「黎明、お前は神を愛しているな」
「凄いしみじみと言うじゃん。何?悪い夢でも見た?」
「お前が……いや、天堂弓彦が叶黎明を止められず、叶黎明が天堂弓彦を止められない夢を見た」
「うっわ。えー、夢の中のユミピコちゃんとオレを止めろよ。カミサマなんだろ」
「お前自身ではなく神を責めるのか」
「んー、だってユミピコはオレのこと好きだろ。オレもユミピコのこと好きだから止めてやってんの」
「話が見えん」
「気づいてねーの?珍しいな」
「お前、オレを止めるの諦めただろ」
「……ああ、そうだな。私は諦めたのか。ならあのような苦痛を受けるのも当然だな」
「どんな目に遭ったんだよ(笑)」
「覚えていたら後で聞かせてやる」
「黎明、神はお前を愛している。お前と永く共にありたい」
「ならオレのことちゃんと止めろよ」
「お前こそ、その時がきたら神を止めろよ」
「もちろん!オレだってユミピコとずっと一緒にいたいし、ユミピコのこと愛してるからな!」
「胡蝶の夢という言葉がある」
「今オレ達がいる現実がどっかを飛んでる蝶の夢かもしれないってやつだっけ」
「そうだ。お前はどう思う?」
「ありえねーって思うな。だって今こうしてオレは意識もはっきりして自分の意思で自由に動ける。夢ってもっと不明瞭で不自由なもんじゃん」
「それを誰が証明できる」
「オレが証明できるね。オレはこれが夢じゃないと断言できる。だって」
黎明の腕がいきなり眼帯の方へと伸びる。それを掴み、睨み付ければ、事も無げにニヤついた笑みを浮かべられた。
「ほら、今ユミピコに握られた手首がこんなにも痛い」
「お前は痛みを現実と夢の違いとするわけか」
「ユミピコは何を違いとしてるんだ?」
「違いなどない。お前と話している今が夢か現か幻か私には分からない」
「じゃあどうすんだよ」
「どうもしないな。この世が幻想だとして何が困る」
「……で、なんでそんなもん持ち出してきた。何か言いたいことがあるんだろ」
「何が目的か分からんが、今のお前は妙に優しい。」
「だから弱音を吐いてみたくなった」
「……これが弱音って」
「お前の弱音も大概だ」
「んなことねぇと思うけど」
「黎明」
「私は神だ。なぜか分かるか?」
「オレユミピコのこと神様だと思ってないから分かんない」
「ふふ、信仰心が足りんな」