〜五条、お喋りインコのせいで誤解される〜 「ア、モシモシ〜」
ふと聞こえてきた声。
すこし高音で裏返ったその声に、誰?と、声の先を見ると、そこには小さくてまるまるとしたインコがいた。わぁ〜、かわいい。どこの子だろう。近寄るとインコちゃんからも近寄ってきてくれて、頭を撫でながら挨拶をした。
「こんにちは。散歩でもしてるの?」
言ってみたものの、インコを放し飼いするなんて聞いたことないなと気づく。飼い主さんには許可は取った?と、返ってくるはずもないのにまた話しかけると「ア、ソレハダイジョウブデス」と返ってきて、思わずむせた。
「そ、そうなんだ……でも、外は危ないよ?」
「ソウデスネ」
「(ほんとにわかってるのかな?)お家わかる?一緒に帰ろ?」
「ハ」
……え、今、は?って言わなかった?
急に口が悪くなったインコちゃんに情緒がついていけず顔が無になる。
(怖いよ、インコちゃん……)
そんな私とは裏腹に、インコちゃんは楽しそうに体をユラユラ。リズムに乗ってピョピョと鳴いていて。このままにしているのは良くない。でもどうしたら……悩んでいると、ブルブルッと震えた携帯。
「さとる君だ!」
ポチッと画面をタップすると、今どこにいるの?というメッセージが書かれており、それに返事をしていると、
(……ん?この声)
聞き覚えのある声がした。
「……え、今、ナナミ君の声がしたのに」
でも彼はどこにもおらず。それどころか自分以外、人の気配がしない。どういうこと?首を傾げていると、答えはすぐにわかった。
「ロウドウハ クソデス」
「グフッ!!」
ちょっと待って、インコちゃん……!!
ナナミ君の声で労働はクソという言葉を吐くインコちゃんに、肩がぷるぷる震える。
(どこで覚えたの、そんな言葉……!!)
そんなことより、どうしてナナミ君を知ってるの……!!まさか共通の人物がいるとは思ってもみず。これはもうナナミ君に聞いた方が早いなと、さとる君にメッセージを送ったあと、彼とのメッセージ欄を開いたら、インコちゃんがナナミ君の声で、どんどん言葉を吐いていった。
「マッタクアノヒトハ……」
「ゴジョーサン、ヤメテクダサイ」
「コレイジョウハ……ア、」
ちょっと待ってッッッ!!!
なにこの展開!?
脳内でよろしくないことが浮かび、パニックになる。その間もインコちゃんは、「カノジョニモウシワケナイデス」とか言っていて、もうダメだと携帯を開いて彼に電話をかけた。
『あ、もしも』
「さとる君のばかー!!!」
『え、え!?なに!?なんで怒ってるの!?』
おわり。