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「獅子の君」
剽軽な物言いをする寮生は俺をそう呼んだ。ほとんどが獣人族の中で一人、人間のそいつは始めからてんで馴染めていなかったが、最近はより拍車を掛けて浮いている。誰かに唆されたか。変わったのは態度と、俺を呼ぶ名。
呼ばれ方なんて今まで気にしたことはなかったが、身に余るその呼び名だけは胸につっかえて仕方がない。だから一度だけ聞いたことがある。
「お前はなぜ俺をそう呼ぶ」
「貴方がこの世界の王だからさ」
「…ハッ、大層なモンだ」
「でも、事実に変わりない」
そう言ってスッと目を細めた。
こいつの品定めするような視線は不快極まりないし、他の寮生と同じく、夢に希望に満ちた瞳は苦手だった。けれど明確に他と違うこともあった。
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