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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    エガキナ
    自戒予告
    自戒予告のあとの話。よその子さんお借りしてます

    ##エガキナ
    ##自戒予告

    出した答え「お前、聞いてなかったのか? 猫柳、辞めるって」
     誰から聞いたのか、そんなことよりも、凪は頭をガツンと殴られたような衝撃が走った。自分の上司である八重が辞めると? 凪は体が勝手に動き、創務省内の廊下を走っていた。時刻はとうに定時を過ぎている、まだ施設内に八重がいるか分からなかった。
     あてもなく走っていると、見覚えのある背中が見えた。よかった、まだ帰ってなかった。凪はその相手───八重を引き止めた。

    「八重さん、辞めるって本当ですか」
     嘘だと言ってくれ、凪はそう思っていた。冗談だ、と笑って話してくれ。けれど、凪の耳に聞こえたどこから聞いたんだが、の八重の言葉に息が詰まる。本当に辞める気なのだ、と改めて実感した。
     なぜ、なんで。八重の様子がおかしかったのは『自戒予告』の時に何となく感じていた。けれど、あの時は自分に考えとく、って言ってくれたのだ。その時にはもう解決したものと思っていたというのに、そうでは無かった。
    「っ、なんで───」
    「ねぇ凪くん」
     凪が言いかけた言葉を遮るように、八重はこちらに振り向いて口を開く。感情の見えない表情、真っ黒な目が凪を見ていた。
    「……僕が『自戒予告』でボーッとしてたことあったでしょ。ニジゲンの攻撃すら避けきれなくて。……あの時、動揺してた。……自分の作ったモノ、ニジゲンを思い出して」
    「……」

     八重のニジゲン、凪はその話に聞き覚えがあった。八重の部下になってしばらくだった頃、八重にはニジゲンがいたと。けれど、そのニジゲンは没になってることを聞かされていた。
    「酷いよね、ずっと見ない振りをしていたくせに、こうなった時に思い出して。体が動かなくなって……君やリヒトくんを危険な目に合わせた」
    「八重さん、それはっ」
     凪が言おうとした言葉を八重はまた遮る。
    「そんな俺にここは向いていない。君みたいに守ると決めたこともなければ、そんな信念もない。今までは運が良かった、けれど、これが続けば君を傷つける。君だけじゃない、羽紅くんも」
    「……八重さん」
    (違う、八重さん、あんたに信念がないなんて、そんなはずはない)
    「……ね? なんにもないくせに自分勝手で、今ですら勝手に結論を出して勝手に辞めようとしてる」
    (違う)
    「だから、あの時『考えとく』って言ったけど」
    (違う、違う。俺の話を聞いて)
    「……でも、君はここに残るべきだ。僕なんかについてこないで……」
    (───違う!)
    「八重さん!」
    (勝手に話を進めるな!)
     凪が声を荒らげた様子を、立ち去ろうとしていた八重は凪の方へ顔を向けた。凪は胸をギュッと握る、自分の気持ちを、まだ何も話していない。

    「俺の言い分を聞かないで、勝手に話を進めるな! ……八重さん。……こんな、こんな俺を拾ってくれたの八重さんだけだったんだよ」
     凪は締め付けられそうな胸の痛みを感じながら、言葉を続ける。
    「……自分の大事なニジゲンが没になって、そのせいで先輩が死んじゃって、普通こんな不祥事起こした俺なんてクビになってもおかしくなかった。下手したら、ニジゲンを没にさせた、で逮捕されてたかも」
     そう、間接的に自分は人殺しをしたのだ。そんな創務職員、普通なら平然と仕事なんて出来やしない。免許を没収され、後ろ指をさされる。
     現に、凪が怪我から復帰して暫くは悪い噂がたえなかった。居心地が悪かった、苦しくて、苦しくて仕方なかった。それも自分の罪なのだろうと諦めもあった。
     けれど、そんな自分をちゃんと偏見なく見てくれた人もいた。その相手は、自分を救いとってくれた目の前にいる、八重だ。

    「……八重さんだけだったよ、俺をちゃんと見てくれたの。先輩みたいに……ちゃんと俺を可愛がってくれた、そして、俺の最初の味方になってくれた」
    「……」
     俯いていた凪は、顔を上げて笑って八重を見る。その顔は、優しい顔つきをしていた。
    「それに、俺も最初から信念を持ってたわけじゃないよ。少なくとも、俺に信念を教えてくれたのは他でもない八重さんだよ。そんな八重さんが信念がないなんて俺は思わない。……けれど、八重さんがそう思うのなら……それならば、俺と見つけましょうよ! 八重さんの信念!」
     そう、信念がないというのなら、見つければいい。自分が八重と出会って見つけれたように、今度は自分と一緒に探せばいい。そのためには、自分は八重の隣にいるしかない。

    「だから、八重さんが何度俺の事を突き放そうとしたり、何言われても、俺は八重さんについて行きます。……てかもう辞表出したし!」
     凪はにかっ、と笑ってピースをして八重にそう言った。どことなく顔は誇らしげだった。辞表を出したのは本当だ。そもそも、八重のいない創務省などいる理由がない。そして、凪のとんでもない発言に頭を抱えだした八重。
    「はぁ? 嘘……まじ?」
    「マジです!」
    「思い切り良すぎない?」
    「それが俺の長所ですから!」
    「判断早くない?」
    「それはお互い様!」
    「……」

     黙り込んでしまった八重を見て笑う凪。確かに無鉄砲だったかもしれない。けれど、ぐだぐだと迷ってる暇などなかったのだ。暫く黙った八重は、口を開く。
    「本当に諦めが悪いね。でも、本当にいいの? 今ならまだ取り消せれるかもよ」
     その言葉に凪はおかしくて笑ってしまう。取り消す気などさらさらない、凪は八重に近づいて、胸を掴んだ。
    「取り消しません。あいつみたいな盾はないけれど、八重さんと同じマキナで、八重さんの背中を守りたい」
     あいつ───炎珠羽紅の顔がよぎる。『自戒予告』で何をしたのかは知らないのだが、羽紅は今謹慎中で居なかった。羽紅のマキナは盾と銃、凪は羽紅のマキナの盾が羨ましかった。その盾が自分にもあったのなら、先輩を守れたのではと思うほどに。
     羨ましくて、嫉妬に似た感情も混じっていた。そのせいか、よく口喧嘩をしていたが、それ以上に、自分の背中を預けられる存在でもあった。

     けど、もう羨ましいなど思わない。盾が元からなくても、自分のやり方で八重の背中を守ればいい。
     凪の言葉は、八重からしたらとても眩しかった。そう思っていることを凪は知らない。しばらくの沈黙の後、聞こえてきた言葉は。
    「……まぁ、君が守ってくれるなら悪くないかな」
     その言葉に、凪は目を細めて笑った。そして、八重にあるお願いを言う。
    「ちょっと俺に付き合って欲しいんですけど」

     凪は八重を連れて、自分らがよく仕事をするオフィスへと来た。八重はなにかするのだろうか、と凪の様子を見る。凪は自分の席に座ると、引き出しから便箋と封筒を取り出して何か書き始めた。
    「凪くん?」
    「……あいつに手紙を書くんです、八重さん、言うつもりないんでしょ? 羽紅に。代わりに書いていいですか」
    「……あぁ、いいよ。待ってるね」
     そう言って八重は椅子に座って凪が書き終わるのを待つ。凪はさらさらとボールペンを滑らせるように文字を書いていく。ちなみに、凪の字は綺麗だ。

    『羽紅へ

     この手紙を読んでいるということは、俺と八重さんはもう創務を辞めてるのを知ってるだろうな。おそらく、色んな噂や推測がお前の耳にも入っているかもしれない。けど、お前ならそんなの跳ね除けるんだろうな。
     お前の事、最初はいけ好かないやつって思ってたし、今も思ってる。けど、俺の噂を知ってても、俺に対する態度は他の人と違っていたのは知っていた。お前も八重さんと同じで、ちゃんと俺の事を見てくれてた。
     俺にとっては、それが嬉しかった。本当に、うれしかった。口には出さなかったけど。お前が何かしらの事情があったのは何となくわかってたけど、その何かは知らない。けど、ちゃんと解決できたらいいな。
     お前にとって、俺は不甲斐ない同僚だったかもしれない。片目が見えない分、お前には迷惑をかけた。けど、俺の背中を預けられた相手が、お前でよかった。
     これから先、お前にとって俺らは敵として再会するかもしれない。それは仕方ない、けど、俺と八重さんはお前の味方でありたい。だから、もし、もし何かあったら、助けたい。離れていても、味方だから。
     だから、その時はちゃんと言え。一人で抱え込むなよ。
     体には気をつけて、無茶だけはするな。
     今まで、俺の背中を守ってくれて、そして、八重さんを支えてくれたこと、ありがとう。お前と組めて、俺は良かった。

                       凪より』

    「……そんな素直に書くなら言葉で言えばよかったのに」
    「……言葉じゃ素直になれないんですぅ」
     八重から茶化されて口を尖らせる凪。書いた便箋を丁寧に封筒にいれると、羽紅の机の引き出しの中にそっと入れた。
     もう、ここに思い残すことは無い。
    「……八重さん帰りましょ! これからのこと、話しなきゃでしょ」
    「……そうだね」
     そう言って、二人は後にした。廊下を歩きながら、凪はそっと後ろをむく。
    「……じゃあな」
     そう呟いて、また歩いた。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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