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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    3年前の、ある話

    エガキナ、よその子さんお借りしてます

    ##エガキナ
    ##認可信号組

    たった一つの後悔 少し冷え込みが身体を震わせる冬のある日、白い息を漏らしつつ、琥珀は没が出たというエリアへと走っていた。事前に来た情報では、危険度は三らしい。既に避難はすんでいるとのこと。そんな時、後ろから声をかけられた。
    「琥珀!」
     聞きなれた声が聞こえて、琥珀は後ろをむくと、そこには自分のたった一人の親友である江波戸 創がそこにいた。長い一番星のような眩しい金髪をひとつにまとめ、春の始まりを告げるような緑色の目が琥珀を見る。
     琥珀にとって創は大切な親友だ、同じ認可として、今もこうして一緒にいる。創───【つくる】という琥珀達のように創作をする人にピッタリな名前だ。創の後ろには、騎士風の格好した彼のニジゲンであるカインがいた。カインは琥珀のそばに行くとそっと手を重ねる。ニジゲンのいない琥珀に想像力を渡していた。
    「お前も行くんだろ? 俺も行くから」
     そう言って茶色い冬用のコートを靡かせながら笑う創。創がいるなら心強い、と琥珀は笑う。心のどこかで、すぐに討伐は終わるかもしれないと思っていた。創とカインは強い。そう簡単に思っていたからだろう、その考えが間違いだったと気づくのには、少し遅かった。

     現場に着くと思わず顔色を変える二人。目の前には所々地面の抉られた跡があり、しかも土埃のせいでよく見えない。情報通り、避難は終わっているみたいだが、没はどこだ、と二人が目を凝らしているとカインが何かを察したのか勢いよくレイピアを振るう。
    「カイン!?」
     創と琥珀は慌てて後ろに下がり、マキナである万年筆を手に取って想像力を使って剣とレイピアに変えた。恐らく先程のでカインは没の攻撃をエガキナで防いだのだろう。土埃が段々と消えていき、没の全体図が見えた。
     その没は女型だった。大きさは高身長の創よりゆうに大きく、約三メートルと言っても過言ではない。髪、といえる物はとても長く、まるで蛇のように蠢いていた。手は爪が鋭く尖っており、かすりさえもしたらタダではすまないのは見てわかっていた。目はギラギラと光り琥珀と創を睨んでいた。睨みながら、言葉に聞こえない、女性特有のような甲高い雄叫びをあげる。その睨みを見た時、雄叫びを聞いた時、琥珀は心臓がうるさくなるほどの鼓動が響き渡る。その目線が、嫌という程に、重なったのだ。

     ───自分を虐待していた、あの母親に。

     違う、違う。琥珀は自分を落ち着くように、そう頭で念じた。けれど、一度認識してしまった出来事をそう簡単に塗り替えてはくれない。なんで、どうして、ここで思い出してしまった?
     琥珀は身体中の体温が消える感覚に、手が震えてしまい剣を落としそうになった。慌てて握るが、手の震えは止まらない。そうしているうちに、呼吸がままらなくなっていき、思わず座り込んでしまう。座り込んだ時に思わず剣を落としてしまった。ヒュー、ヒュー、と上手く息が吸い込めない。苦しくて胸を抑えてしまう。怖い、怖くてたまらない。
    「……琥珀!?」
     琥珀の異変に気づいたのか、剣を落とす音に反応したのか、創が慌てて駆け寄った。琥珀の様子を見てすぐに気づいた、発作を起こしてるということに。没はそんな二人を狙うかのように攻撃を繰り返しているが、カインのエガキナで攻撃を吸収する。
     だが、いつまでもつか分からない。創は急いで琥珀をおぶって没の視線から隠れるように物陰に潜む。すぐして、カインも駆け寄った。カインも琥珀の普段と違う様子に驚いていた。
    「創! 琥珀はどうした……!?」
    「カインはエガキナで琥珀の発作を抑えて! 琥珀、大丈夫か! 薬は? 持ってるか!?」
    「っ……げほっ! ぁ……!」
    「琥珀、少し痛むぞ」

     カインはそう言うと、そっと琥珀の胸あたりを手で撫でると、おもむろにレイピアで刺した。カインのエガキナである【慈悲のレイピア】は、怪我した所に刺すと治るのだ。だが、重症には効かない。発作が効くのか創とカインは不安だったが、少し落ち着いてるように見える琥珀を見て少し胸を撫で下ろす。
     創は琥珀のポケットから薬を見つけた、急いで封をきり、琥珀に飲ませる。すぐに口の中で溶けるタイプからか、カインのエガキナのおかげか、飲んで少しして幾分か呼吸が整う。
    「……ご、めん……」
    「別にいい。……けど」
     創はそっと顔を出して覗く、没は二人を探しているのか、闇雲に周りを抉るように攻撃する。創は迷っていた、幸運にもカインが琥珀のマキナを拾ってくれていたおかげで琥珀も一応戦える。
     けれど、どう見ても今の琥珀が戦うのは無理だ。琥珀を庇いながら自分が戦うか、それか、一旦逃げるか。応援は来ると聞いていた、その相手がベテランだったら、その人と戦えばいい。けれど、いつになったら応援が来る? 創はレイピアを握る。いざとなったら、自分が囮になって琥珀を逃がすしか……そう考えた時だった。

    「おい! 創!」
     声が聞こえて思わず後ろをむく、そこには高校からの付き合いである御手洗 鈴鹿だった。鈴鹿は座り込んでいる琥珀をみて駆け寄る。
    「琥珀!? 怪我したのか!?」
    「違う、発作起こして……」
     創はそう言って口元に手を置く。鈴鹿は免許をとって三年目だ。三年目なら、やっと没討伐に慣れた頃だ。鈴鹿と一緒に討伐をするか、と考えたのだが、それが最善なのか分からなかった。決し鈴鹿を信頼していない訳では無い、けれど、討伐出来るのかが分からなかった。
     創は、今から言う言葉を鈴鹿に言うのか迷った。迷ったのだが、もう、決めるしかなかった。鈴鹿からしたら酷な事を創から頼まれるのだから。創は鈴鹿の肩に手を置いて、話す。

    「鈴鹿、琥珀を連れて逃げろ」

     一瞬だけ、周りが静かになったような感覚がした。創がそう思ったということは、琥珀も、鈴鹿も、カインも思ったのだろう。鈴鹿の表情がみるみると変わる。
    「馬鹿か!? 何言ったか分かってるのか!?」
    「分かってる!」
     創の声に思わず黙った鈴鹿。創は鈴鹿を安心させるように笑って、答える。
    「……琥珀は大事な親友なんだ。没より親友を優先させるようなツクリテだけど……頼む。お前にしか頼めない。大丈夫! 俺はすぐに戻る。……約束するから」
    「……っ。……わかった」
    「……ありがとう、鈴鹿」
     お前と知り合えてて良かった、と創は思いながら琥珀をちらりと見る。琥珀は創の腕を掴んでいた。その手が、未だに震えていた。
    「だめ、だ! お前一人にできない……! 俺も戦うから……!」
    「……鈴鹿、早くここから逃げて」
    「創!」
    「琥珀、大丈夫だから……。……約束、守れよ」
    「大丈夫だって! 俺、守るタイプだから」
    「鈴鹿! 離せ! 創……!」

     鈴鹿は黙って琥珀をおぶって立ち去る。琥珀はずっと創の名前を呼んでいた、泣いているところを見てしまい心が痛む。けど、この選択肢は間違ってないはず、と創はそう思いたかった。琥珀の声が遠くなる、そしてずっと黙っていたカインは口を開く。
    「……良かったのか、お前はそれで」
    「……いいよ。お前も逃げて欲しかったけど……」
    「……俺は創のニジゲンだ」
    「そっか」
     カインの顔を見て笑う。そして、目付きをすぐに変えた。少し考えて冬用のコートを脱ぐ、この戦いには重たくて動きにくいだろう。脱いだら寒かったが、動けばどうにでもなる。他にも応援はくるはず、あの二人が逃げれる時間を稼げれば合格点だ、けれど、それだけじゃダメだろう。
    「さぁカイン、討伐するぞ」
    「……あぁ」

    「降ろせ! 鈴鹿! 降ろせ!」
     一方、琥珀は泣きながらそう鈴鹿に言っていた。創の背中が段々と遠くなる。力を込めて抜け出そうにも、叶わない。一人にしたくない、大事な親友をあんな戦場に。まだ発作が完全に落ち着いていないからか、咳き込んでしまった。
     琥珀の気持ちは痛いほど鈴鹿に分かった、本当なら鈴鹿も一緒に戦いたかっただろう。創も迷ったはずだ、迷って、鈴鹿に託したのだろう。降ろして、降ろして、と繰り返し言う琥珀。
    「琥珀、大丈夫だから! あいつなら、大丈夫だから……」
    「……───」
    「琥珀……?」
     琥珀が何か言ったのを聞き取れず、鈴鹿は聞き返してしまう。いつの間にか暴れておらず、泣いている声が聞こえた。消えるような声、その言葉を聞いた時、鈴鹿は一瞬だけ呼吸を止めた。

    「……見殺しにさせないで、お願い……お願いだから……」

     琥珀のその言葉が、鈴海の耳にずっと残った。

     琥珀を病院に連れていったあとの記憶はほぼない。聞いた話では、没は討伐された。けれど、創とニジゲンのカインの消息が不明、と鈴鹿は聞いた。琥珀の方はすぐに退院できるとの事、鈴鹿が琥珀と再会できたのは、丁度退院できた頃だった。琥珀の格好を見て、鈴鹿は言葉を詰まらせる。
     創の着ていた茶色い冬用のコートに、シャツにベスト、黒いズボンに革靴。創の格好とよく似ていたからだ。違うところと言えば、赤い石が入ったループタイをしている所だろう。創は首元には何もつけていなかった。そして、もう一つ違うとしたら、コートを羽織ってると頃だろうか。創はちゃんと袖に通していたから。
    「琥珀……その格好……」
    「鈴鹿……あの時はごめん。ありがとうな。……似合うかな」
    「……まぁ、着こなせるようになったらいいさ」
    「……そうだな、けど、このコート……俺には重い」
     そう呟いた後、琥珀は鈴鹿に創務のある人に修行を付けてもらうことを話した。鈴鹿は黙って琥珀の言葉を聞く、琥珀は見上げるように鈴鹿の顔を見る。
    「……もう弱い自分は嫌なんだ、必ず強くなって……創を見つける。……絶対に」
     その目つきに、迷いがなかった。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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