〜起きない五条を奥の手(彼女)を使って起こす話〜 「す、すみませんっ!!!」
私の顔を見るなりペコペコと高速謝罪をする伊地知さん。そんな彼に大丈夫だと告げ、呼び出された原因へと近づく。
(うん、これは嘘寝だな)
頭の後ろで手を組み寝ている五条。そんな彼を見て、まったく……と苦笑いする。
ここまで駄々をこねるのは珍しい。
まあ、出張が終わり、やっと半日ではあるが休みが取れたのに急遽任務が入ってしまったからだろう。
「悟君、起きて。任務行かなきゃ」
ゆさゆさと彼の体を揺する。後ろで伊地知さんが電話をしたりパソコンを触っているから相当時間が押してるのだろう。
もう一度、ほら起きてと彼に呼びかけると、「僕、まだ寝てまーす」となんともハッキリな声で返ってきた。
「いや、それもう起きてるから」
「寝てるもん」
「起きてる」
「寝てる」
なんだこのやりとり。
むしろこの状況を楽しんでいるようにも見え、なんか気に食わない。思わず彼のほっぺをムギュッとつねると、「んふ、もっとやって」と逆におかわりされた。
もっとじゃない!
「伊地知さん、困ってるよ。早く起きなきゃ」
「お前は僕より伊地知をを取るんだ」
「(なんだその修羅場前のセリフは……)違うよ。悟君の立場が悪くなるのが嫌だから言ってるの」
「いーもん、別に。いまさらだし」
彼はそう言うが私は嫌だ。ただでさえ敵味方関係なく目をつけられているのに、彼を悪く言われるのはツライし悲しい。彼がどんな気持ちで教師になったか。全て自分で解決できるけど、あえてセーブしている大変さなど、何も知らない奴らに言われるのは納得がいかない。
“もっと自由に……”
そう願っているくせに、今の私でさえ彼を縛りつけている。
「……ごめんね」
思わず謝る私に、なんで謝るのと返ってくる。
「ほんとはもっと休みたいだろうし、自由になりたいだろうと思ったから……」
そんな願いを少しでも叶えてあげることができないなんて、彼女として失格だな……。思わずネガティブモードに入っていると、澄んだ青がこちらを見ていた。
「お前が謝ることじゃないよ。僕が好きでやってるんだから」
「そうだけど……それでも……」
「じゃあ、帰ったらいっぱいイチャイチャさせて」
「……うん。わかった」
「一緒にお風呂入りたい」
「うん」
「その後、アイスも一緒に」
「うん。わかった」
「あと、いっぱい激しくしたい」
「……うん、がんばるね」
やっと起き上がった彼。
これでもう大丈夫だろう。伊地知さんと共に部屋を後にする彼の背に、いってらっしゃいと言った。
その後。
約束通り一緒にお風呂に入りアイスも食べ、そして、何度も気絶するほど愛されたのだった。
おわり。