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    S_SharkW

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    アタリブックセンター展示作品です
    10.30のインテに向けての原稿のサンプルです。
    美味しいご飯をいっぱい食べて欲しいという思いが強すぎる鮫の文書です

    #94#ロナドラ

    夏の激辛ドライカレー 夏の激辛ドライカレー
     【セロリ】
     セロリは、セリ科の一年草または二年草。ヨーロッパから地中海沿岸の原産といわれ、改良品種が栽培されている。葉、茎、実の部分を食用にでき、独特の強い香りがある。 (ウィキペディア調べ)
     葉も茎も全て使うことができて、料理にちょこっとプラスするだけで食材の臭みを消したり、味や風味を引き立てたりする重要な役割を担っています。
     そのような西洋料理に欠かすことのできない香味野菜を退治人・ロナルドは劇物・劇薬、生物兵器と称し、殲滅させるためには核攻撃も厭わないとパニックを起こす。
     彼はセロリに何をされたのか?好き嫌いのレベルでは説明できないような物語が隠されているのではないだろうか。いつかロナルドウォー戦記の本編で明らかにされるのだろうか。
     ただ、これが使えないとなると正直私も少し困る。もちろん私は吸血鬼のため、ニンニクは使うことができない……料理の風味や、肉の臭み消しのために何を使えばいいか。考えたがなかなか良いものが見つからない。
     ロナルドは一体どの程度であればセロリを認識するのか。この日から私の退治人ロナルドセロリ観察日記が始まった。
     まずはそのまま野菜スティックとして出してみた。見た瞬間形容し難い声をあげて暴走ゴリラと化し、私に襲いかかってきた。
     切り方がまずいのか、ではスライスをしてサラダに混ぜてみた。案の定これも失敗。生の食感と匂いか。なら濃いめの味付けでさきイカとフレンチドレッシングで和えてみたら……結果は同じ、ジョンには好評だったのだけど。
     じゃあスープに入れれば何とかなるかと薄切りにしてみたもののやはり嫌いなものの味はすぐに気がつくのかプレス機のモノマネをした彼に数回砂にされた。
     これは本当にどう料理しても勘づかれて手をつけないかもしれない。
     かくなる上は最終手段を行使しようと思う。
     
     日本の夏は暑すぎる。私の血族が住むルーマニアは暑いがここまで湿度が高くはない。この季節だけはあちらで過ごせば良かった、と思ってしまう。
     夜でさえじっとりと湿った空気のせいでまるで風呂に浸かっているみたいに汗が額から吹き出してくる。
     そんな日がもう数日続いた時に、ロナルドは夕食にあるものをリクエストしてきた。
    「カレーが食いたい」
     真っ赤に茹で上がった汗だくの退治人が玄関を入ったところで呟いた。
     暑い夏にはカレーを食べよう、そう言い始めた人間は誰なのだろうか。
     まぁいい。以前より計画をしていた、セロリ観察日記を実行することにした。
     
     カレーと言っても色々なものがある。家庭的なカレーに、インドカレー、グリーンカレーに欧風カレー。
     いつもならフォンドヴォーを使ったさらさらとしたカレーにするのだが、今日は違う。ドライカレーだ。
     たっぷりの玉ねぎと人参、ピーマン、そしてセロリ。それを親の仇のごとく、刻む刻む刻む。
     形なんて分からない、どれがどの野菜か、わからなくなるくらいまで。
     セロリが苦手だと言ってこの私の料理に手を付けなかったその怒りを込めて刻み尽くした。
     フライパンに油を引いて、ひき肉を炒める。色が変わって野菜も一緒に炒める。ふわりとあの青臭い、爽やかな香りがするがすぐに顔を隠した。
     水とコンソメ、ローリエを入れて煮る。さぁ彼は気がつくだろうか?
     戸棚からカレールーを取り出す。いつもは中辛くらいだが今日は試しに買った激辛だ。
    「ただいま」
     また今日もサウナにでも入ってきたのかと思うほど真っ赤になったロナルドが帰ってくる。汗やらホコリやらで体はどろどろで何も言わずバスルームへと直行した。
     細かく刻んだカレールーをフライパンで溶かす。スパイスの香りが部屋中を包み込む。
     別の鍋に湯を沸かして、卵を放り込む。
     シャワーから上がってくる頃にはちょうどいい茹で加減になるはず。
     そう思っているうちに鼻をひくひくさせて頭を拭きながらバスルームから出てきた。
    「カレーだ」
     君がリクエストしたからな、と言うとソワソワしながらテーブルについた。
     出来上がったカレーをご飯の上にかけて、半熟のゆで卵を乗っける。上に飾りのパセリをつけて、あとは冷たいじゃがいものポタージュを用意して。さぁ完成だ。

     胸いっぱいに香りを吸い込んでロナルドはスプーンで山を崩す。
     さぁさぁ彼は気がつくか?
    「か、辛っ」
    「まぁ、カレーだからね。暑気払いにもなるだろ。辛いのがお嫌ならジョンのを分けてもらうかい?お子様ルドくん」
    「はぁ?バカにすんな食うわ!」
     どうやら辛さの事だけで気がついていない。大きな口を開けてスプーンに乗った山を運んでいく。二口ほど進んでは氷いっぱいの水やスープで辛さを流し込む。
     あぁ、せっかくシャワーをしたのにまた額には汗が玉になって浮き出て来ている。
     暑い、辛い、熱い。
     あれだけ辛いと言っていたのに、手は止まる様子はない。半分ぐらい食べたところで、辛さで麻痺した口の中に黄身がとろとろの半熟卵を一緒に食べる。
     あっという間に皿は空っぽになって、ぐぃっと水を煽って一息を着く。
    「ご感想は?」
    「感想って……まぁ、辛かったけど美味かった」
     笑いだしそうになるのを、何とか堪える。本当は大笑いして言いたい。
     『君が今、美味しいって言ったそれにはセロリが入ってるんだよ』って。
    「おかわりする?」
    「おう、半熟卵まだあるか?」
    「もちろん」
     皿を受け取って、ジョンと顔を見合わせてニヤニヤする。
     ほらね、私が作った料理だ、不味いわけがない。と
     これからも少しずつ、混ぜてみようか。一体どれくらいで気がつくか、これから作るのが楽しみだ。
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