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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か3・白龍と望美の話

    #白龍
    whiteDragon
    #遙か3
    haruka3
    #遙かなる時空の中で3
    harukanaruTokiNoNakade3
    ##遙か3

    「将臣くん、誕生日おめでとう」

    8月12日、勝浦。
    熊野川の怨霊の件は解決していないが、焦ったところで解決できるものでもない。
    歯がゆい気持ちを抱えつつ、その憂さを晴らすべく、一行は将臣の誕生日にかこつけ宴を開いていた。

    「兄さん、こんなものしか出せないけど」

    そう言いながら出したのはプリン。
    弾力と柔らかさのバランスがちょうどよく、プルンとしていて、見るからに美味しそうだ。

    「おおっと。これは譲特製の蜂蜜プリンじゃないか。相変わらずうまそーだな」
    「ありがとう。もっとも飲んでばかりの兄さんの口には合わないだろうけど」
    「別に俺だけが食べるわけでないからよ、気にするな」

    そんな兄弟の会話を横目に、プリンを初めて見る白龍は目を輝かせている。
    また、朔や景時も言葉にはしないが、一刻も早く口にしたがっている様子がうかがえる。

    そして、譲にうながされ一同はいただきますの声とともにプリンを口にする。
    こちらの世界にはない甘い味覚。
    想像していた以上の味わいに舌鼓を打つ。

    プリンを食べ終える頃、白龍が隣にいる望美にこっそりと尋ねた。

    「神子、誕生日って、何?」

    望美は白龍の目をしっかりと見ながら答える。

    「その人が生まれた日のことだよ。この世界ではお正月にみんな年齢がひとつ大きくなるけど、私たちの世界ではお誕生日に年齢がひとつ大きくなるの。それでみんなでこうしてお祝いするんだよ」

    望美の言葉に納得しつつ、白龍はどこか寂しげな表情を浮かべながら残りのプリンを口にする。

    「おいしかった」
    「よかった。白龍が幸せそうで」

    その言葉に隠されている望美の感情を察し、つい白龍は聞いてしまう。

    「神子は幸せじゃないの?」

    単刀直入な言葉に望美は少し考えて答える。

    「私は幸せだよ。白龍が幸せだから」

    偽りのないセリフ。
    だけど、なぜか白龍は納得がいかなかった。
    私が神子を幸せにしたいのであって、私の幸せが神子の幸せではないのに。
    どうすれば、神子は幸せになってくれるの? どうすれば、神子は笑顔でいてくれるの?
    一生懸命考えるけれど、答えは出てこない。ただ、プリンの甘さに心が蕩けているうちに、そのことは頭から離れていた。


    夜は更けたが、宴は終わる気配を見せない。
    とはいえ、白龍は小さな身体に負担が掛かるということを理由に強制的に寝床に連れていかれた。
    望美も保護者として一緒に来る。

    「ねぇ、神子」

    布団に潜り込みながら白龍が尋ねる。

    「私の幸せ以外に神子が幸せになることはないの?」

    先ほどのことが気になっているのだろう。
    どうしたらこの身体は小さいけれど、しっかりものの白龍を納得させられるだろう。
    望美は考える。

    「そうだね…… この世界から争いがなくなることかな?」

    考えた末に浮かんだ結論がそれだった。
    自分がこの世界に呼ばれた元凶ももとはと言えば争いだった。
    そして、この世界にいると元の世界がいかに平和だったか、いかに平穏だったか気がつかされる。
    一時のものかもしれないけれど、争いをなくしたい。
    それが望美の願いだった。

    その答えに納得したのだろう。
    白龍は「頑張ろうね」、そういって笑顔を向ける。

    そして、もう一度布団を掛け直した白龍が望美に聞いてきた。

    「私が大きくなっても、私のこと好きでいてくれる?」

    と。

    「もちろんだよ、白龍。小さいままでも大きくなっても白龍は白龍だよ、大好きだよ」

    その言葉を聞いて、白龍は安心する。
    ずっと譲や将臣が羨ましかった。
    あの体躯と力で望美を守っていたから。
    一方で、自分は小さいから、守るべき存在だから望美の隣にいられるのではないかという気持ちもどこかにあった。
    大きくなったら望美はどこかへ行ってしまう…… そんな不安は望美の一言によって消された。

    「ありがとう、神子。じゃあ、今度は私が神子を守ってあげる」

    満面の笑みを浮かべて白龍はそう答える。
    白龍が大人の姿になり、一同を驚かせるのはそれからまもなくのこと。
    大好きだよ」
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
    1381

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    百合菜

    MAIKING遙か3・望美→将臣の話。

    いつか書くかもしれない話の一部。
    「よお、久しぶり」

    屈託のない笑顔を見せながら夏の熊野に現れた幼馴染。
    心の奥に小さな痛みを感じながら、望美はそんな彼に笑顔を向ける。

    「将臣くん、久しぶり! まさか、こんなところで会えるなんてね」

    そう、近所のコンビニで同級生と会ったのとはわけが違う。
    いくら京と熊野は関わりがあるといっても、戦乱のさなかゆえ今日から熊野へ訪れるには時として命を掛ける必要もある。
    もしかすると、ここでふたりが出会うのは深い理由があるのかもしれない。
    あるいは避けられない運命なのかもしれない。
    どんな事情であれ、今は将臣と行動をともにすることができるのが望美にはうれしかった。

    熊野で将臣と過ごす期間は思いのほか、長くなりそうだった。
    なぜなら望美たちも将臣も同じ場所を目的地としていたが、さまざまな障害により、たどり着くのが困難だったからだ。
    遠回りをすることにした先で滞在することになった勝浦。
    しばらくここに留まることとなり、自由時間を持つことができた。
    久しぶりに波の音を近くで聞きたくなり、望美は浜辺へ行くことにした。

    「よお、そこにいたのか」

    浜でしゃがみ込みながら波を見ていると、幼いこ 2600

    百合菜

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    いつか書くかもしれない話の一部。
    「よお、久しぶり」

    屈託のない笑顔を見せながら夏の熊野に現れた幼馴染。
    心の奥に小さな痛みを感じながら、望美はそんな彼に笑顔を向ける。

    「将臣くん、久しぶり! まさか、こんなところで会えるなんてね」

    そう、近所のコンビニで同級生と会ったのとはわけが違う。
    いくら京と熊野は関わりがあるといっても、戦乱のさなかゆえ今日から熊野へ訪れるには時として命を掛ける必要もある。
    もしかすると、ここでふたりが出会うのは深い理由があるのかもしれない。
    あるいは避けられない運命なのかもしれない。
    どんな事情であれ、今は将臣と行動をともにすることができるのが望美にはうれしかった。

    熊野で将臣と過ごす期間は思いのほか、長くなりそうだった。
    なぜなら望美たちも将臣も同じ場所を目的地としていたが、さまざまな障害により、たどり着くのが困難だったからだ。
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    しばらくここに留まることとなり、自由時間を持つことができた。
    久しぶりに波の音を近くで聞きたくなり、望美は浜辺へ行くことにした。

    「よお、そこにいたのか」

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