「あれ、アンタ……」
「……?」
道を歩いてた時、琥珀は偶然目があった誰かに声をかけられた。声をかけてきたのは自分より身長の高い学生服を来た相手。その相手にどこか見覚えがあった、どこだったか、と琥珀は少し目を伏せ思い出そうとする。相手は思い出そうとする琥珀に笑いつつ近づく。
「アンタ、巳神先生にお世話になってる人ですよね?」
「……あ、思い出した……」
琥珀は相手の言葉にすっ、と記憶が引き出されたように思い出した。巳神から薬を貰いに行く時、彼と同じような学生服を着た学生とすれ違う時があったのだ。その中に彼もいたような気がする。だから見たことがあったのか、と琥珀は納得した。
「見覚えのある赤目だと思って」
「……目?」
もしかして自分の事を目の色で認識してたのか、と少し変わっている相手に思わず怪訝な顔をする。それと同時に、何か相手に違和感を覚えた。この違和感の正体は一体何なのか、と思っていると相手はじっと目を合わせつつ人当たりの良い笑顔で話す。
「俺、灰純って言うんです。仲良く出来たら嬉しいなーって」
「仲良くって……。……灰野だ」
なんとなく、フルネームを言うのを躊躇ってしまい苗字しか紹介しなかった。何故だろう、相手は先程から普通に話してるように見えるはずなのに、どうもさっきから違和感が消えてくれない。
「すまない、このあと用事があるから……」
「あぁ、引き止めてすみません。それじゃ」
灰純はそう言うとそのまま踵を返して道を歩いて言った。琥珀はそれを見つつゆっくりと路地裏へこっそりと入ったその時、琥珀の影からサクリが出てきた。
「……おい、お前二人きりで会おうとかするなよ」
「知り合いだったのか?」
「ちょっとな、アイツ、人を目の色で認識してんだよ」
「……だからあの時。……それに、なんか違和感消えないんだよ。……あまり二人きりで会わないようにする」
「……それならいい」
サクリの表情が先程から優れないことに琥珀は心配してしまう、何かあったのだろうかと見ているとそのままサクリは影の中に消えていってしまった。
「……はぁ」
今日は近道を通っていこうかとおもっていたが、人通りの多い道を通って帰ろう、と思い路地裏から出てそのまま人の中に溶け込むように歩いた。