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    fgskhry

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    bnalりゅさい
    ものすごくいつもの感じ。出来ていない。

    2022りゅ誕 有志が作ったご馳走も、司書が用意したケーキも、祝いの席の食事はとても美味しかった。その後は親しい友人達とバーの雰囲気を楽しんで、少々のお酒も呑んだ。鼻歌交じりに自室に戻ると夜半過ぎになっていた。
     芥川の誕生日はいつの間にか終わっていたようだった。
     寝巻きに着替えて布団を敷いて、ほっとひと息吐く。風呂は明日でいいよね、と誰に言い訳するでもなく決定し、ふと部屋の隅に目をやった。今はもう昨日になった日の為に、皆が用意してくれたプレゼントが積んである。後輩達が気を効かせて運び込んでおいてくれたのだ。その中の一番上の片手に乗る小さな箱が目に入り、芥川は手を伸ばした。空色のリボンに艶のある青い紙で包まれたそれは、『芥川、改めて誕生日おめでとう』と祝いの言葉ともに室生から受け取ったものだった。
     「芥川、誕生日の祝いは羊羹でいいか?」
    そう室生に訊かれたのは一昨日の事だ。
    「え、僕に言っちゃうの。ああ、うん、……そうだねえ」
    「なんだ、希望があるなら聞くぞ」
    気乗りのしない様子でいると重ねて訊ねられた。最初からそのつもりのようだった。
    「それなら、ちゃんと残るものが良いな」
    今度が彼が首を傾げた。芥川はことさら幼げに見える室生にちらりと笑うと、
    「湯呑みでも硯でも帽子でも。君が良いと思ったものを」
    と言ったのだ。
     ねだったそれを持ち上げると、見た目よりずっしりと重い。布団の上にしっかり腰を据えて、リボンを引き包みを解く。厚手の頑丈そうなうぐいす色の紙箱が出てきた。わくわくと蓋を開けると、中身がほのかに透けて見える薄紙が急く気持ちを阻む。取り出して紙を剥がすと、青銅色の福々とした丸い小鳥が現れた。背の紐通しに橙色の紐が蝶結びに結んである。
    「ふふ」
    時間に余裕がない中、ああでもないこうでもないと悩みながら街を探し回ったのだろう室生を想像して、芥川は可愛らしい文鎮を文机に置いた。

     翌日、芥川が食堂に現れた時分にはとうに朝は過ぎ去っていた。なんとなく来てみたが、昼食にはまだ早くテーブルに座る人の姿はなかった。一夜明けて微妙に腹が空いたような、そうでもないような。持て余し気味で出入り口に立っていると、後ろから声を掛かけられた。
    「そんなところでどうしたんだ」
    確認までもない声の主に振り返る。
    「おはよう、犀星」
    「おそよう、芥川。また朝ご飯食べ損ねたんだろ。そこに座ってちょっと待ってろ」
    呆れたように肩を竦めて、昼の準備に忙しそうな厨房に向かった。言われた通りに待っていると、彼はスープ皿を運んできた。
    「昼食に用意していたものを分けてもらったんだ」
    芥川の前にそれを置くと、自分は新聞を片手に向かいに座った。それを眺めながら芥川の食事に付き合ってくれるつもりらしい。
    「どうぞ召し上がれ」
    「いただきます」
    中身はミネストローネだった。湯気を立てているトマトのスープに匙を入れる。小さなサイコロ程の大きさの野菜がザクザク入っていた。
    「これはこれでいいけれど、お味噌汁が良かったな。出来れば大根と油揚げの」
    「朝は豆腐の味噌汁だったぞ、残念だったな」
    そう答えると紙面に目線を落とした。芥川が黙々と食べていると、ふと気づいたように顔を上げる。
    「朔はそれに粉チーズをかけるのが好きだったな。使うか?」
    「いや、僕はこのままでいいよ」
    会話が再開したのを切っ掛けに、芥川は言うべきことがあったとそのまま手を止めた。
    「犀星、プレゼントをありがとう。可愛い雀だね」
    「いいだろう、期待に添えたか?」
    得意げににかっと笑う。そういう顔をすると本当に年端のいかない少年みたいだと思う。怒られるので言わないが。
    「もちろん」
    「雀だけでもいいんだが、本当は、三つで一組にしたかったんだ」
    「三つ?」
    「笹紋様の筆置きと、丸い池みたいな硯と」
    「なるほど。揃うと、犀星の庭が机の上に現れるんだね」
    室生のいう物を想像の中で並べてみる。それらの傍らに感じて日々を営むのはとても良い事に思えた。
    「折角なら揃えたいから、お店を教えてくれるかい」
    「これは俺の拘りだから、無理に揃えることはないぞ」
    「君が僕に良いと思ったものを手元に置くことが大事なんだよ」
    「そうか」
    照れたように目を逸らす彼に芥川は畳み掛ける。
    「じゃあ、お昼ごはんを食べたら出掛けよう。犀星、今日の午後空いてるよね」
    突然の誘いに驚いたように瞬きしたあと、ため息一つ吐いて室生は頷いてくれた。
    「分かった、いいぞ」
    「ふふ、楽しみだなあ」
    「けど出掛けるのなら、まず風呂に入ってからだぞ」
    今や満面の笑顔の芥川は出鼻を挫かれてしまった。けれど無精を嗅ぎ付けられたのも、室生が自分を気に掛けるが故だと思い直してにっこり笑ってみる。すると室生から、抵抗しないことに訝しそうな目を向けられた。
     これだから彼は厄介で、手放せないのだ。
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