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    10ri29tabetai

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    エチエチバニーズ
    黒服×バニーボーイ パロの紅宗

    あんさんぶるエチエチバニーズ‼︎〜斎宮宗の場合〜はあ、と大きく息をついて頭からそれを取れば、少しだけ痛みが和らぐような気がした。控室は決して広い場所ではない。自分1人が溜息をつくためだけの時間は、褒められたものではないけれど、仕方ないと割り切るしかないだろう。
    あと十分もたてば、またホールに出て行かなければならない。屈辱的なこの行為に斎宮宗はいつだって昔を思い出す。
    ーー別に、昔とは全然状況は違うのだけれどね。
    チョーカー同然のつけ襟を緩めて、宗はこめかみを抑えた。うさぎの耳を模したこれは、量販店で売っているような既製品ではなく、特注品だ。長時間の着用にも耐えられるという作りをしているけれど、それでも痛いものは痛い。
    「……なんだって僕がこんなこと…くそ、衣装だけの手伝いじゃなかったのか…?」
    高校時代の友人である、朔間零が、新しくオープンするという店舗を任された、という話は耳に入れていたところだった。コンセプトカフェみたいなもんじゃぞい、斎宮くんも手伝ってくれんかのう、と衣装を手がけることになったのもまあ了承はできる。
    だけど、だ。
    「なんで僕まで、こんな低俗な格好をして接客をしなければならないのかね…!」
    引き受けてしまった自分の愚かさを呪いたい。ーー呪ったところで、どうにもならない、というのは百も承知なのだけれど、
    「斎宮? 大丈夫か?」
    あああ、という言葉にならない叫び声は、ノックもなく入ってきた来訪者によって遮られた。なでつけた赤い髪の毛と、ところどころにある黒いメッシュ。宗とは違い、黒スーツをきっちりと着こなした青年は、おう、と顔を顰めながら斎宮の目の前に座った。
    「さっきのセクハラ客、朔間と話して出禁にしておいたからよ。ウチはそういう店じゃねえって言ってんのに、追加料金払うからとかなんとか抜かしやがる」
    はああ、と控室の水を飲みながら、男ーー鬼龍紅郎が声を顰める。
    「……そんなことしていいのかね? このあたりじゃあ、ここは新参者の店、なんだろう?」
    「それはそうだが、朔間がそういうから仕方ないだろうが」
    「だが」
    「あのなあ、…だったらお前、ちゃんと自分でああいうのを振り払えんのかよ?」
    はあ、と仰々しくため息をつかれて、宗はこの部屋に自分が一旦引っ込んできた要因を思い出す。金払いはいいが、腰を撫でて、耳元で囁く客が宗のことを気に入っていたのだ。個人的に店の外で会おうとか、お金は融通するから、とかそんなことを言って、酒臭い息を吹きかけてきた。
    「……まあ、確かに、うちにくる客が健全な嗜好とは言えねえけどな。だからこそ朔間だって細心の注意を払ってるんだろ。お前に万一のことがあったら俺だって母ちゃんに顔向けできねえよ」
    腰を抱かれて、キスを迫られた。宗は店では基本的に高嶺の花としてのポジションを確立している。芸術作品のように、誰にでも簡単に触れられるものではないけれど、特定の客に特化した、いわゆる『刺さる』というキャラクターなのだ。
    ーーだからこそ、店で楽しく酒が飲める以上のことを求める客が多くなる。宗だって仕事だと割り切ってはいるのだ。だけど、どうしても、この身を弄られると、昔のことを思い出してしまう。思春期の頃に、本当に男かと疑われて向けられた劣情の視線。いやだと言っても相手を煽るばかりだったことを思い出して、声がどうしてもか細くなっていく。
    「斎宮、大丈夫か」
    「……ああ、すまないね、……鬼龍」
    「別に。礼なら朔間にも言えよ。俺は荒事しか向かねえからな」
    耳の外れた髪の毛を、手袋を外した紅郎の大きな手が撫でていく。ここの入店ーー軌道に乗るまでの手伝いだと零は言っていたがーーを決めた時に、幼馴染である紅郎も用心棒として雇われた。斎宮がいるからって朔間から頼まれてな、と冗談めかして言った言葉に、宗は少なからず心が弾んだのを覚えている。
    「斎宮が無事ならそれでいいんだよ。まあでも、二十歳過ぎてもやっぱりエロいことには向かないんだなあ、『いっちゃん』は」
    「うるさいのだよ。全く、歳を取ってもそんな低俗で卑猥な話ばかりしている方の品性を疑うよ」
    「まあだから、こんな店の需要もあるんだろうけどな」
    はは、と笑いながらそのまま髪の毛をかき混ぜてくる。紅郎の指先を弱々しくはらうと、綺麗なエメラルドみたいな色をした瞳が、時、っと真剣に宗を向いた。
    「…りゅ〜…鬼龍、何っ…」
    「ん、いや…」
    言いながら、その手がゆっくりと体を滑り落ちていく。店にいる時だけつけている、ムスクが宗の体にも移る。いつの間にか体が大きくなって、男としての風格を兼ね備えた紅郎の手が、腰を撫でる。先ほどの客と同じような手つきだけど、不思議と嫌悪感はなかった。あ、とまるで女性みたいに上がる声が喉元まで競り上がって来て、宗はこくん、と声を飲み込んだ。
    「……斎宮、これ」
    「…あ、りゅ〜くん、何…」
    「ああいや、……立派な柄だと思ってよ。…これ、お前がデザインしたんだろ? 流石のセンスだと思ってよ」
    「ああ…っ、れ、零からのオーダーを、形にしただけだよ…」
    腰の少し上、短い丈のジャケットの片方の襟にだけ施された模様をまじまじと見ながら紅郎は興奮したようにいう。そうだ、鬼龍は顔に似合わずこういうやつだ。宗と同様ーー刺繍に関して言えば、宗よりも上であるかもしれないーーに、服飾や裁縫、縫製が趣味である鬼龍は少し興奮したようにそっと宗の腰を撫でた。
    「ちゃんと食ってんのか? ちょっとデザインがタイトなのはわかるんだがよ、こないだより細くなってねえか?」
    「君は僕の母親か何かかね? 残念ながらこの衣装があるからね、大きくもなってないけれど、小さくもなってないよ」
    はああ、とため息を吐きながら、腰を触る紅郎の手つきが穏やかになるのを待つ。いつからだろう。この紅郎の行為に先を求めるようになってしまったのは。この店で共に働くようになってから、縮まった距離感。離れていた時間を埋めるように、幼馴染としての思い出を語れば、自然と宗は望んでしまう。
    ーー低俗で、卑猥な行為だとわかっているのに。
    「……鬼龍。僕はそろそろ戻るのだよ。離したまえ」
    「おお、悪かったな。いや、たまには飯一緒に行くか? 今日終わりとか」
    「考えておくよ。……嫌な客がこなければいいけど」
    じゃあ、と言いながら、宗はテーブルに置いたままだったカチューシャをまた、頭につける。腕を頭にあげた瞬間、ふわりと袖口から香った紅郎の香水が、なんだか
    少しだけ、勇気をもらえるような気がした。
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