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    9s86u

    @9s86u

    おはなおいしい

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    Δドラロナドラ
    (痛いものを痛いと感じたままでいられるドに執着しかけてる)

    これはよく沁みる痛みだ 闇夜の草原に手のひらを入れて撫でまわす。ざわざわとした乾いた触感が指の腹に刺さり、死ぬほどでもない痛みは擽られている心地がする。
    「出ておいで、」
     そこにいるのは解っているんだぞ? と茂みを掻き分けた。
    「通報があったんだ。鳴き声が聞こえる、もしかしたら子犬が怪我をしているのかも知れないって、幼き善良な市民からね」
     声をかけても一向に姿を表そうとしない。
     ……ねえ、本当に怪我でもしてるの? なんて心底心配しているふりをしてみた。どうやら君は優しい人に惹かれるようだから。
    「そろそろ日の出だ。遊び疲れただろう」
     もしかしたら寝てしまったのかも知れない……君でなかったらどうなることやら。
     いくら声をかけても知覚してるソレは動こうとしなかった。痺れを切らし、茂みの中に腕を突っ込み渾身の力を込めて、掴み上げようとした。
    「ゃ、……やだーっ!」
     伸びてきた両腕に絡め取られ、逆に茂みの中へ引き込まれる。抵抗するだけ無駄と思える瞬間的な強い力に、最早なす術なく――
     ばきばきと枝の折れる音と駄々をこねる声が耳の中へ突き刺さる。あちこちで感じる痛みと混ざり合う。
     刹那、散り散りになった。
     ――実際は、腰が逝かれそうになっただけで、肉体がしっかり抱きしめられているだけだった。
    「……ねえ、何が嫌なの?」
    「ぜんぶ」
    「朝ご飯がオムライスじゃなかったから?」
    「うん」
    「ジョンが他の子と遊びに行ってしまったから?」
    「うん」
    「今日、非番だったはずの私が仕事をしていたから?」
    「うん」
    「君を放っておいて、いつの間にか夜になっていたから?」
    「うん」
    「でも、こんなにかかったのは、君がすぐに帰ってこなかったせいだからね?」
    「…………」
     こんな骨と皮だけな肉体を、真綿の詰まった縫いぐるみのように抱えられて身動きが取れない。どうしたものやら。
    「君って『吸血鬼 見た目は大人頭脳は子ども』って名乗ったりする? ……いだだだっ!!」
     ぎゅーっと後ろから耳を掴まれて、それから手繰り寄せるように顎を掴まれる。不貞腐れたロナルドくんの顔が近い。もっとキメ顔だったら、格好がついただろうに。
     私がまじまじと見つめていると、アザーブルーが今にも泣きそうに陰るから、頬を撫でてやった。彼は微かに目を細め、白銀の睫毛は光を零したように瞬いた。
     よく見ると……いや、よく見なくても分かっているけれど、彼はやはり、うつくしい生き物だ。
    「キスする?」
     ――でなければ、私がうっかりこんなことを口にする筈がない。
     掴まれた顎に力が込められ、このまま粉々に握りつぶされてしまうのを想像して一瞬、息を呑んだ。
     咄嗟の反応を気取られ、ロナルドくんが上唇を舐めた。瞳の奥にある深い孔が広がり、私を捕らえて離さない。
     あ。
     大きく開けた口が迫り、鋭利な牙が覗く。このまま喰べられてしまうのかも知れないと錯覚する。
     ……それもすぐ、杞憂になった。
     ガチンと、互いの歯が打つかる音が聞こえ、痛覚で目の奥がチカチカした。
     ロナルドくんの痛がる声が響いている。私は堪らず叫んだ。
    「……こ、この下手くそ〜〜〜〜ッ!」



    ヌンヌ
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