「ラスベガスで撮影だ、クリフ」
ヒッピー撃退後のリックは忙しい。次に撮影を控えているのは悪党のチームがラスベガスの巨大カジノの金庫を狙う強盗映画。11人チームはちょっと多すぎないか?とリックはぼやく。
「…それと俺のスーツを仕立てるのに何の関係があるんだ?」
試着室でスーツに身体を押し込められたクリフもぼやいた。息苦しいからとシャツは胸元が開けられ、高級スーツの硬すぎない生地は鍛えられた身体のラインに沿い、ハリウッドスターと並んでも遜色ない色気を振り撒いている。クリフの気怠げな雰囲気が男っぷりを助長していた。
「俺には上等すぎる」
「上等だと思うならキチッと着ろよ」
目にうるさいくらいの色気がましになればとリックはクリフのボタンを閉めてやる。クリフは大人しくボタンを操る手を見守った。ちまちま動く丸い指先を見下ろして、まるで新婚みたいだなと浮かれた感想を抱く。リックはリックで渋面を作りながらも、第一ボタンまで留めてネクタイを締めさせたらハンサムどころじゃないんじゃないか?と考えていた。
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