2023/05/03無料配布SS ─レオナが独立してしばらくした頃
「ってぇー…」
「どうしたんだい?レオナくん」
目頭を押さえて低く唸るレオナにルークは声をかけた。
「目と頭が痛ぇ…」
「オーララ、それは大変だ。昔よりモニターを見る時間が長くなっているし無理もないね。…ほら、暖めると楽になるよ」
ルークは手近にあったタオルに魔法をかけてレオナに渡す。本当は電子レンジで温めた方がいいのだけれどと、生活の知恵を披露していたが今はルークの声すらも目の奥を通って頭に響いた。暖かいタオルはレオナの目元をじんわりと解していく。緊張もとき解されるのか彼の肩が大きく上下する様子を見てルークも胸を撫で下ろした。
「最近ずっと職場に篭っているとムシュー・タンポポに聞いたよ?」
「チッ…あいつなんでもかんでも喋りやがって…」
「ノン、私が尋ねたのさ。彼を責めないであげておくれ」
レオナからの自発的な近況報告を諦めているルークは、不在時の彼の様子についてはラギーに一任していた。自覚があるのかレオナは拗ねたように顔を背けるだけだった。
「はぁ、最近霞んできやがるし最悪だ…」
レオナがポツリと呟いた言葉にルークの肩が跳ねた。それから目を大きく見開いてレオナをまじまじと見つめる。
「なんだよ」
「こうしてはいられない!レオナくん。アデュー!」
「は?おい…」
ルークはするりとレオナの部屋を抜け出した。あろうことかそのまま現場へ旅立ってしまい、一ヶ月半帰ってこなかった。
─一ヶ月半後
「これからも研究を続けるのだし、必要かと思って買ってきたよ」
突然出て行ったことを悪びれもせず、ルークは帰宅早々長方形の箱を取り出した。中身はショートテンプルの眼鏡だった。ブルーライトをカットし目へ負担を軽減してくれるらしい。
「それに万が一視力が落ちたりしたら大変だ…!どれだけ遠くにいても私を見つけてほしいからね!」
「…お前それ自分のためだろ」
「ノン!君のためでもあるよ」
案に自分のためだと言っているも同意だがレオナは大人しく受け取ることにした。理由はどうであれ気遣いが嬉しかったからだ。テンプルを開いて屈んでおくれと言われたら渋々応えてやるのも吝かではない。
「うん。知的さがより増して素敵だよ、レオナくん」
「そーかい。ありがたく使わせてもらう」
お礼の代わりにまるい頭を撫でて目尻にキス落とす。ルークはうっすら頬を染めて心底嬉しそうに笑った。