Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😊
    POIPOI 72

    百合菜

    ☆quiet follow

    アンジェリーク・ジュリリモ
    「抑えていた想いは宇宙の危機を招き」

    ジュリアスのもとに入ってきた報告、それは「女王陛下が倒れた」というものだった。
    女王候補生時代、互いに好意を持っている自覚はあった。そして、お互い、宇宙を優先するがゆえ、その想いは殺した。
    しかし、それがあだとなり!?

    ※再録です

    #ジュリリモ
    jurrimo.
    #アンジェリーク
    angelique
    ##ジュリリモ
    ##アンジェリーク



    「陛下の様子はどうだ」

    ドアを開けると同時に光の守護聖・ジュリアスはベッドの横にいるロザリアに尋ねる。

    「特に異常はありませんわ」
    「そうか」

    そう言いながらジュリアスはベッドに視線を向ける。
    ベッドには女王であるアンジェリークが瞼を閉じて眠りについている。
    ジュリアスがその知らせを受けたのは3日前のことであった。
    いつものように執務室でオスカーと打ち合わせをしていると、慌てた様子で使いのものがやってきた。

    「光の守護聖・ジュリアス様、大変です。陛下のご様子が!!」

    聞くところによると、執務の最中にアンジェリークは意識を失ったらしい。
    急遽、医者の診察を受けたが、特に異常は見当たらないとのこと。
    「もしかすると、何かを拒絶している可能性もないでしょうか」
    医者のその言葉が気になりつつも、特に大きく容態が変化することもなく、3日が過ぎていった。
    いつも見せる碧の瞳。
    それが瞼の下に隠されていることにジュリアスは心当たりがある。
    だからこそ、この状況が歯がゆい。

    「ロザリア、そなたも看病に疲れているであろう。ここは私が見ているから、少し休むといい」
    「よろしいのですか?」
    「ああ」

    本来なら女性、それも宇宙を統べる女王の看病を男性であるジュリアスが行うことは望ましくないだろう。
    しかし、ジュリアスはそうしなくてはいけないような気がしてきた。
    それが瞳を閉じている彼女への贖罪だと思ったから。



    規則的な寝息が響く部屋の中でジュリアスはふと彼女と出会った頃、そして、距離がだんだん縮まっていった頃のことを思い出す。

    2回目の定期審査。
    アンジェリークが育成するエリューシオンは、ロザリアが育成するフェリシアよりも圧倒的に発展しており、ロザリアが抜本的に育成方法を見直さない限りアンジェリークが女王になる、というのがそこにいたもの全員の考えであった。
    当の本人であるアンジェリークも喜んでいるかとジュリアスは思った。
    しかし、彼女の表情はこわばっており、また瞳からは今にも涙がこぼれ落ちそうであった。
    そのことが気になりつつも、声を掛けることに躊躇い、そのときは何もできなかった。

    その日の夜、ジュリアスは何かに導かれるように森の湖へと向かった。
    普段、夜、出歩くことはしない。
    ましてやクラヴィスでもあるまい。森の湖のような静けさがしないするようなところなど、わざわざ行く理由が見つからない。
    しかし、その日はどうしてもそこへ行かないと行けないような気がしたのだ。
    そして、その予感は当たっていた。
    暗がりからでも湖畔に金に輝く髪が揺れているのがわかる。
    光の守護聖である自分よりもさらにまばゆい光を放つのはこの飛空都市でただひとり。ーアンジェリーク
    近づくと声を立てずに泣いているのがわかった。
    声を掛けると驚かせるに違いない。
    だからといって、何もせず近づくのはもっと驚かせる。
    ジュリアスは声を潜めながらアンジェリークに話しかけた。

    「どうした、泣いているのか?」

    アンジェリークは身体をびくっとさせながら、ジュリアスの方を振り向いた。
    そこに見えたのは涙の跡。
    相当長い時間ここにいたのであろうか。
    目は真っ赤に染まり上がっていた。
    そして、ジュリアスが伸ばしてつかんだ彼女の手首は冷たかった。

    「ジュリアス様……」

    女王候補として日々試験に立ち向かっている彼女にとって、泣いている姿を首座の守護聖である自分に見られたくはなかったであろう。
    しかし、定期審査の結果はアンジェリークが女王に近づいていることを示している。
    そして、女王陛下と守護聖の協力は必要不可欠。ましてや、自分が首座という立場を考えると、彼女との絆は深めておいた方が今後につながるであろう。

    「何か悩みがあるのであれば聞こう。年齢が離れているがゆえ話せないこともあるかもしれないが……」

    ジュリアスが話しかけると、アンジェリークはさっと首を横に振る。

    「いえ、むしろジュリアス様だからこそ、話せることかもしれません」

    アンジェリークから意外な言葉。
    彼女とは年齢が離れているがゆえ、正直なところ、距離が近いとは言い難かった。
    しかし、年長者ゆえに信頼されていることは決して不快なことではない。
    しかし、このまま森の湖にいたところでアンジェリークが風邪を引くのは目に見えている。
    迷った末、ジュリアスは私室に案内することにした。


    「こわくなったのです」

    アンジェリークはポツリとそう話す。
    手元にあるのはカプチーノ。
    ジュリアス自身はエスプレッソが好きだが、よくこの部屋を訪ねるオスカーのために用意したものだ。
    カプチーノが生み出す泡で少しは心が落ち着いたのだろうか、アンジェリークは話し始めた。
    女王候補生に選ばれたと聞いたときも深く考えなかった。
    そして、女王試験も目の前のことをこなすことで精いっぱいだった。
    それが女王という座が現実のものとして近づいてきたことによって自分の力が恐ろしくなったのだという。

    「私のミスひとつで人間だけでなく、たくさんの動物や植物の命を落としてしまう…… そのことに気がついてしまったのです」

    アンジェリークが話すことにジュリアスは納得する。
    今まで、何人もの守護聖たちが聖地を訪れるのを見てきた。
    そして、彼らも少なからず似たような悩みを抱えていた。
    自分の力の大きさと影響力に。
    そして、ミスひとつがもたらす被害について。
    ましてや女王ともなれば、守護聖とは比較にならないほどの力を操る。
    そう、彼女は女王になるにはあまりにも「普通」すぎたのだ。
    いや、正確に言えば違う。
    素質そのものは歴代の女王と比べて遜色ない。むしろ、能力は高いだろう。
    しかし、女王になるための教育を受けてこなかったがゆえ、心構えという点ではまだ未熟な点もある。
    それをどう乗り越えるかが女王試験中の試練であり、そして彼女が女王になったときにも幾度か悩まされることだろう。ジュリアスはそう思った。


    それからふたりは森の湖で語らうようになった。
    金の曜日の午後一番。それがいつしかふたりの間で決められた逢瀬の時間であった。
    ふたりで会うことによって気づかされたことはたくさんあった。
    例えば、アンジェリークはドジな部分もあるように見えたが、一方で芯の強さが垣間見える箇所もあった。
    そして、彼女がジュリアスを見つめる瞳も聖地で初めて会ったときとは異なり、力強く、それでいながら信頼が見られた。……ような気がする。
    だんだん話すことも増え、最初は育成状況の相談や守護聖同士の噂話であったが、お互いがどのように育ってきたのか、そしてこれからのことも話すようになってきた。
    そう、いつしかふたりは金の曜日の語らいが楽しみになってきた。
    そして、互いが特別な人として意識するようになってきた。……少なくともジュリアスにとってアンジェリークはそういう存在であった。

    そして、森の湖で会った最後の日の会話を覚えている。
    アンジェリークが育成している島、エリューシオンに建てられた建物は65。
    おそらく月の曜日の育成で中央の島に建物が到達するのは予想がついた。
    自分の中に芽生えている感情。
    おそらくこれは「恋」。
    しかし、女王候補と守護聖の恋にジュリアスは苦い記憶を持っている。
    そのときは今よりも若いこともあった。そして、自分はおそらく知らなかったのだろう。恋というものが持つ力の恐ろしさに。
    ただ、「くらだない」としか思えなかった。
    当人たちの葛藤がいかほどであったか。それは今にして実感する。もっとも今頃そのことに気がついたことで過去は取り戻せないが。
    そして、ジュリアス自身も覚悟を決める日が来た。
    彼女を女王として羽ばたかせる日が近づいてきたことを。
    今、ここで自分の想いを告げ、女王ではなく補佐官になる選択肢を考えてもらうこともできる。
    今すぐは無理でも明後日の日の曜日まで猶予は残されている。
    だけど、そんなジュリアスの考えを見抜かれただろうか。
    アンジェリークは今までに見たことのない瞳でジュリアスを見つめてきた。
    こんなに力強い眼差しができるようになったのだな……
    初めて会ったときに自分の瞳を見つめることなど夢のまた夢で、おどおどしながら執務室を訪れていたときのことを思い出しながらジュリアスはそう思った。
    これだけの瞳を持つのであれば宇宙の統治も安心して任せられるだろう。
    そんな考えが伝わったのだろうか。

    「私、女王になりますね」

    アンジェリークはきっぱりとそう言い放った。
    そして、それ以上、何事も告げることなく森の湖から去っていく。
    最後にチラッとこちらを見たが、そのときの表情をとらえることはできなかった。
    ただ、頭のてっぺんにある赤いリボンがいつもより揺れている。
    そんなことを思いながら、ジュリアスはアンジェリークの後ろ姿を見送っていた。



    「宇宙のバランスが悪くなっております」

    女王陛下ーアンジェリークの異変に真っ先に気がついたのは、王立研究院であった。
    王立研究院から呼び立てがあり、データを見たところジュリアスは目を見開かざるを得なかった。
    宇宙全体が光り輝いており、溢れんばかりのエネルギーが今にも爆発しようとしていた。

    「本来、ジュリアス様のサクリアの力、『誇り』が満ちるのは自信に溢れる良い前兆なのですが……」

    申し訳なさそうに研究員が伝えてくる。
    守護聖相手に意見をすることなど畏れ多いと思っているのだろう。
    しかし、それでもこのことを伝えてくるのは、遠からず宇宙の危機が来るということを感じ取っているからであろう。
    そう、研究員が話すように本来であれば光のサクリアが与える力「誇り」は人々が自信を持って生きるために必要な大切な力である。
    しかし、誇りが過剰になると人々は自信は傲慢へと変わる。
    そして、傲慢と慢心がぶつかり合い、争いが生まれる。
    現在の光のサクリアの割合を考えると、その日も近いのだろう。
    そして、人間の力の暴走次第では宇宙の破滅も迎えかねない。
    もしかするとそこまで計算しているのかもしれない。
    どっちみち、現在の状況は芳しくない。
    陛下と機会を設けて話し合うべきだろう。
    それから間もなくであった。アンジェリークが倒れたという連絡を受けたのは。


    ジュリアスが思考の海にとらわれていると、扉が小さくノックされたことに気がつく。
    そっと扉を開けるとそこにいたのはオスカーであった。

    「ロザリアからジュリアス様の様子を見てきてほしいと言われましたので」

    言葉を選びながらオスカーがジュリアスに話しかけてくる。
    そして、その言葉にあるロザリアの真意を勘ぐる。
    思い当たることがあるような気もするが、これといって浮かぶものも正直なところない。
    女性ひとりが眠っている部屋にオスカーを案内するわけにもいかず、ジュリアスはロビーへと場所を移動することにした。
    幸いアンジェリークの容態も安定しているように見受けられたから。

    「光のサクリアの充満の件は、王立研究院からうかがいました」

    周りに誰がいるかわかったものではないため、声を潜めながらオスカーがジュリアスに話しかける。

    「ああ、陛下と対策をしなければと思っていた矢先に」
    「なるほど…… 陛下と、ですか……」

    カップに注がれたカプチーノを口に運びながらオスカーはジュリアスの言葉に耳を傾ける。
    そして、意味深な様子で「陛下」の部分にアクセントをつける。
    女性の心の機微には右に出るものはそう出るものはいない。それがジュリアスから見たオスカーの印象であった。
    おそらく口に出さないだけで自分とアンジェリークの間がどのような関係だったのかは見透かしていたのだろう。
    先に言われる前にジュリアスは自分の考えを口にする。
    それはオスカーに伝えるのもあったが、自分自身に言い聞かせる部分も大きかった。

    「クラヴィスにあのようなことを言った手前、私も個人的な感情で動くわけにはいかない」

    前女王が候補生であったときクラヴィスと恋仲になった。
    しかし、前女王はクラヴィスよりも宇宙を選んだ。
    それが表面上の出来事である。
    その陰にそれぞれの葛藤があったのか、それともふたりとも割り切ったものがあったのか、それはジュリアスの知るところではない。

    「ジュリアス様、時代は確実に変化しております。そして、それは前女王陛下もお望みのことであったかと」

    オスカーの言うことももっともである。
    宇宙が望んだからか、それともアンジェリークが即位したからかはわからないが、アンジェリークが聖地にやってくる前と雰囲気が変わったのを感じる。
    そして、前女王もアンジェリークに資質を見出していた。
    それは宇宙に求めているのは整然とした世界ではなく、若さ溢れる世界だったからに違いない。
    かつてクラヴィスにしたことが気に病まないと言えば嘘になる。
    しかし、彼は他者に対して、自分と同じ決断を求める人間ではないだろう。
    アンジェリークは眠りについている。
    そうなれば、ジュリアス自身が迷わず自分の道を進むのみ。

    「私が想いを告げれば、あの瞳はもう一度開いてくれるのだろうか」

    そう決断しながらジュリアスは再びアンジェリークの部屋へと入る。
    彼女と宇宙の未来だけでなく、ただの男と女としての未来も築きあげるために。



    アンジェリークの部屋に入ったものの、ジュリアスはしばし彼女の顔を見つめていた。
    自分がやるべきことはわかっている。
    とはいえ、オスカーではあるまいし、眠っている相手に想いを告げるほどジュリアスも恋愛に慣れているとはいえない。
    さきほどと変わりないアンジェリークの顔を見つめながら時が刻まれるのを感じるだけであった。
    こういうときはやはり、口づけて想いを告げるできなのだろうか?
    そう思い、ジュリアスがアンジェリークに顔を近づけた瞬間、彼女の瞳がパチリと開くのを見つけた。

    「アンジェリーク……」

    咄嗟に出たのは、名前。
    女王陛下ではなく、無意識にアンジェリークと呼んでいた。
    意識が戻ったばかりで意識が覚醒しきっていないのか、アンジェリークはそのことを指摘することなく、ただ呟いた。

    「長い夢を見ていたような気がする」

    と、ただそれだけを。

    「そうか……」

    どのような夢だったのだろう。
    せめて夢の中だけでも彼女には幸せでいてほしい。そう思わざるを得ない。
    すると、何かに気がついたかのようにアンジェリークはジュリアスに尋ねてくる。

    「宇宙の様子はどう?」
    「ああ、ロザリアと守護聖たちが協力して、何とかなっている」

    そう答えながらジュリアスは少し前に王立研究院から指摘された光のサクリアが過剰になっていることを思い出す。
    不思議なことにアンジェリークが眠っている間は、その兆候は見られなかったという。
    そして、それ以外は特に問題を感じられなかったため、何とか平穏は保てていたような気がする。
    あくまでも気のせいかもしれないが。

    「そう。よかったわ」

    アンジェリークはそう小さくため息を吐く。
    本当なら今すぐにでも執務を行いそうな彼女を少しでもベッドに留まらせようと、ジュリアスは確認したかったことを尋ねる。

    「そういえば、陛下。王立研究院から光のサクリアが充満し、過剰になっていると連絡を受けましたが」

    すると、アンジェリークは小さくため息を吐き、ジュリアスに瞳を向ける。
    少し怒ったような様子で。

    「ジュリアス、あなた自分で放出していながら気づいていなかったの?」
    「何!?」

    アンジェリークの口ぶりからすると、どうやら自分に責任があるらしいが、申し訳ないことに自覚はない。
    すると、アンジェリークが二度目のため息を吐きながら口を開く。

    「私が女王になってから、ううん、女王候補生でいたときから、光のサクリアは突出して送られていたのよ」

    確かに、女王候補生だったときは毎晩のようにサクリアの贈り物をしていた。
    彼女に少しでも女王の座に近づいてほしくて。そして、それが一番彼女に示せる愛情だと思っていたから。
    しかし、女王になったあとは正直なところ、その自覚はない。

    「その様子だと無意識だったようね」

    『無意識』、初めて気がつく。
    押さえ込んできた気持ち。
    それらを放出する術はなく、おそらくサクリアという形に化けたのだろう。
    そして、満たされぬ想いはひたすら宇宙を漂うことになる。守護聖も女王の力も届かないところで。

    「恋より宇宙を優先したかったから、あなたの想いに応えないでいたのに…… あれだけサクリアが漂っているのを見ると、『好きです。愛しています』と言っているようなものよ。それを気づかないフリして何とかバランスを保ちながら他のサクリアを宇宙に送り込んでいたけど、あなたはそんなこと関係なく次から次へと送ってくるのですもの」

    無意識に送られるサクリア。それを送り主に知られることなく何とかバランスを保つ。
    それがアンジェリークにどれだけ負担だったことか。
    返す言葉がないジュリアスに対し、アンジェリークは少し表情を崩してジュリアスに向き合う。

    「でも、あの日、私が森の湖でさっさと帰ってしまったのもいけなかったかもしれないわ。もっと素直になればよかった……」

    これから先は言葉は不要だった。
    ベッドから起き上がったアンジェリークがジュリアスの首に自分の手を回してきた。
    そして、それに応える形でジュリアスはアンジェリークのくちびるに自分のくちびるを重ねる。
    今までずっと告げることのできなかった想い。
    告げると宇宙が壊れてしまいそうな、そんな気持ちをどこかに抱えていた。
    だからこそ、抑え込んでいた。無駄だとわかっていても必死に。
    だけど、抱えることが却って宇宙の危機を招くとわかった以上、自分の気持ちに正直になろうと思った。年甲斐もないことだが。
    舌は絡み合い、お互いの顔が身体が火照るのを感じる。
    このまま部屋から立ち去ることが憚られ、ジュリアスはアンジェリークの身体をベッドに横たえる。
    アンジェリークは上目遣いでジュリアスを見つめる。
    ーどこでこのような表情を覚えたのだ
    そう思いながらアンジェリークを見つめると、さらにアンジェリークは惑わすような笑みをジュリアスに向ける。

    「でも、病み上がりだから、優しくしてね」
    「ああ、だが、宇宙の崩壊を招きかねないほどの想いだ。加減できるか、自信はないな」

    見ることなんて当の昔に諦めていた至福の果実。
    それが思いもよらぬ形で手に入る喜びを感じながら、ジュリアスはアンジェリークの服を一枚一枚丹念に脱がせ始めた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
    1381

    related works

    百合菜

    DONEアンジェリーク・ジュリリモ
    「ふたりで掴む未来」

    女王候補生のアンジェリークが日々訪れるのは首座の守護聖・ジュリアス様の執務室。
    次第に距離を縮めるふたりだが、ふたりには乗り越えるべき問題がいくつかあり……

    2020年ジュリアス様誕生日創作。

    ※再録です
    「アンジェリーク、今日もジュリアス様のところに行かれるの?」

    飛空都市にきて早くも五十日以上のときが流れていた。
    自室から守護聖たちのいる館に向かうべく歩いていたアンジェリークに話しかけてきたのは同じ女王候補のロザリア。

    「あんたも物好きよね。あのジュリアス様のところに毎日通うなんて」

    あきれ果てたように話すロザリアを見てアンジェリークは気がつく。
    女王試験がはじまった頃は苦手で、話しかけるのはこわいとすら感じていたジュリアス様。それがいつしか毎日会いにいき、ときには私的なことを話すようになった。そして、その時間が自分にとって女王試験の間の大切なひとときになっていることも。
    そんな自分に気がつきつつも、心の中でひとつの疑問が生じる。

    「ロザリアの方がジュリアス様とお似合いの感じがするのに……」

    いわゆる「普通の家庭」で生まれ育った自分とは違い、ロザリアは貴族のお嬢様。
    立ち振舞いも教養も逆立ちしても勝てっこない。だからこそ、ジュリアス様の隣に立ってふさわしいのは自分ではなくロザリアだと思っている。
    それは女王としても、私的な関係としても。
    しかし、ロザリアはジュリアスに関心が 6839

    百合菜

    DONEアンジェリーク・ジュリリモ
    「抑えていた想いは宇宙の危機を招き」

    ジュリアスのもとに入ってきた報告、それは「女王陛下が倒れた」というものだった。
    女王候補生時代、互いに好意を持っている自覚はあった。そして、お互い、宇宙を優先するがゆえ、その想いは殺した。
    しかし、それがあだとなり!?

    ※再録です


    「陛下の様子はどうだ」

    ドアを開けると同時に光の守護聖・ジュリアスはベッドの横にいるロザリアに尋ねる。

    「特に異常はありませんわ」
    「そうか」

    そう言いながらジュリアスはベッドに視線を向ける。
    ベッドには女王であるアンジェリークが瞼を閉じて眠りについている。
    ジュリアスがその知らせを受けたのは3日前のことであった。
    いつものように執務室でオスカーと打ち合わせをしていると、慌てた様子で使いのものがやってきた。

    「光の守護聖・ジュリアス様、大変です。陛下のご様子が!!」

    聞くところによると、執務の最中にアンジェリークは意識を失ったらしい。
    急遽、医者の診察を受けたが、特に異常は見当たらないとのこと。
    「もしかすると、何かを拒絶している可能性もないでしょうか」
    医者のその言葉が気になりつつも、特に大きく容態が変化することもなく、3日が過ぎていった。
    いつも見せる碧の瞳。
    それが瞼の下に隠されていることにジュリアスは心当たりがある。
    だからこそ、この状況が歯がゆい。

    「ロザリア、そなたも看病に疲れているであろう。ここは私が見ているから、少し休むといい」
    「よろしいのですか?」 7657

    百合菜

    DONEアンジェリーク・ジュリリモ
    「ふたりで掴む未来」

    女王候補生のアンジェリークが日々訪れるのは首座の守護聖・ジュリアス様の執務室。
    次第に距離を縮めるふたりだが、ふたりには乗り越えるべき問題がいくつかあり……

    2020年ジュリアス様誕生日創作。

    ※再録です
    「アンジェリーク、今日もジュリアス様のところに行かれるの?」

    飛空都市にきて早くも五十日以上のときが流れていた。
    自室から守護聖たちのいる館に向かうべく歩いていたアンジェリークに話しかけてきたのは同じ女王候補のロザリア。

    「あんたも物好きよね。あのジュリアス様のところに毎日通うなんて」

    あきれ果てたように話すロザリアを見てアンジェリークは気がつく。
    女王試験がはじまった頃は苦手で、話しかけるのはこわいとすら感じていたジュリアス様。それがいつしか毎日会いにいき、ときには私的なことを話すようになった。そして、その時間が自分にとって女王試験の間の大切なひとときになっていることも。
    そんな自分に気がつきつつも、心の中でひとつの疑問が生じる。

    「ロザリアの方がジュリアス様とお似合いの感じがするのに……」

    いわゆる「普通の家庭」で生まれ育った自分とは違い、ロザリアは貴族のお嬢様。
    立ち振舞いも教養も逆立ちしても勝てっこない。だからこそ、ジュリアス様の隣に立ってふさわしいのは自分ではなくロザリアだと思っている。
    それは女王としても、私的な関係としても。
    しかし、ロザリアはジュリアスに関心が 6839

    百合菜

    DONEアンジェリーク・ジュリリモ
    「抑えていた想いは宇宙の危機を招き」

    ジュリアスのもとに入ってきた報告、それは「女王陛下が倒れた」というものだった。
    女王候補生時代、互いに好意を持っている自覚はあった。そして、お互い、宇宙を優先するがゆえ、その想いは殺した。
    しかし、それがあだとなり!?

    ※再録です


    「陛下の様子はどうだ」

    ドアを開けると同時に光の守護聖・ジュリアスはベッドの横にいるロザリアに尋ねる。

    「特に異常はありませんわ」
    「そうか」

    そう言いながらジュリアスはベッドに視線を向ける。
    ベッドには女王であるアンジェリークが瞼を閉じて眠りについている。
    ジュリアスがその知らせを受けたのは3日前のことであった。
    いつものように執務室でオスカーと打ち合わせをしていると、慌てた様子で使いのものがやってきた。

    「光の守護聖・ジュリアス様、大変です。陛下のご様子が!!」

    聞くところによると、執務の最中にアンジェリークは意識を失ったらしい。
    急遽、医者の診察を受けたが、特に異常は見当たらないとのこと。
    「もしかすると、何かを拒絶している可能性もないでしょうか」
    医者のその言葉が気になりつつも、特に大きく容態が変化することもなく、3日が過ぎていった。
    いつも見せる碧の瞳。
    それが瞼の下に隠されていることにジュリアスは心当たりがある。
    だからこそ、この状況が歯がゆい。

    「ロザリア、そなたも看病に疲れているであろう。ここは私が見ているから、少し休むといい」
    「よろしいのですか?」 7657