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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ
    よその子さんお借りしてます

    信頼 奇妙な没が出たということで現場にやってきた琥珀。現場を来て一つの違和感に思わず眉を顰める。没が出たと言う割には現場が綺麗なのだ。暴れて地面や建物が壊れている様子もない、綺麗すぎるのだ。そう、よく見かける街路樹もガードレールも見当たらず、そこ一角だけが本当に何も無いのだ。
    「……なんだこれ」
    「見事に何もないな」
     いつの間にかサクリも琥珀の影から出てきて辺りを見回す、先に応戦していたはずのツクリテとニジゲンもいないのだ。何かおかしい、ふと、琥珀は咄嗟に後ろを向いた。
     目線の先には一冊の本がふわふわと浮かんでいたのだ。表紙は赤茶色でタイトルは何か書かれているのは見えたが、文字が消えかかっており読めなかった。その本はふわふわとその場で浮かんでいるだけでこちらになにかしてくる様子は今のところない。
    「……本?」
     すると本はおもむろにページを開き始める、パラパラと紙の擦れる音が周りに響く。琥珀は剣を構え、サクリはおもむろにその本を刺そうとした、そう、刺したはずだった。
    「は?」
     すぅ、とサクリが振り下ろした槍の先が本を刺すことなく地面に刺さる。透けたのだ、サクリはその場から離れた、おかしい。確かに刺した感覚があったはずなのだ。
     すると本はばっ、と動き出し中から何かが飛び出る、近くで見たサクリはすぐに分かった、文字の文章が縄のように出ていると、そのまま自分に攻撃するのかと思ったが、その縄はまっすぐ琥珀の方へ向かう。
     琥珀はその攻撃を薙ぎ払うように剣を振るった、振るったのだが琥珀はすぐに驚いた顔をする。確かに斬った感覚があるのにすぅとすり抜けるのだ。
    「な、斬ったはずだろ!?」
    「おい逃げろ!」
     間に合うか? とサクリが魔法を出そうとしたがどこから出て来た紙のページに邪魔をされた。なら琥珀の影から出れば、と急いで影に入る。
     琥珀はそのまま後ろに急いで下がったがすぐに足が動かない。足を見ると紙のページが琥珀の足を固定していた、力をいれて振りほどこうとするが叶わない。そうしているうちに文章の縄は琥珀の腕を掴んだ。
    「しまっ……」
    「おい!」
     その時サクリが琥珀の影から出てきた、そして琥珀を掴もうとしたが紙のページや文章の縄がサクリの邪魔をする。そうしているうちに琥珀はずる、ずると縄に引きずられ本に引き込まれようとしていた。
    「あぁ! 邪魔だ!」
    「っ、くそっ!」
     琥珀はおもむろに地面に剣を突き刺す。少しでも引きずられないように、との悪あがきだったがそれも虚しく、本の中に引きずり込まれてしまった。その表紙で琥珀のマキナである剣が琥珀の手から滑り落ちてしまう。
     サクリは槍で本を刺したが、何度刺しても本の表紙すらに傷ひとつ入らない。燃やしてやろうかと思ったが、燃やすと中に引きずり込まれてしまった琥珀も燃えてしまうのかと考えてしまい出来ない。サクリは舌打ちをして本を見た。

    「……い、たい……」
     琥珀はゆっくり起きて辺りを見た、腕が痛くそっと服の袖をまくると締め付けられた跡が痛々しく残っていた。マキナもなくこれ程危機感を覚えたことはない、琥珀は周りの様子を見渡した。
     周りは薄暗く、長テーブルと椅子がずらりと並んでいた。テーブルには白いテーブルクロスがかけられ、食器が席ごとに並んでいた。まるで屋敷の食堂の描写を実際に置いてあるかのように。窓があったが外の様子は真っ暗でなにも見えず、赤いカーテンがこの空間に嫌に目立っていた。
     琥珀は警戒しながらテーブルの近くまでやってきた、食器には何も入っていない。近づいて気づいたが、当主が座る席になにやら額縁が置かれていた。その額縁には何も飾られていない。
     すると、勝手に椅子が一つ動き、琥珀は警戒するように離れた。椅子が動いただけで何もしてくる様子はない、もしかしたら座れと言っているのだろうか。琥珀はゆっくりと椅子に近づき、ゆっくりと座る。座ったが特に拘束された様子はない。
     座った瞬間、食器になにか入っていることがわかった、琥珀がそっと覗くようにみると思わず顔を顰めた。
    「……な、これ……」
     それは人の苦しそうな顔だった、一つだけではない、何十人と押しつめられるようにそこにあった。もしかしてこの没の犠牲者かと琥珀は顔色を悪くした。
     もしかして、応戦していたツクリテとニジゲンもここに? との考えが過ぎる。すると没の気配を感じておもむろに顔を上げると当主の座る席に没がいるではないか。先程見かけた額縁を大事そうに抱え、なにか言葉を発していた。
    「……」
     マキナのない以上、琥珀はそっとナイフを手にした。何も無いよりかはましだ、と考えそっと椅子から立ち上がろうとした時、メモが置かれていることに気づき読んだ。
     そこには、【お前はニジゲンを信じれるか】との文字が。すると先程まで誰も座ってなかったはずの椅子に黒いモヤが立ち込めた、そのモヤ達は何か言葉を発していた、没と違い何を言っているからはすぐに分かる。
    【お前はあのニジゲンを信じるのか】
    【自分の作品のニジゲンではないのにか】
    【敵同士なのにか】
    「…………」
     琥珀はその言葉を聞きつつ、もしかしてこのモヤ達は犠牲者なのではないかと一つの仮定が生まれた。こうやって引きずり込まれたツクリテに対して揺さぶりをかけてるのかと。それにしても、と琥珀は持っていたナイフをテーブルに勢いよく突き刺した。
    「……耳障りな言葉だな」
     琥珀は苛立つようにナイフを引き抜く、そして立ち上がり足をあげたかと思うとそのままテーブルに勢いよく踵を振り下ろしぶつける。
    「何も知らないお前らが語るな。俺はアイツを信じてる、この言葉に嘘偽りなんてない。俺が選んだ相棒だからな、アイツを相棒として選んだ事に絶対に後悔しない  ……大体ここから出る方法はわかった。……あの額縁が怪しいな」
     そういった時、没が抱きしめていた額縁が光だした、琥珀は急いで走り出す。すると何もしてこなかった没が琥珀目掛けて攻撃してきた。琥珀は避けながらスピードをあげてあっという間に没の目の前までいくと、ナイフを額縁に振りかざした。
    「俺をここから出せ!」

     一方、サクリはもう一度本に攻撃をしようかと槍を持ち直した時、本が動き出した。だが、その様子がおかしい事に気づく。
    「なんだ?」
     サクリは警戒しつつ槍を構える、本はパラパラとページを捲る、すると本から手が出てきた。サクリはその手が琥珀の手だとすぐに分かり掴んで引っ張りあげた。
    「すまん、助かった」
    「世話のやけるやつだなお前は」
     そういってサクリは琥珀のマキナを投げた、それを受け取っていざ戦おうとした時、琥珀のマキナがとつぜん形を変えた。なんだと見ているとそれは──。
    「……おい、槍じゃねぇかそれ」
    「は、なんで……」
     それは槍に変化していた、丁度サクリが持っている槍の大きさそっくりだった。金色の刃には細かい装飾が入っている、重たいかと思ったが、重くなく手に馴染む。だが槍なんて使ったことがなく琥珀は困惑する。
    「おい、槍なんて使ったことない……」
    「刺せばいいんだよ、刺せば」
    「刺せばいいって……」
     琥珀はサクリの槍の使い方を思い出しつつ槍を構える。本はフラフラとしていたがこちらに向かって攻撃を繰り返す。それを薙ぎ払うようにしつつ走りだした琥珀にサクリは笑った。
    「本当に槍使うの初めてかよ、恐ろしいやつ」
     琥珀は本の前まで行くと槍で勢いよく突き刺した、先程と違い刺した感覚もある、そして本を突き破ったのを確認した。本は真ん中に大きな穴を空いたかと思うと散り散りにシュレッダーゴミになって風に舞っていく。琥珀は息を整えつつ深呼吸をする。
    「……はぁ」
    「お前、あの本の中でなにされたんだよ」
    「……」
     琥珀はあの本の中の出来事を話していいのか迷った、【お前はニジゲンを信じれるか】のメモの内容を思い出す。サクリをじっと見たあと、琥珀は口を開いた。
    「……簡単に言うならお前を信じれるかとか言われた」
    「俺を簡単に信じるなって忠告か  はっ、その通りだな。俺を簡単に信用するなってこった」
    「俺は信じてるからこうして出れたけどな」
    「……」
     恐らくあの本の脱出方法はツクリテの相棒とも呼べるニジゲンを信じることだろう。なら今まで捕まった人達は信じれなかったのだろうかとなんとも言えない気持ちになった。一方、琥珀がそう言ったからかサクリは呆れた顔をして琥珀の影の中に入っていく。
    「ほんと図太くて呆れるやつだ、お前」
    「呆れて結構。……ありがとな、あの時手を伸ばしてくれて」
    「……別に」
     そう言って琥珀の影の中に入っていったサクリをみて笑う琥珀。しゃがんで影に向かって話し出した。
    「……これからもよろしくな、相棒」
     返事は聞こえなかった。聞いてなくてもいいけど、と琥珀はそう思いながら立ち上がって歩き出した。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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