世界に宿る痛み 窓ガラス越しに鳥のさえずりだけが響く、昼過ぎの食堂。
二十一人の賢者の魔法使いを抱える魔法舎はいつだって賑やかだ。寝静まった深夜でさえ、突然爆音と共に戦いが始まることもあるし、穏やかな夜だとしてもそれだけの人数の気配がひしめいていれば音のない賑やかさがある。
そんな魔法舎に慣れていれば、ほとんど人のいない今日の静けさは耳につくほどだった。空気もまどろんで、流れる時間がやけにゆっくり感じられる。俺に精霊を感じ取ることはできないが、彼らさえ木漏れ日の下でうたた寝をしていそうだ。
何もない宙を眺めてぼーっとしていた俺の思考を現実に引き戻したのは、食堂の扉の開く音だった。瞬間、今が真昼間であることを忘れるほど、閉じられた夜の気配を纏った魔法使いが姿を現した。
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