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    torinokko09

    @torinokko09
    ♯♯一燐ワンドロシリーズはお題のみお借りしている形になります。奇数月と偶数月で繋がってますので、途中から読むと分かりにくいかもです。

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    torinokko09

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    片思い男子は思春期真っ最中!の続編の前編2編
    やる気と愛をください

    『すすめ桜河こはく調査員!』

    こはくはじっと相手を見ていた。睨まれた燐音は怯むことなくその視線を受けいれて笑っている。シナモンのいつもの定位置で、こはくは燐音とおやつ時をともにしていた。燐音はからからとグラスの氷をストローで回している。中身の減ったアイスココアがそれに合わせて渦を作る。こはくはその渦に負けずにきりりと顔を引き締めた。その様子に燐音は笑いながら声をかける。
    「そんな顔して、どうしたんだよこはくちゃん」
    「…燐音はんに聞きたいことあるんやけど」
    「いいぜ、なんでも答えてやんよ」
    「…好きな人って、おるん?」
    急なこはくの問いかけに目を丸くした燐音は、ニヤリと笑ってわざとらしい声をだした。
    「は?いきなり何?こはくちゃん俺の事好きなの?」
    「ちゃうけど。燐音はんの恋愛対象ってどんなもんなんかなーって」
    「俺の?」そう言って燐音は肘をついて顎をのせた。わざとらしく視線を斜めへ向けて、考える素振りを見せる。そしてこはくの方へ顔を向けると、意味深に口角を上げた。
    「愛してくれたらオールオッケーかな♡」
    「男でもか」
    「勿論っしょ! つか実家はそういうの関係なかったしな」
    燐音は当たり前のように肯定すると、アイスココアをずずっと吸った。こはくは自身が頼んだ抹茶ラテの氷をストローでつつきながら、話を続けた。
    「ふぅん。いや、ネット友達がな、恋愛相談をわしにしてん。力になりたいんやけど、わからんくて」
    「へぇ」
    「燐音はん、今は恋愛してへんの」
    さりげなく聞くと、燐音は大きくため息をついた。こはくは抹茶ラテを飲むふりをしてこっそりとその顔を伺った。下に背けた顔は寂しそうな表情だ。いつもならわざとらしいと感じるが、こはくはその表情を本物だと判断した。『そういう印象』を与えたいなら、彼は目線を合わせて訴えるからだ。やがてきらりと瞳を光らせた燐音は、わざとらしく
    「昔の人を忘れさせてくれるくらい、新しい恋さがしてまぁす」と言った。
    こはくは消え去ってしまった先程の表情を思い出しながら、燐音へまた問い掛けた。
    「昔の人て燐音はんフッたんか?どんな子?」
    「ちがうちがう、フラれたの。小さくて可愛い子」
    「へぇ〜、燐音はんはそういうお人が好きなんやねぇ」
    「えぇ〜、ま、可愛いとは思うけど。なに、こはくちゃんはタイプとかないの」
    「タイプなぁ。まぁ、話があって深追いせんならええな」
    「家の事か?いやいや結婚するなら深追いするっしょ」
    「そうは言うても、好いてる人をこんな家に入れとうないし、結婚はせぇへんつもりよ」
    「こはくちゃんらしい〜」
    「燐音はん家はどうなん」
    そうこはくが尋ねると、燐音はうげぇという顔をした。大きなため息をついて椅子の背もたれに寄りかかる。そして拗ねたように「あーあ、」と声を出した。
    「俺っちは長男だから、いつか子供は作らないとっしょ。どうせ見合い婚だよ」
    「ええの?」
    「よくないし、やりたくもねぇよ。だけどやらなきゃなんないの。…実家帰りたくねぇな」
    「ふぅん、長男も大変やねぇ。家出したんやし、ずっとここにおったらええやん」
    こはくは優しく微笑んで言った。それは言外に二度と消えるなと言ったつもりでもあったが、燐音は知ってか知らずか曖昧に笑って目を逸らした。
    「うちの家業、結構続いてんだぜ〜?いっそのこと、こはくちゃん俺っちの嫁さんになってよ」
    「なるかアホ。そんなんめんどくさいに決まってるやん」
    「なんすか燐音くん、とうとうこはくちゃんにまで迷惑を」
    「ちゃうわ」
    りんごのタルトを持ってきたニキが慣れたように燐音の隣に座った。燐音はその肩を抱きながら猫なで声を出してニキに媚びた。
    「ニキ〜!こはくちゃんがおれっちのお嫁さんに痛っ」
    「それは燐音はんの妄想やろ。なぁニキはん、燐音はんの好きな人って知らん?」
    こはくの言葉に、限界まで目を丸くしたニキは大声を出して飛び上がった。慌ててきょろきょろと周りを見渡して、ひそひそと話し出す。
    「り、燐音くんの好きな人?この人にそんな感情あったんすか?」
    「それがフラれたらしいで。小さくて可愛い子らしいんやけど、気になってなぁ」
    「小さくて可愛い子?燐音くんより小さいってみんな小さくないっすか?」
    「いや確かにそうやな。三毛縞はんもなかなかやけど。燐音はん何センチやったっけ?」
    「181だよ、本人の前でこそこそ話すな」
    べしりとニキを叩いて、へそを曲げた燐音がぷいと顔を背けた。ニキはそんな燐音を見ながら、やっぱり小さい子って言ったら、と言葉を続ける。
    「今度の横断企画メンバーはみんな小さいくて可愛いっすよね」
    「あぁ、確かに!確か、Blancoとか言うんやっけ。…まさかラブはんとか言うなや?」
    「あ?藍ちゃんは小さいし可愛いけど違ぇよ」
    えい、とニキを小突いていた燐音はこはくへ視線をよこした。
    「そんなに俺っちをフッた人が気になるわけェ?」
    「気になるやろ。なぁニキはん」
    「気になるっす」
    「えぇ」
    二人の返答に、燐音は困ったように眉を下げた。しばらくどう言うべきか悩んで、また曖昧に笑った。
    「…お前らは気にしなくていーの。どうせ結ばれねぇし」
    その寂しそうな表情に、こはくとニキは顔を見合わせた。


    ///


    『青春男子のお悩み大会議、2回目っ!』

    「いやあのね、こはく、僕は176cmあるんだよ?」
    一彩はESから少し離れたカフェで、向かいに座る年下の友人に向かって説明した。ずず、とココアを啜ったこはくは、それがなんだという顔をする。
    「相手は181cmや、小さいやないの」
    「常識的に考えて、176は高い方なんじゃないかな」
    「ヒロくんが常識語らないで」
    「藍良、てきとうに言わないでくれないか」
    一彩の非難する声を無視した藍良は、パフェのように生クリームがたっぷりのったドリンクを一生懸命睨んでいた。ふと顔を上げて、一彩へ意味深に親指を立てる。一彩がそれを見たと同時に、また視線をマグカップへと戻し、くるくると回し始めた。先程から一番“映える”角度を探しているようだが、そのマグカップはすでに4周目にはいっている。
    一彩は向かいのこはくに視線を向けた。
    「しかし、そうは言っても僕は“かわいい”と言われる方でもないよ。それは藍良や、…いや、なんでもない。睨まないで欲しい。とにかく、僕は可愛い担当じゃないよ」
    「確かに世間一般の“可愛い”やったら、ラブはんやろな」
    こはくは“ラブはん”を強調して言った。
    「しかし、相手は“兄貴”やで?弟が可愛くない兄なんかおるもんか」
    「そういう意味の可愛いではないと思うよ」
    「いやいや、言いたくないけどウチの姉はんたちもまぁもう面倒な程にワシを着せ替え人形に…あー、いや、この話は置いておいてや。とにかく、燐音はんにとって、一彩はんは確実に“可愛い”や」
    「そうそう」
    適当に相槌をうった藍良は、スマホのシャッター音を鳴らして満足したようにスプーンを手に取った。とろりともたげた生クリームを小さくすくい、目を輝かせる。一彩は藍良の言葉を無視して話を続けた。
    「しかし、兄さんの言った“可愛い”は、恋愛における話だろう。僕のは家族愛だよ」
    その言葉にこはくは身を乗り出して噛み付いた。
    「常々思てたんやけど、家族愛にしては距離が近すぎひんか?」
    「そうかな?そこに関しては比較対象がいないからね…。ひなたくんたちはこれくらいかと思うけど」
    「あそこは双子やろ?しかも家事も自分でしとったって言うやない」
    「なら、朔間兄弟…、しかし僕らはあそこまで不仲なつもりは無いよ」
    「あれはいわゆるツンデレ…って言うんやったっけ、ラブはん」
    「んー? うん、そうそう」
    カットされたいちごをすくった藍良はスイーツをずいっと一彩へと向けた。食べようとする一彩に慌ててスプーンを戻すと、仕切り直しというように咳払いをして語り始める。
    「恋愛ってのは、友情から始まったりするじゃん」
    「そうらしいね」
    「だから“愛”なんだよ」
    「はぁ」
    「つまり、愛さえあればその形が変わることはカンタンってこと!」
    俺天才!とでも言いそうな顔つきで、藍良は胸を張って言い切った。そのままいちごをぱくりと食べて、途端ゆるんだ頬が幸せをめいいっぱい表現する。一彩は藍良の言葉に首を傾げた。兄の愛は「家族愛」だ。生まれた時から恋愛感情なんか抱くわけが無いから。どこにいくにもついて行った記憶がある一彩は反論した。
    「しかし、生まれた時から抱いてくれた“愛”はそうそう変わらないと思うよ」
    「んー、ま、そうなんだけどォ。ヒロくんでかいし」
    「ほら、藍良もそう思ってるんじゃないか」
    「待て待て燐音はんの小さいの基準はまだ分からんで?」
    「しかし、もう背は小さく出来ないよ」
    そう言った一彩の言葉に、藍良は「そう!!」と大声を上げる。いきなりの声量に驚いた二人が、藍良を慌てて隠すが、ものともしない藍良は普段よりも大きな声で主張しだした。
    「いい?ヒロくんはこの際お兄ちゃんを『フッた人』の人相だとかタイプとかなんて考える暇はないの。むしろチャンス。チャンスなんだよ!」
    「チャンス?」
    「失恋で沈んだ心を優しく抱きしめるの!そこにイケメンボイスで『いつまでも待ってるから』って意味深に囁けばお兄ちゃんもイチコロだって!」
    目を輝かせて語る藍良に、一彩は呆れた声を出した。ドラマでは無いのだと睨むが、何処吹く風だ。頬を染め、キラキラと瞳を輝かせる藍良の横で、こはくが思い出したように言った。
    「そういや、ラブはん最近恋愛ドラマにハマってるんやったっけ」
    「そうなの!昨日とうとうみゆゆんフラれちゃって…。そこに!ライバルの朔間先輩が現れてさぁ!?ベンチで泣いてるみゆゆんの肩を優しく抱いて、超至近距離で『俺はお前にそんな顔させない』って…、はぁ、ちょ〜かっこよかった…」
    「そういうことか…」
    一彩は諦めて頬杖をついた。藍良がアイドルにお熱なのはいつもの事で、その知識に助けられることは多々あるが、今日はあてが外れた。所詮ドラマはドラマである。一彩はからんと手元のクリームソーダを混ぜながら、相談するタイミングを間違えたなと後悔した。藍良は熱っぽくこはくにドラマの感想を伝えていて、すでに2人の世界である。ずず、とストローで底から吸って、その甘さと炭酸の刺激を感じながらこの恋をどうすべきなのか一人で思案することにした。

    「というか、兄さんより小さいのは可愛いになるとしたらみんな可愛いんじゃなのか」
    「黙ってヒロくん!」
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