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    kinakonakonaki

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    kinakonakonaki

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    一郎をそういう目で見たことはなかったが、イコール、恋愛対象外というわけではなかった空却の話

    #いちくう
    ichikuu

    ハピエンは確定事項『さすが一郎!!拙僧の認めた男だぜ!!』

    ばんばん!!と一郎の背中を叩いて笑う空却を、一郎はぼんやりと見つめた。思えば、それが初恋だったのだろう。


    ───近い。

    連絡もよこさずイケブクロにやってきた空却は、山田家のリビングで一郎に遠慮なく寄りかかりながら寛いでいた。一郎の体を背もたれにして───つまりは、床に座る一郎が空却を背中から覆うような体勢。腕を前に回せば、後ろから抱きしめる形になる。流石に抱きしめるのはアレなので、一郎の両手は結果的に所在なく床に掌をついて自分の体を支えるしかなかった。

    「…なぁ、空却、お前昔から俺を椅子にするよな」
    「おう、ちょうどいいサイズでいい感じだわ」
    「そういうことじゃねぇよ」

    昔からパーソナルスペースなんてあるのかってくらい、距離を詰めてくることが多かった。それは一郎限定というわけでもないのだが、それでも、一郎には特別距離が近いように感じる。

    ───これって、脈あり、ってことか?

    一郎は空却のことが好きだ。それははっきりと恋愛対象として。イケブクロで組んでいた時は自覚はしていなかったが、こうしてまた予定を合わせて会うようになってから、徐々に好きだなぁと思うようになってきた。親友、相棒だけでは足りない。自分を優先して欲しい、自分だけに許して欲しい、そんな感情をさらけ出すには、もうひとつの呼び名が必要だ。

    「…なぁ、空却。俺さ…」
    「あん?どうしたよ、一郎」

    一郎の真剣な声色に気付き、くるりと体の向きを変える。片手を肩に置き、覗き込むように一郎の顔を見た。真っ直ぐ、一郎の言葉を受け止めようとする。これもまた、昔から変わらない。横暴で無茶苦茶な態度とは裏腹に、器が大きく優しい。きっとこの想いが叶わなかったとしても、軽蔑したり離れたりすることはないと思わせるようなものがあった。

    「空却のこと、好きだ」
    「!」

    一郎の言葉を、きちんと"そういう意味“であることも含めて受け取ったようだ。猫のような金瞳が不意を突かれて見開かれている。ダメ押しにこちらからも覗き込むように顔を近づける。断られる要素なんていくつも浮かぶけれど、それと同じくらい期待してしまう自分がいた。


    【空却side】

    一郎の家に遊びにきて寛いでいたら、突然告白された。ダチとして、という意味ではないことは流石にわかる。──が。

    いや、まぁ…マジかこいつ。

    一郎のことは好きだし、親友で相棒で、他のダチとも言える奴らとも違う、一郎が特別だという気持ちはある。けれど、それは恋愛感情とかでは決してない。あくまで友情、マブダチとしての感情だ。

    そもそもこちとら悪僧とはいえ僧侶だぞ。恋愛感情なんていう煩悩の塊、持ち合わせてはいない。───はずなのに。

    「…好き、なんか、拙僧のこと」
    「ああ、好きだ」
    「…ふぅん…」

    悪い気はしない、なんて思ってる。だって相手は一郎だ。イケブクロの頼れるBBで、正義感があって真っ直ぐで、己の意思を貫く強さがあって、喧嘩もラップもクソ強い。こちとら最初に出会った頃からその魂に惚れ込んでいるのだ。そんな奴から告白されて、嬉しくないやつなんかいるか?

    一郎は拙僧の言葉を待つように、黙ってこちらを見つめている。

    ああ、くそ。ツラまでいいときてる。

    体格にも恵まれていて、現在進行形で自分を抱える長い手足も、背中を覆う逞しい体も魅力的だ。少々オタク趣味とやらが鬱陶しい時もあるが、それも可愛げがあるってもの。本人が気づいているかは微妙だが、組んでる時から一郎に熱い視線を送る女はたくさんいた。その気になればどんな女だって夢中になるだろうに、なんで拙僧なんて選んでしまってるのか。

    不意に頬に触れられ、思わず体が跳ねた。

    「なぁ、空却…頼む、俺を選んで」

    ずるいだろそれ、ふざけんな。

    顔が熱い。なんでだ、一郎はダチだろ。

    「恋人としての俺は、ダメか?」
    「っ!!!」

    やめろやめろ!自分の中で何かが変わる気配に慌てる。

    「…一郎」
    「ん?」
    「拙僧と一郎は…マブダチだ」
    「そうだな」
    「テメェのことをそんな目で見たことはねぇ」
    「…だろうな」
    「なのによ…なんか、おかしい。今めちゃくちゃドキドキしとる」

    気持ちを受け入れるとか、付き合うとか、そんな答えまでには至らないが、これだけは事実だった。瞬間、強く抱きしめられる。

    「!!!何すんだ!一郎!」
    「いやなんか、空却が可愛すぎて思わず」
    「可愛い…って…」

    ああもう、こんな言葉でさえ、一郎に言われれば悪くないのだ。

    「一郎は拙僧とどうなりたいんだよ」
    「独り占めしたい。ヤキモチとか堂々としたい」

    なるほど。恋人と名づけば、そういう感情の優先順位を相手に堂々と求めやすいということか。

    「一郎は今でも拙僧の中では優先順位は高ェけどな」
    「家族がいんだろ。まぁ俺も弟とは比べられねぇけど、アピールしやすくなる」
    「拙僧の彼氏として?」
    「おう、空却の彼氏として」

    彼氏、という言葉に、少しだけ声色が明るくなり抱きしめる力が強くなった気がした。そんな些細な変化に、可愛いなぁなんて思っている。

    「悪くねぇな」
    「!空却っ、それじゃあ───」

    腕の力を緩め、こちらを見下ろす一郎の顔は思ったより赤い。とたん胸あたり締め付けられる感覚がした。

    「ふ…っ、いいぜ、一郎。好きとか恋人とかはピンとはこないが、拙僧はお前のこと愛しく感じてる。テメェの好きにしろ」
    「じゃあ、付き合ってくれ!」
    「おう、付き合ったる!」

    唇が触れた。おいおい意外と手が早いのかよ。不意を突かれて悔しかったので、離れた瞬間、一郎の胸元に頭突きしてやった。

    顔が熱い。

    可愛い可愛いと頭の上で騒ぐ一郎が鬱陶しかったが、悪くはなかったので、しばらくは好きにさせてやることにした。

    【END】
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