦巻いているのだと。
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