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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます

    夏の不思議な体験 夏のある日の夕方、近くの町で夏祭りがあるということで凪が上司である八重と、同じ八重の部下で自分にとっては同僚である羽紅を誘いやってきた。三人ともせっかくということで近くの店で浴衣をレンタルして祭り会場へと足を運ぶ、屋台の並ぶ道では同じく浴衣を着た人達がそれぞれ楽しんでいた。
    「屋台いっぱいあるなぁ〜」
    「人多いね」
    「たまにはいいかと思いますよ」
    浴衣にいつも被っているハットの形をした麦わら帽子を被る羽紅が八重と凪を見る。黒の浴衣にその帽子はとてもよく似合っていた、同じく藍色の浴衣を着ている八重、普段がスーツだからかとても新鮮に見えた。白地に柄の入った浴衣を着ていた凪はどこの屋台から行こうかと辺りを見回す、まずは雰囲気作りでお面でも買おうかとおもっていると、ふと、とある背中に目が入った。
    「……え……?」
    「ん? 凪くんどうしたの?」
    八重の問いかけに答える様子のない凪、凪の目線は真っ直ぐと、先程見かけた背中を見ていた。あの後ろ姿を見て凪の心臓がドクリ、と大きく脈打ったような気がした。そう、あの後ろ姿は──。
    「……! おい!」
    突然走り出した凪を捕まえようと羽紅が手を伸ばしたが間に合わず、そのまま凪は人混みの中に紛れて走って言ってしまう、その光景を羽紅と八重はお互いの顔を見合わせてしまう、どうみても様子がおかしかったのは明らかだったからだ。
    「……羽紅くんは先に追いかけて、入れ違いにならないように僕はここに居るから。もし何かあったら連絡して」
    「分かりました」
    そう言って羽紅は凪を追いかけるように人混みへと消えていく。八重は一人考えていた、あのどこかを見る凪の目は明らかにおかしかった。まるでありえないものを見たかのような、そんな目をしていた。
    「……」
    もしかしたら自分の考えている以上に危険な状態なのではないか、と八重は羽紅にスマホで連絡したあと人混みの中に入っていった。
    まって、待ってくれ。凪はそう心の中で叫びながら後ろ姿を追いかけていた。あの後ろ姿はどうみても、自分の目の前で死んでしまった先輩に酷く似ていて。ありえないはずなのに、ここにいるなんて、ありえないはずなに、体が勝手に動いていた。
    「あ、あれ……」
    先程まで目で追いかけられてたというのに、いつの間にか見失っていた。そして凪は周りを見る、どうやら神社の近くまで来てしまったようだ。
    けれど、その神社は社はボロボロであり、手を洗うための水場も水が枯れており、狛犬も原型をやっと留めていた。鳥居も禿げており中身がむき出しになっていた。
    「……こんな所に神社、あったんだな」
    凪は鳥居の中をくぐる、祭り会場のにぎわいとはうってかわって、シン、と静まり返った空間に取り残されたようだった。凪は少し疲れた様子で階段を座ろうとしたが、誰かいることに気がついた。
    自分より身長が低めの青年らしき人影、顔には狐のお面をつけていた。自分と同じように浴衣を着ていたその青年は凪に気づくとじっとこちらを見てきた、自分に危害を加える様子は今のところない。
    「……先客がいたんだな、少し休ませてくれよ」
    「……」
    青年は何も言わずただそこに立っていた、どうみても怪しいのだが、凪は気にせず階段に座る。慣れない下駄で走ったせいか足の指の間が擦れて少し血が出ていた。
    「あっちゃー……」
    「……」
    すると、青年はそっと手を伸ばすないなや、凪の足を優しく撫で始めた。真っ白なシミひとつない綺麗な肌が凪の足を撫でる。まるで大丈夫か、と言っているようだった。
    「なに? 心配してくれるわけ? ……ありがとな」
    そう言うと青年は凪の隣に座った。相変わらず一言も発しないが、不思議と相手の隣にいると落ち着く自分がいた。
    「……なぁ、お前の名前……、……! 危ない!」
    そう聞こうとしたとき、茂みが大きく揺れ、何かが飛び出たのに凪は気づき青年を庇うように押し倒す。その拍子に背中をそれに擦られたのか痛みが走った。
    「い、たっ……おい! 怪我はないか!」
    凪は背中をおさえつつ体を起き上がらせると青年に怪我がないか確認した、どうやら怪我がなくほっとしつつ後ろを見る。後ろには人ではない、形を保っていない──没がそこにいた。
    「こんな所に……! くそっ」
    凪は懐からボールペンを取り出す、ここに来る前に創務省で想像力を貰ってて助かった、と言わんばかりにペン先を出して刀に変えた。鞘から刀を抜き、立とうとすると背中に痛みがズキリ、と走る。
    「……っ」
    どうやら自分の思っていた以上に背中の傷は酷いらしい。だがここで自分が戦わないと誰が青年を守るというのか、青年が凪の浴衣の袖を掴む。まるで心配するかのように。それを見た凪は笑って安心させるように話す。
    「大丈夫だ、お前さんは心配すんなよ」
    青年の頭を撫でると凪は刀を構える。
    「……怪我した分、キッチリと返させてもらうからな!」
    凪は走って没に斬りかかる、没は凪の動きを見きったのか避けられてしまう。何度か攻撃すると当たってはいるのだが没が怯む様子はない。凪は思わず舌打ちをした、いつもと違う服装、浴衣と下駄に慣れていなかったのだ。背中の痛みでいつもの様に動けずにいた、凪は苛立ちを現すかのように没を睨みつける。
    「……ちょろちょろ動くんじゃねーよ!」
    凪はそのまま斬りかかったが、没の攻撃が丁度額に当たってしまう、額から血が流れ凪は思わず倒れ込む。しまったな、とすぐに立とうとしたが力が入らない。このままじゃ、と無理に立とうとした時、銃声が聞こえた。この銃声は聞き覚えがあった、すると凪の耳に声が聞こえた。
    「全く……何してるのですか貴方は」
    「……羽紅……?」
    そこには羽紅がやれやれ、といった様子で銃を握ってこちらに来た。そしてその後ろをすぐに八重が来て凪の体を起こす。
    「凪くん、大丈夫……じゃなさそうだね。背中からの出血が酷いな……」
    「でも血の量の割には傷は浅そうです」
    「……八重さん……」
    「凪くんは休んでなよ、羽紅くん。サポートよろしく」
    「任せてください」
    そう言うと八重は刀を握る、そういえば八重は刀を吊るしてたな、と凪は遠く考えた。ぼやけていく視界の中、誰かが凪のそばに来た。凪はすぐに青年が来たと気づき大丈夫か、と聞こうとしたが、青年はそっと凪の視界を何かで隠すと、そのまま凪の意識は飛んだ。
    凪は目を覚ました。そこは先程の神社ではなく、祭り会場の設営されたテントの中だった。傍に羽紅がおり、凪が起きた事に気づき声をかけた。
    「気分はどうです」
    「……没は」
    「討伐しましたよ、全く……突然走ったかと思うとなんですか。没を見たから追いかけたんですか」
    「……」
    違う、と言いたかったが声が出なかった。結局あの後ろ姿は見失ったままだったし、先輩が死んだ事は自分がよくわかっていた。自分の見間違いだったのだろう、と思いつつ、そういえば青年はどうしたのだろうかと思い聞いた。
    「なぁ、狐のお面被ったやついただろ? あいつに怪我なかったのかよ」
    「……? そんな人居ませんでしたけど……」
    「え?」
    凪は思わず起き上がってしまう、凪の様子に羽紅は珍しいな、と思いつつ話を続けた。
    「そもそも、駆けつけた時貴方一人しか……」
    「……は……?」
    羽紅が嘘をつくような相手ではないことは凪がよく知っていた。すると八重が二人の声に気づいたのかテントの中に入ってきた、八重は凪を見てあるものを差し出した。
    「凪くん、これ、見覚えない?」
    「……これ……」
    それは狐のお面だった、あの青年が付けていたものだと凪はすぐに分かる。でもなぜ八重が持っているのか凪はわからなかった、そんな様子に八重は話を続ける。
    「僕らが討伐終わったあと、凪くんが持ってたんだよ、そのお面」
    「そういえばそうでしたね、それ貴方のですか?」
    「……いや、これは……」
    「……それ、祭り会場じゃ売ってないんだよね。……しかもさ、凪くんの怪我、治ってたの。不思議だよね」
    「……」
    「もしかしたらそのお面の主、ニジゲンだった可能性も捨てきれませんけど……」
    羽紅の言葉に凪はお面を見る、あの青年がニジゲンにはどうしても見えなかったのだ。だったら、あの青年は一体何者なのだろうか、凪は色々ありすぎて頭を押えた。
    しばらくして、八重は凪に小声で聞いた。
    「ねぇ、誰を見つけて走ったの?」
    「……」
    「……まぁ、何となくわかるけど。……そのお面の主に感謝するんだよ」
    そう言った八重は狐のお面を見る、もしかしたらそのお面の主はこの世の人間でも、ニジゲンでもないかもしれない。もしかしたら、あいつが凪を守ろうとしたのかもしれない、そんな事を思った。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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