Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    tw6mp9

    @tw6mp9

    🥷🥚 乱受けのみ 書き溜め場

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 11

    tw6mp9

    ☆quiet follow

    前書きかけをあげた 転生パロの長乱。
    あと転生後を書くだけ……かくだけ……。

    #長乱

    タイトル未定 転生パロ 長乱わたしがだいすきだった人は、いつも見かけると本を片手に持っていることが多かった。寡黙に少し傷だらけの大きい手でパラパラとページを捲る音だけが聞こえる図書室に、その姿を自分の瞳にずっと焼き付けて居たくてあまり用がないのに親友が運良く図書委員だったこともあり、それを盾にして図書室に足繫く通っていた。
    「また、来たのかよ。」
    「なあに、その顔。邪魔はしてないんだからいいじゃん。」
    「そうだけど…。」
    私が着た途端に思い切りしかめっ面をする親友は、私が彼に抱いている恋心を知っている唯一の人物だった。叶わない恋をしている私に意味わかんねえ。なんて言いつつも、なんだかんだ言ってこうして私の盾になることを了承してくれて、付き合ってくれている優れた理解者である。
    図書室に足繫く通っているのは、彼の少し傷だらけの大きい手で一定にページを捲るその音が心地よいのもあったけれど、本を捲るたびに顔に傷があって上手く表情筋が働かず無表情でいる彼が頷いたり、少しわくわくしてそうな表情でページを捲ったりしていて、普段とは違う表情にギャップ萌えを感じて彼の虜になってしまったからだった。
    いつもちょこんと図書室の端の机に座って棚から持ってきた本を見つつ、だいすきな彼のことを陰ながら見る。
    陰ながら彼を見ることが多かったけれど、たまに自分の中の恋心が暴れだしてきたこともあった。勢いだけでまだなにも考えもしない子どもだった私は、図書委員会委員長である彼にどうにか本だけではなく自分にも興味を持ってもらいたい一心で彼が読んでいた本を借りてみて読んでみたり、彼におすすめの本はないかと思い切って聞いたこともある。
    「難しい本だが…それでもいいか?」
    「はい!大丈夫です。」
    彼がいつも読んでいる本は、戦術の本であったり、はたまた料理本であったり。広い分野でたくさんの本を読むものだから私は追うのに必死だったけれど、それでも良かった。
    だって、自分には理解のできない本を読んだとき、彼と必然的に会話ができるから。例えば、これはどういう意味ですか?とか、この本良かったですよね。という会話ができる。いつも一口や二口しか話さない彼が本のことになると饒舌になるものだから、私はより一層彼と会話がしたくて、毎日一日一冊本を借りて読んでいた。
    こういうのを恋は盲目というのだろうが、私の場合悪い方向には働かず、そのおかげでいつも小テストの点数が視力検査並みで、あほのは組の落ちこぼれだった私が、小テストでは組の頭脳と呼ばれる庄左エ門と同等の点数を叩き出すようになり、いつも主に私の視力検査並みの点数のせいで胃を痛めていた教科担当の担任の先生が、ようやく改心したか…。と私の目の前で泣いていたのも今となってはいい思い出である。
    でも、そんな楽しいひと時も長くは続かなかった。だって、私がだいすきだった彼は最高学年の六年生だったから、私が二年生に進級したと同時に卒業してしまったからだ。
    卒業前には、委員会がなければ図書室へと入り浸っていたからほぼ毎日いたと思う。基本的に六年生に対して、就職先を聞くことはタブーだとされているため、彼がこの学園を出てどういう仕事に就くのか気になるのは確かなのだが、そんなことよりもわたしは彼と卒業前に少しでも話す時間や、一緒にいる時間が欲しくて、そんなことなどいつの間にか頭から消えていた。
    そして、とうとう迎えてしまっただいすきな先輩方の卒業式。私は周りの友達が、いつもは威張って私をいじめる二年生の先輩も卒業していく先輩との別れを惜しんで泣いているのに、一向に涙が出なかった。泣こうとしたけれど泣けなかったのだ。
    保健委員会で集まった時も委員長である伊作先輩も珍しく泣いていて、一人一人に別れの言葉をかけていた。数馬先輩も、左近先輩も、伏木蔵だって、伊作先輩からかけられる最後の言葉に泣いていたけれど、私はやっぱり泣けなかった。
    「乱太郎。」
    「ご卒業おめでとうございます。伊作先輩。」
    「きみなら立派な保健委員になれるよ、医務室を頼んだ。」
    泣き腫らした顔で微笑んでこちらに手を差し伸べてくる先輩の手を握ると、先輩は私を抱きしめる。それをきっかけに泣いていた数馬先輩と左近先輩と伏木蔵も合わさって、大きなお団子のように抱きしめあった。
    保健委員会の最後の集まりが終わって一人でいた私は、ぼんやりと空を見つめていた。今日がだいすきな彼に会えるのが最後だとわかっていたけれど、なんだか会うのが憚られたからだ。きっと、会ってしまったら泣いてしまうかもしれないし、好きだと伝えてしまうかもしれない。今更好きだと伝えても彼の新たな門出に邪魔になるからと、私は彼との思い出がたくさん詰まった図書室で日向ぼっこをしていた。すると私が座っているところがすっぽりと陰に包まれる。…もしかして土井先生が私を探しに来たんだろうか。と後ろを振り返る。
    「…探したぞ。」
    乱太郎。と私の名前を呼んだのは担任である土井先生ではなくて、私がだいすきで恋をしている六年ろ組の図書委員会委員長である中在家長次先輩だった。どうして先輩が私のことを探していたのか、考えても考えても一向にわかる気がしなくて言葉にならない母音とともに、ご卒業おめでとうございます…。という言葉が無意識に自分の口から吐き出された。
    「ありがとう。」
    それだけで終わってしまった会話に、中在家先輩と最後に何か話そうか、でもどんな話をすればいいのかずっと考えながらなんで私に会いに来てくれたのだろうと混乱している私に、お前に、渡したいものがあって探していた。と私の目の前にいる彼は言葉を紡いだ。
    「渡したいもの…?」
    「両手を合わせて、出しておいてくれ。」
    中在家先輩に言われた通りに両手を合わせて自分の胸辺りに固定していたら、彼の少し傷だらけの大きい手が私の小さな手にひとつの本を授けてくれた。
    「これを。」
    彼の手から私の手に移ったタイトルも表紙も書かれていない本。彼に目線を合わせると、中を開けても、いい。というお許しをもらったので、中を見るためにパラパラと本を捲ると、色んな薬草が押し花のようにページに収まっていて、しかもその薬草の隣にはどんな場所に自生しているのか、どの用途で使うのが好ましいのかなど事細かに一つ一つのページに文字が埋め尽くされており、私は開いた口が塞がらなかった。だって、これ。
    「こ、これ…。」
    「私の手作りだ。」
    そう、この本は中在家先輩の手作りだった。多分、いや絶対先輩に言われなくても私はわかっていただろう。だって、見間違えるはずがない。この筆跡は中在家先輩のものだから。どうして、私は、先輩にこんなことをしてもらう義理はないのに。どうして。と混乱をしている私を他所に中在家先輩は、そんな私を見てふわりと微笑んだ。いつも寡黙で無表情だった彼が最初で最後に見せてくれた笑顔に、私は目を奪われる。
    「最後の餞別に。」
    最初で最後に見せてくれた中在家先輩の控えめな笑顔を前に、餞別ってなんですか。という言葉は発せられなかった。今までどこか先輩方が卒業してしまうと他人事のように捉えていた私は、餞別という言葉を中在家先輩から向けられた途端、現実がじわじわと波が自分に向けて押し寄せているのが分かった。今更、現実を目の当たりにした私は、泣いていた先輩たちのように自分の瞳に涙が溜まっていく。
    (泣くな、泣くな!)
    こんなところで泣いたって何になる、泣いたところで目の前の彼を止めることなんてできやしないし、困らせてしまうことは目に見えてる。だから、絶対に泣くな!と暗示を掛けながら、私は拳に爪が食い込むくらいぎゅっと強く握りしめた。
    「あ、ありがとうございます。」
    最後の会話になるだろうから精一杯の笑顔でお礼を言った私。ちゃんと笑顔で言えただろうか、声は震えていなかっただろうか。と自問自答をしている私に、中在家先輩は私のだいすきな少し傷だらけの大きい手で頭を撫でてくれる。
    「お前が一流の忍者になれることを、願っている。」
    なんで今、そんなことを言うの、最後だから?という私の心の中の声が叫んでいたけれど、私はその叫びを飲み込んで、笑顔を見せて取り繕った。
    「…ありがとうございました。…どうか、お元気で。」
    素っ気ない私の別れの言葉に中在家先輩はお馴染みのもそ…。という言葉を放って、また私の頭を撫でて微笑んでから図書室を出て行った。
    「…行っちゃった。」
    中在家先輩のうしろ姿をしっかりと目に焼き付けた後、私はさっき餞別として渡された本をパラパラと捲っていると、裏表紙の裏に中在家先輩先輩の達筆な字で何かが書かれているのが目に映った。
    「短歌、なのかな…。」
    書かれている短歌の意味がどうしても気になった私は、立ち上がって文学というジャンルの本がたくさん詰まっている棚から短歌が書かれている本を見つけて、書かれている短歌と同じ短歌を探すことにした。ペラペラとページを捲るたびに、昔の人はこうして想いを伝えあっていたんだな…。と感心していると、背表紙の裏に書かれている短歌と同じものを見つける。
    「これかな…。えっと…瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむと思ふ…」
    その短歌を声に出して読んだ私は、自分が持ってきた短歌の解説本を見ると、その短歌の意味を知った途端に我慢をしていた自分の瞳からとめどなく涙が溢れているのが分かった。
    「……ぅ…う。」
    ずっと我慢していた嗚咽が漏れ始めて止まらなくなった私は、静かに床にしゃがみこんで先輩からもらった本を自分の涙で濡らさないようにと、胸に抱え込んで泣いた。叶わない恋をしていると思っていたのに、こんな形で成就していたことを知ってしまうなんて。諦めようと思っていたのに、中在家先輩は簡単に私の心の中から出て行ってくれないみたいだった。本当にずるいひとだ。私の心をこんなにも奪っておいて、その上、私の心の中に留まり続ける癖に、自分の想いだけ告げて去っていくのだから。
    「私も、あなたのことを…。」
    お慕いしておりました。私しかいない図書室で自分の口から紡がれた一世一代の告白は、誰にも聞かれることなく空気と一緒に溶けていった。
    「…んぅ……?なつ、かしいゆ、め?」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works