震えた言葉 夜岸の紹介で無免連の枢と出会った。最初は何を話せばいいのか分からなかったが、とりあえず自分と夜岸と一緒に作ることになった漫画の話しを少しずつして、どのくらい日にちが経っただろうか。
灯都は、自分はお世辞にも打ち解けやすい分類には入らないのは知っていた。もしかしたら枢にも夜岸以外の人に言うような言動で言ってしまうかもしれない、と思っていた。現に何度か言ってしまったが。
それでもこうして自分らと話してくれる、それは灯都にとっては新鮮だった。何より、枢と楽しそうに話している夜岸を見てると、変に構えていた自分の態度はおかしかったかもしれない。
今日も枢と会って話していた、枢は既に自分は亡くなっていると最初会った頃に説明してくれた。最初聞いた時は驚いたが、自分らとなんら変わりないように見えた。死人なんて感じられなかった、少なくとも、灯都からしたら。体温だって、自分たちのように温かい、だから、灯都にとってはそんな目で見なかった。
「もし、夜岸と君と早く出会ってたら、親友になれたかもな」
枢がふと、そう言ってきた。灯都はそれを黙って聞く。親友、灯都はその単語にどこか擽ったく感じた、こんな自分と親友になれたかも、なんて言ってくれるのかと。
「……そんなの、今からでもなれるでしょ」
嬉しかった気持ちを悟られないように、灯都は相変わらずの態度で言ってしまう。なれたかも、じゃなくて、なればいいのだ。灯都の言葉に枢はふにゃり、と笑う。
「嬉しいこと言ってくれるなぁ」
そして、そのあとあんな言葉を言われるなど思わなかった。
「ところで、そんな希望を未来のない"おれ"に言って楽しいか?」
「……え……?」
灯都は思わず枢を見た。枢の表情を見て思わず背筋が凍った。目が笑ってなかったのだ、口元は笑ってるのに、目は笑っていなくて自分を見る。なにか言おうと口を開いたのに、言葉が出てこない。そんな灯都を横目に枢は話を続ける。
「さりげない希望って、人を苦しめたりするんだぜ?」
「……っ、そんなつもりは」
そんなつもりで言ったわけではない、本当に相手と親友になれたら、そんな淡い気持ちで言ったのだ。その淡い気持ちで言ったのが、間違いだったのだろうか。灯都は思わず、枢の腕を掴んだ。
「……お前が何言っても、俺はそう思うからな。……思うのは勝手だろ」
灯都は睨むようにして言うしかできなかった。灯都は気づかなかった、ぎゅ、と腕を掴む手が震えていることに。