師弟 雨足の強い夜更けでも、繁華街のネオンは七色に輝き続ける。こうこうと照りつける街灯の明るさも相まって、街は未だ眠らない。
走り去るタクシーの横で水が飛び上がり、グレーのスラックスを濡らした。手にしたビニール傘を揺らし、霊幻は舌打ちする。
離れてゆく車体を睨みつけるも、すぐ何の意味もない行為だと冷める。疲れているんだと、己を客観的に見て嘆息した。
タクシーがうまく捕まらない状況にイライラしていたせいもある。そろそろ始発が出る頃だったが、電車に乗る気はなかった。……うまく言えないが、今は人を避けた方がいいと思う。
話せば長くなるが、おそらく、何かに取り憑かれた気がする。それを自宅に帰って説明を求められる人がいないと思えば、独り身の気楽さは好ましい。なんて、どうでもいい現実逃避を浮かべる。
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