どこか遠くから歌が聞こえてくる。それは燐音が先日レコーディングを終えたばかりの新曲でまだ世間には発表されていないはずだ。ああ、いや、でも、この声はHiMERUのものだろう。
燐音がそこに気付くと同時に意識がゆっくりと覚醒してきて目を開ければ視界がやけに暗かった。そうか、ヘアバンドがズレてるのか。ベッド以外で寝ているときはたまにあるからさほど気にせずにヘアバンドを上にずらせば燐音は自分の目を疑った。寝起きでどこかぼんやりしていた頭が一気に覚醒していく。
「おや、起きましたか」
「メ、メルメル!?」
燐音の顔を覗き込むようにHiMERUが首を下に曲げた。その動きと共に髪の毛も少し垂れてくる。さすが伊達男は下から見上げてもサマになっているな。……ではなく、HiMERUを見上げている今の状況がおかしいのだ。
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