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    nekoyamanekomi1

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    nekoyamanekomi1

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    デと妹のパワーちゃんがアの部屋に遊びに行くお話。
    ア視点になります。
    前回までのお話にスタンプありがとうございます!

    #アキデン

    コインランドリー5 そして土曜日。デンジから電話がかかってきた。
    「お〜、アキ。久しぶりぃ」
    「……ああ。一週間ぶりだな。忙しかったのか?」
    「そうそう。なんか知らねーけどめちゃくちゃ忙しかった! 今日暇か?」
    「ああ。特に用事はない」
    「んじゃ行くわ。そうだ、妹もアキに会いたがってるからよぉ、連れて行っていいか?」
    「……お、おお」
     妹なんていたのか。
     もしかして、日曜日に見たのは妹だったりする……のか……?

    「おうおうおう! デカいマンションじゃのお〜!」
     果たして俺の予感は当たった。先週見たデンジと仲良くコンビニに入って行った女は、デンジの妹らしい。
    「アキ、紹介するな。コイツ俺ン妹の……」
    「パワーじゃ!」
    「パ、パワー⁉」
     すごい名前だ。まさか本名なのか⁉
     デンジは俺の心を読んだかのように、補足説明をした。
    「コイツ、本名は力子っつーんだ。でも本名で呼ばれるの嫌がるからよぉ、パワーかパワ子って呼んでやってくれよ」
    「あ、ああ……」
     パワーは目をキラキラさせながらキョロキョロと部屋を見渡している。
    「デカいテレビじゃのお〜。あっ!ゲーム機があるっ!」
    「ああ、やるか? ゲーム」
    「やるやる〜」
     まるで小学生男子みたいにはしゃいでいる。
    「アキ、気ィつけろよ。コイツなんか知んねーけど、めちゃくちゃつえーから」
     デンジがパワーに操作を説明した後、こちらを見てニヤリと笑った。 
    「俺がどれだけこのゲームやり込んでると思ってんだ」
     遊んだ事のない奴に負ける訳がないだろう。
     そう高をくくっていた。
     
    「やった! ワシの勝ちじゃ!」
    「よっしゃ〜! 最終ラウンドだ!」
     岸辺兄妹は小躍りしそうなくらいテンション爆上げで喜んでる。
     第一ラウンドは流石に操作に慣れるまで時間がかかったが、第二ラウンドではいい動きをした。
     はっきり言って初心者とは思えないほどだ。
     油断していた俺は空中に蹴り上げられ、そのまま攻撃コンボを食らって場外に放り出され、今に至る。
     最終ラウンドでは絶対に負ける訳にはいかない。
     久々に出す本気だ。
     Lady,Go
     幕は切って落とされた。コンマ1秒を見切って技を繰り出す。相手も負けじと攻撃を仕掛けてくるが、そこは経験値の違いだ。ガードキャンセルを巧みに使い、敵を蹴り上げタコ殴りにした。
     画面いっぱいにK,Oの文字が表示されると同時にすかさずABボタンを同時押し。
     煽るような勝利ポーズを決めるとパワーが笑い出した。
    「なんじゃ〜? そりゃあ! ウヌ、なかなか強いのお⁉ もう一回じゃ! もう一回!」
     デンジとマッタリ楽しむのも楽しいが、パワーとの対戦は久々に俺を本気にさせた。
    「すっげー! なんか俺とやってる時と動きが違ゲェ!」
     今日のデンジは観戦に徹するのか、楽しそうに俺達の後ろに座り込んだ。
    「よし、じゃあもう一回するぞ。キャラ変えるか?」
    「じゃあワシ、コイツにする!」
    ゴツいキャラを選んだパワーは、俺のコントローラーを取り上げ、勝手にキャラクターを変更した。
    「ウヌはこの弱そうなメスキャラじゃ! 次は負けぬ!」
    「頑張れよ〜。パワ子ちゃん」
     デンジが気の抜けた声援を送ると「まかせておれ!」とコマンドの練習をし始めた。
     初心者相手に本気を出しすぎるのもどうかと思い、第一ラウンド目は勝ちを譲ったが、第二、第三ラウンドでは本気で勝ちに行った。
     頭の中でリズムを刻み、コマンドを繰り出す。
    意気揚々とパンチを繰り出す大男を、俺は軽やかに地面に沈めてやった。
    「ムキー!」
     パワーが奇声を上げて悔しがる様子が面白くて、俺は腹の底から笑った。

    「……ちょっとトイレ」
     デンジが立ち上がると、パワーはコントローラーを置き、俺の顔を面白そうにのぞき込んだ。
    「なんだ?」
    「いいことを教えてやろう。ヌシはデンジのことが好きなんじゃろ?」
    「は? ……何の事だ?」
     すっとぼけようと目をそらすと、パワーは面白そうににじり寄り、耳元に唇を寄せた。
    「ごまかそうとしても無駄じゃ。目を見りゃ分かるわい!」
     ……そんなに俺は分かりやすく顔に出るのか?
     軽く落ち込んでいると、パワーは意外な事を話し始めた。
    「デンジはああ見えてモテるんじゃ」
    「……なにっ?」
     俺の慌てっぷりが面白かったのか、ケラケラと笑い出す。
    「安心せえ。男からはモテるんじゃが、女からは全然じゃ!」
     そ、そうか。でも男からモテるという部分が引っかかって素直に喜べない。
    「男からモテるってことは、その……デンジは彼氏がいた事があるのか……?」
     聞いた後で、プライバシーに関わる事を聞いてしまった事に気が付き、慌てて口を噤んだ。
     しかしパワーは気にする様子もなくベラベラと話し始める。
    「それなんじゃが。デンジは絶望的に察しが悪くての。今まで恋人らしい恋人なんかいたことがないんじゃ!」
     絶望的に……察しが悪い……。
    「だから、デンジが好きならグイグイアピールすることじゃ! なんなら押し倒しても構わん!」
     彼女は拳を振り上げ力説する。それに違和感を持った俺はすかさず突っ込みを入れた。
    「流石にそれは駄目だろ……っていうか、なんで俺の背中を押そうとする?」
    「なんでって、そりゃあ……」
     その時、足音がした。デンジだ。
     パワーは俺から距離を取ると、慌てて振り返った。
    「なんじゃ、遅かったのお。クソか?」
    「おー、めちゃくちゃなげぇクソが出た!」
    「なにぃ? なぜ流す前にワシを呼ばん⁉」
    「なんでテメェにクソ自慢しなきゃなんねーんだよ」
     大事な話がクソの話で流れてしまった。
     その後パワーと二人きりにならないかと機会を伺っていたが、チャンスは巡って来ず。
     連絡先を聞いて良いものかどうか躊躇っているうちに、二人は帰って行ってしまった。
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