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    kiri_nori

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    お題はメル燐ワンウィークドロライさんよりお借りしました。

    ##メル燐

    休憩時間 スタッフの休憩入りますの声と共に現場の空気が張り詰めたものから一息ついたものになる。それ自体は悪いものではなく、撮影が開始したときに再び万全のコンディションで挑むために適度な休息は必要だ。だからHiMERUとして完璧なパフォーマンスをするべく休もうと思っていたというのに。
    「メルメルお疲れ~さっきの燐音くんのカメラ目線どうだった? 痺れたっしょ?」
    「HiMERUの位置からだと天城の視線が見えなかったことを分かって言っていますね」
    「きゃはは。バレたァ?」
    「……はぁ。後で確認するのですからその時に判断してあげますよ」
    「嬉しいこと言ってくれるねェ」
     そう言いながら天城が隣の椅子に座ってきた。この男が隣に来るとまともな休憩もできない。他にスタッフもいる状況で完全に無視を決め込むことも躊躇われ、気付けば会話を続けてしまう。……別に、天城と話していたところでパフォーマンスが落ちてしまうHiMERUではないのですが。
     とはいえ天城がいない方が落ち着いて休めるのも事実だ。出来るならばここを離れてほしい。
    「こちらに来なくても椎名のところに行って相手をしてもらったらどうですか」
    「え~メルメルにそんなこと言われると俺っち寂しいんだけどォ」
     笑いながら言われたところで説得力なんて皆無だ。何よりこの男が本当に寂しいと感じているなら言葉になんてしないだろうなと思っている。
    「……寂しいならもう少し殊勝な振りでもしたらいいのではないですか」
    「ご忠告どうも。まァ、実際ニキは今俺っちどころか誰の相手もしないっしょ」
     天城が指差した方を見れば椎名が一心不乱に差し入れを食べていて、桜河がその勢いに半ば感心しながら自分も差し入れを口に運んでいるのが見えた。確かに今日の撮影は予定よりいくらか長引いていた。椎名の空腹が限界寸前だったということだろう。
     休憩に入るまでその素振りを表に出さないようにしていたのは椎名もアイドルとしての自覚が強くなったということか。……天城が椎名の方に行かない理由は分かった。これで桜河の元に行かれてもまた面倒だ。仕方ない。この休憩時間は天城と過ごすことになるだろう。諦めのため息を飲み込むために、用意されていたペットボトルの蓋を開けて水を口に含んだ。
    「おっ、メルメル後で一口ちょうだい」
    「嫌です。天城も自分に用意された水があるでしょう」
    「俺っちのは遠くにあるからさァ。助けると思ってこの通り!」
     両手を合わせてわざとらしくこちらを見上げるような体勢を取ってくる。遠いといってもこのスタジオ内である。少し歩けば届く場所に置いてあるのは間違いなかった。
    「大体、天城の一口は本当に一口なのか当てにならないのですよ」
    「だいじょーぶだって。メルメル相手に飲みすぎることはしないって」
     この言葉を信用できるかと問われれば、信用できない。こんなことを言いながら残っている量の半分を飲んでしまわないとも言い切れないのだ。
     天城に自分の水を取りに行かせるのが一番手っ取り早く、誰も損をしない方法である。しかし天城が素直にここを離れて取りに行くわけもないと長くはない付き合いの中で分かってしまっていた。
     チラリと時計を確認する。休憩の終わりまではまだ時間があり、それまで天城の要求をかわし続けるのは得策でないように思えた。天城を見れば、妙に人懐っこい笑顔を浮かべたままこちらを見ている。
     しょうがない。天城に効果はないと分かっていても、これ見よがしにため息を吐いた。
    「……ちゃんとHiMERUの分も残しておいてくださいね」
    「任せるっしょ! 万が一飲みすぎたら俺っちのを分けてやンよ」
    「そういうことではないのです」
     天城にペットボトルを渡せば躊躇うことなく口をつけた。どうせ今の休憩が終われば仕事の終わりまでノンストップで続けることになるだろう。だから仮に全部飲んでしまわれたところで困りはしない。でも、仕事が終われば多少の水分補給は必要になる。その時は本人が言ったのだから天城の水をもらうとしよう。そう思いながら減っていくペットボトルの水を眺めていた。
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