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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    2020年のバレンタイン創作です。
    pixivで掲載していたものの未完に。
    完結させるべくまずはこちらで掲載していきたいと思います。

    「届かない想い side:玲」の関さんバージョン。
    タグに「関玲」と入れていますが、ふたりはつき合う前の段階ですので、ご了承ください。

    こちらも話としては関さん本編の中盤あたり。季節は無視しています。

    ##関玲
    ##2020年バレンタイン創作

    届かない想い side:関「関さん、お疲れ様です」
    「ハヤト、悪いな。呼び出してしまって」

    金曜日、関にとっては毎週恒例の見回りの日。
    そして、世間ではバレンタインデーでもある。
    そんな日に関は以前から面識のあるハヤトと待ち合わせをしていた。
    場所は池袋西口の東京芸術劇場前にある公園。
    かつてはブルーシートが張られてホームレスが生活していたとも聞くが、今はその面影はなくなっている。しかし、やはりヤンチャな若者が週末の夜を満喫しており、違う意味で街に危険が迫っていることに変わりはない。
    そんな若者たちの中から人懐っこさを感じさせる笑みを浮かべたハヤトは駆け寄ってきた。

    「今年もすごい豊作ですね」

    そう言いながらハヤトが視線を送ったのは関が持っている紙袋。
    中にはぎっしりチョコレートが詰まっている。

    「ああ、これでも半分くらいなんだが……」

    そう言いながら関は困った表情を浮かべる。
    ひとりでは消費しきれないチョコレートの山。
    そこで、既製品のものに限って、ハヤトに受け取ってもらうことにした。
    贈り物は相手に渡す時点で役目を果たす。自分にそう言い聞かせながら。
    もちろん、そこに添えられたメッセージは抜き出している。また、誰からもらったかもきちんとメモを残している。来月のホワイトデーにきちんとお返しができるように。

    「そういえば、今日はマトリのお姉さんはいないんですね」

    関からチョコレートが入った紙袋を受け取ったハヤトは何かに気がついたかのように、そう話す。
    関もここ最近、玲に対してぎこちない態度を取っていることを自覚しながら話す。

    「ああ、別に『彼女』というわけではないからな」

    そう話していながら胸が痛むのはなぜだろうか。
    本当はわかっているのかもしれない。自分の気持ちに。そして、無意識に求めているのかもしれない。彼女の温もりに、そして、彼女自身の存在を。
    だけど、今はまだ気がつかないフリをしていたい。今なら引き返すことができるから。

    「でも、お姉さんからはチョコレート、もらったんですよね? だって、関さんのことが大好きというオーラが伝わってきたから」

    ハヤトの何気ない一言で、関は夕方から気にしていることを思い出す。
    いや、バレンタインという行事で周りから浮かれる空気を感じたときから、意識していたのかもしれない。

    少し前から気づいていた玲の自分への好意。
    そして、バレンタインデーに玲は自分にチョコレートをくれるものだとてっきり思いこんでいた。

    だから、外出から戻り、自席についてからも気が気ではなかった。さりげない形でチョコレートを渡してくれるのではないかと思って。
    だけど、そんな素振りも見せることはなかった。

    もしかすると……そんな淡い想いを抱いて自席に積み上げられていたチョコレートをひとつひとつ確認しても彼女の名前を目撃することはできなかった。
    そのことに落胆している自分に驚きつつも、もっと驚いたのは机に向かって業務に励んでいる玲から涙がこぼれていることだった。
    理由は思い当たらない。
    自分にチョコレートが渡っていないことと関係あるのか、それともまったく関係ないことなのか。
    あいにく察することができるほどの判断能力と人生経験は持ち合わせていなかった。

    ただ言えるのは、涙を見せた彼女を見て胸が傷んだことと、そんな彼女がチョコレートをもらえなかったことに思いの外ショックを受けていること。それだけだった。

    そのとき、ハヤトから茶色の破片が一片渡された。

    「関さん、これあげる。って、もともと関さんがもらったものだけどな」

    見ればそれは誰かからもらったチョコレート。正直なところ、誰から渡されてものなのか、判断することは難しい。
    そんな自分の冷淡さを自覚しながらハヤトの好意に甘えてチョコレートを口にする。

    「苦いな……」

    それなりに人生経験を積んだから、ビターな味わいを楽しむことはできるかと思った。
    だけど、想像とは異なり、苦さが口の中に残り消えることがない。
    それはまるで今の自分の気持ちのように。

    「じゃあ、ハヤト、またな」

    そう告げて関は見回りを始めることにする。
    周りに溢れているスイートなカップルたちからも、自分の中に残るビターな感情からも逃げるかのように。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
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    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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    百合菜

    PAST遙か6・有梓
    「恋心は雨にかき消されて」

    2019年有馬誕生日創作。
    私が遙か6にはまったのは、猛暑の2018年のため、創作ではいつも「暑い暑い」と言っている有馬と梓。
    この年は気分を変えて雨を降らせてみることにしました。
    おそらくタイトル詐欺の話。
    先ほどまでのうだるような暑さはどこへやら、浅草の空は気がつくと真っ黒な雲が浮かび上がっていた。

    「雨が降りそうね」

    横にいる千代がそう呟く。
    そして、一歩後ろを歩いていた有馬も頷く。

    「ああ、このままだと雨が降るかもしれない。今日の探索は切り上げよう」

    その言葉に従い、梓と千代は足早に軍邸に戻る。
    ドアを開け、建物の中に入った途端、大粒の雨が地面を叩きつける。
    有馬の判断に感謝しながら、梓は靴を脱いだ。

    「有馬さんはこのあと、どうされるのですか?」
    「俺は両国橋付近の様子が気になるから、様子を見てくる」
    「こんな雨の中ですか!?」

    彼らしい答えに納得しつつも、やはり驚く。
    普通の人なら外出を避ける天気。そこを自ら出向くのは軍人としての役目もあるのだろうが、おそらく有馬自身も責任感が強いことに由来するのだろう。

    「もうすぐ市民が楽しみにしている催しがある。被害がないか確かめるのも大切な役目だ」

    悪天候を気にする素振りも見せず、いつも通り感情が読み取りにくい表情で淡々と話す。
    そう、これが有馬さん。黒龍の神子とはいえ、踏み入れられない・踏み入れさせてくれない領域。
    自らの任 1947