人はそれを彼氏面と呼ぶカフェのバイトを終え店の外に出ると、よく見知った無駄に顔がいい男が「来ちゃった~」とヒラヒラと手を振ってきた。
それを無視してその男―不破の前を横切ると「ちょっと待て、待て」と慌てた様子もなく不破は後ろをついて来る。
「いい加減にしろよストーカー。最近バイトの度に外で待ってるとかまじうざい」
そう言いながら振り返ると思ったより近くにいた不破に内心びっくりする。
「二階堂、ちょっと我慢して」
耳元で囁かれた後、肩に腕を回された。
突然のことに「はぁ?」と睨みつけると、絶対面白がってニヤけた顔をしてると思ったのに不破は真剣な顔‥というより怒気を含んだ表情だったので更にわけがわからなくなる。
「お前、突然なに‥」滅多にこんな表情をみせない不破を前にして語気が弱くなってしまう。
1938