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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます

    三日月は静かに見下ろしていた  今日は朝から忙しく、創務省を出た時は夕日はもう落ちており、空が暗く夜になっていた。朝から忙しかった、と琥珀は少し息を吐いて外を歩く。琥珀と同じように仕事終わりの人達がせわしなく歩いたり、夜の街へ行くような人達ですれ違っていた。

     疲れからか、あまり人混みの多い所は歩きたくないと思った琥珀は少し考えてちょうど目に付いた大通りから外れた道へ足を運んだ。大通りとは違い、ほぼ人通りのない道。
     時間が時間なため、あまり悠長に歩かないようにしようと思いながら歩く。街灯の光が薄暗く道を照らす、明かりがあるだけましかと琥珀は歩いた。

     歩きながら空を見ると丁度三日月が空に見えていたが、雲が多いからか時々月が雲に隠れてしまう。だが、雲に薄く隠れた月も綺麗に見えて琥珀は少し微笑んだ。
     歩いていると公園らしき場所が見えたが、遊具はほぼ無いに等しかったが、少し疲れていた琥珀はベンチに座ろうと思いそのまま歩く。
     自動販売機もあり、丁度いいと思い飲み物を買おうとしたら、誰かいる事に気づいた。

     誰だろうかと見て琥珀は思わず固まった、その相手が女性だったからである。服装からしてニジゲンのような気がしたが、こんな人気のなさそうな公園にいるせいか、人離れしていた。
     琥珀の額にそっと冷や汗が流れ、飲み物を持つ手が思わず震えてしまう。

      その相手は琥珀に気づく、気づいて少し近づいたかと思えば、姿を変えた。近づいたから分かったことだが、何となく、サクリに似ているような気がしたのだ。
    「えっ……」
      相手は女性から男性になっていた、女性の姿でも琥珀よりやや大きい気がしたが、男性になった時ますます身長差が離れてしまった。琥珀の知り合いよりも高いのでは、と思えるほどに。そしてやはり、ニジゲンだと確信した。
    「失礼、こちらのほうがよろしいでしょうか」
    「え、あ……」
     もしかして自分が女性が苦手と分かってしまったのだろうか、初対面で気づかれるのはあまりなかった琥珀にとって思わず驚いて言葉が出なかった。琥珀は何か言わないと、と口を開く。

    「……初対面で気づいたのは貴方が初めて……だな。すまない、女性が昔から苦手で……これでも前よりか落ち着いてるんだが」
    「気にすることはない。立ち向かえない苦手なものもあるだろう、人なのだから」
    「……そうか」
     不思議な相手だ、と琥珀は相手を見る。やはりどこかサクリに似ているのだ。そんな中、相手が話し始める。

    「お前はツクリテだろう」
    「……そうだが……」
    「なら、お前の書いたものの話を聞かせてもらおう」
    「……それはいいが、あ……。少し待ってくれ」
     そう言って琥珀は自動販売機にお金を入れて飲み物を買う、何がいいのか分からなかったが、とりあえずお茶を買って相手に渡した。相手は琥珀が差し出してきたお茶を受け取る。

    「勝手に買ってすまない、何かの縁だ。飲めなかったら捨ててくれて構わないから」
      そう言って近くに置いてあったベンチに腰掛ける、相手は黙って琥珀を見ていた。
     琥珀は、少し考えて自分の代表作である【Frey】の話をし始めた。【Frey】の簡単なあらすじから、主人公フレイがのちの親友のリヒトと出会い、数々の国を旅する話をする。名も知らぬ相手に、楽しそうに話した。琥珀は笑って言葉を続ける。

    「……俺は、最近まで自分の作品のニジゲンに会えなかったんだ。それにずっと劣等感を感じていた、会えないのは自分が弱いからだろうかって。けど、この前やっと会えたんだ。今話した【Frey】の主人公に。……すごく嬉しかった、今は一緒に暮らしてるけど、今が一番幸せだ」

     今日初めて会った相手にここまで話すとは思わなかったが、琥珀は自分の創作の話をするうちに気持ちが溢れていた。そんな琥珀に相手は少し微笑んでいた。
    「そうか、お前の作品から生まれたニジゲンは幸せだろうな」
    「幸せ、そう思ってたら嬉しいが」
     フレイもリヒトも、そしてこの前うまれたばかりのディリーも、そう思っていたら嬉しいと琥珀は思った。
     ふと、相手はどうなのだろうかと思った。先程から思っていたが、サクリに似ているところもあり、もしかして関係者じゃないかと思っていたのだ。琥珀は相手に聞いた。

    「……貴方も幸せか?」
    「……それはあの人や光遼たちを見ればわかるだろう。早く帰るといい。夜は猫が徘徊している」
     そう言うと相手は立ち上がって琥珀の方を振り向かずに黙って歩いていった。琥珀が声をかけようとしたが、もう既に相手は夜の暗い空間に消えてしまっていた。
     光遼という名前にやはり同じ作品のニジゲンなのか、と琥珀は思った。だが名前を知らない。琥珀は消えていった空間をじっと見つめていた。

    「……」
     琥珀のように、自分の作品のニジゲンに出会えて幸せだと思う相手もいれば、そう思わない考えの人もいる。
     琥珀も認可になって長いが、そういう考えの人達を見たことがあった、琥珀からしたらその考えは分からなかった。琥珀にとって作品は、それほど思い入れのあるものだから。
    「……名前、聞きそびれたな」
     もしかしたらサクリか、光遼が知っているかもしれない。光遼に聞くのは琥珀にとっては難しいため、サクリに時間がある時に聞こうと思い、人気のない公園から出た。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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