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    nekoyamanekomi1

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    nekoyamanekomi1

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    🐙が🪚の同僚として登場します。
    🐙→→→→🪚ぐらい?
    この回だけアキデン前提の吉デン風味ですのでご注意下さい

    #吉デン
    yoshiden
    #アキデン

    コインランドリー8「聞けよ、俺が好きなのは」
     アキが悲痛な声で叫ぶ。
     嫌だ、聞きたくない。俺にこれ以上絶望させんじゃねぇ。
     慌てて終了ボタンを押した。
     急に静かになった携帯を握り締めているうちに、涙がこみ上げてきた。
    「……お前の好きな奴なんか、知りたくねーよ」
     目の前にいない相手になじるようにつぶやいた後、電源ボタンを長押しし、携帯を枕のそばに置き眠ってしまった。

     あれからアキとは話していない。
     電話がかかってきてもアキの好きな人の事なんか聞きたくなくて、取る勇気が出ねぇ。
     かと言って、繋がりを断ち切りたくなくて着信拒否に出来ないでいる。
     
    「デンジ君、最近元気ないけど……大丈夫?」
     会社の食堂でメシ食ってたら同期の吉田が話しかけてきた。
     同期だけど、業務内容は違う。
     吉田はホワイトカラーで、俺はブルーカラー。
     本来はあまり顔を合わせる事はないはずだけれど、なぜか吉田はしょっちゅう俺の前に現れる。
    「あぁ? んだよ。吉田か……」
    「なんだとはなんだよ。失礼な」
    「へぇへぇ。俺は元気だよ……」
     元気と言いつつ元気じゃないのは俺が一番良く知ってる。
     ため息をついてパンをかじると吉田が光のない目でじっと俺を見つめた。
    「んだよ」
    「いや、デンジ君最近ゲームにハマってただろ?オレも同じハード持ってるんだ。で、おすすめのゲームソフトあるから貸してあげようと思って持ってきた」
    「マジぃ? やりぃ……」
     そうだ、アキから借りてるあのゲーム機も返さなきゃなんねぇ。どうやって返そうかとぼんやり考えてると、吉田がズイッと身を乗り出してきた。
    「今日、キミん家に行っても良いかな? ほら、ゲーム一緒にできるしさ」
    「……おー。分かった」
     そして、仕事帰りに吉田が遊びに来る事が決まった。

    「デンジ君の家、久しぶりだな」
     吉田は俺の隣を歩きながら楽しそうに笑った。
    「……そんなに楽しみにされても別に何もねーけど」
    「君の家に行けるってだけで、オレにとっては一大イベントなんだよ」
    「ふーん」
     意味分かんねぇ。そんな他愛もない話をしてるうちに到着した。
     何の変哲も無い二階建てのハイツ。その二階の端がオレん家だ。
     玄関を開けた所で携帯が鳴った。この着信音は、アキだ。
    「あれ? 携帯鳴ってるよ。取らなくていいの?」
    「あー……。うん、今はいい」
     携帯はしばらく鳴り続けた後、沈黙した。
     それと同時に吉田が口を開く。
    「……余計なお世話かもしれないんだけど。デンジ君が最近元気ないのって、さっきの電話と関係あったりするの?」
    「……だとしたらどうなんだよ……」
     そう答えると吉田は俺の肩をガシッと掴んで真剣な眼差しで俺を見つめた。
    「……聞かせてくれないか。君の力になりたい」
     ……ええ、めっちゃマジの目じゃん……。

     ボカして話そうと思ったら、色々細かい所まで突っ込んで聞いてくるせいで、粗方正直に話してしまった。
    「……なるほど。その早川さんと親しくなって浮かれていた所に、彼に好きな人がいる事が分かってしまった。そこで初めてデンジ君は彼の事が好きだと気が付いた。実るあてのない気持ちを抱いたまま早川さんと会うのは辛いから、電話も取らずに逃げ回ってる。……と、言う事で合ってる?」
     ……コイツ、ズバズバ言うよな……。
    「ああ……。まあ、そうだな……」
    「ふぅん……。なるほど。じゃあさ、もう着信拒否にしたらどうだい? 会いたくないんだろ?」
    「……それは……その。このゲーム機もそいつから借りてるやつだし……。いつか返さなきゃいけねーし……」
     吉田はチラッとゲーム機を見た。
    「じゃあさ、オレが今から返しに行ってあげるよ。近所なんだろ?」
    「……いいよ、余計な事すんな」
     俺が睨むと吉田は肩をすくめた。
     少し黙りこくった後、ゆっくりと口を開く。
    「……なぁ。デンジ君。オレにしときなよ」
    「はぁ? 何が?」
     吉田が何を言ってるのか分からず聞き返すと、俺の顔を覗き込み距離を詰めてくる。
    「オレなら君にそんな寂しい顔はさせないし、君だけを愛する自信がある。オレを早川さんの代わりにしても怒らない」
    「えっ? ち、ちょっと待てよ。テメェ俺ん事好きなんかよっ!」
    「そうだよ。知らなかった? 結構分かりやすくアピールしてたつもりなんだけど」
     吉田が? 俺の事を? 女に不自由してなさそうなイケメンが、俺の事を?
    「……まあ、君の妹さんからは嫌われてるみたいだけど」
     そうだ。前にパワ子と会わせた時に「アイツ、女を殴ってそうな顔じゃ! ワシには分かる!」とか適当な悪口を言っていたのを思い出した。
    「でも、これだけは信じて欲しい。オレは君にひどい事はしない。君だけを好きでいるし、必ず幸せにする」
     そんな事を急に言われても困ってしまう。
    「ち、ちょっと待て。俺はお前の事なんも……」
    「目を閉じて」
     急にそう言われてつい目を閉じてしまった。
     抱きすくめられて吉田の体温を間近に感じる。
    「目を閉じたらオレだって分からないだろ? いいよ。オレを早川さんだと思いなよ。早川さんと何をしたかったんだい?」
     アキとは違う匂いが鼻先をくすぐる。
     はっきり言ってアキとは全然違う。声も、口調も、呼び方も。
     でも……。許されるのなら。
     少しだけアキの代わりになって欲しい。
    「アキぃ……。アキ、好きだ。ずっとこうしていてーよ……」
     俺の背中に回る手に力がこもった。
     アキ、アキ、お前に直接言えたら良かった。
     アキをこの腕で力いっぱい抱きしめとけば良かった。吉田の背中に回した腕に力を込めると、そっと頬を手のひらで包まれる。
     薄く目を開けると、吉田のキレーな顔が目の前にあった。
     
     ……ああ、キスされちまう。
     でも、いいか。アキだと思えば……。
     目を閉じると、頬を一筋の涙が伝った。
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