冬の中に感じる春の温もり冬は嫌いだ。
それは関大輔が子どもの頃に抱いていた感想だった。
築年数を重ねた部屋の中には寒気が覆い尽し、大輔を襲ってくる。
暖房設備はあることにはあるのだが、脆弱で寒さを吹き飛ばすには心許ない。
そもそも母親が女手ひとつで生活を支えているこの家で暖房を使うのは贅沢の範疇に入る。
寒いときは布団の中で丸まって過ごす。そして、布団の温度が自分の体温と同化するのを感じるのを待つ。
それが大輔の幼い頃の冬の記憶だった。
「また、あの夢か……」
布団と身体の隙間から入り込んできた1月下旬の冷たい空気で大輔は目を覚ます。
寝起きの悪さを自覚している自分だが、冬はむしろ寒さでいったん目が覚めてしまうことが多い。
それはもしかすると、物理的に寒さを感じるだけではなく、幼い頃の記憶がよみがえって苦しくなるからかもしれない。
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