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    ちょこ

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    エガキナ

    過去話
    よその子さんお借りしてます

    ##エガキナ
    #認可信号組
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    受け入れてくれた相手 体育の授業が終わる、次は昼休みのため急いで着替えなくてもいい。琥珀は先に創に戻って欲しい、と伝えてから保健室へと行く。決して怪我をしたわけではない、左腕に巻いてあった包帯が解けそうになっていたからだ。
     普段はシャツの上で隠れたり、アームカバーで隠していたりしているが、琥珀の左腕はいつも包帯を巻いていた。保健室に入ると丁度先生がおり、事情を話す。先生はこれから用事があるらしく、了承したあと出ていってしまう。いくら先生でも、見られたくない。

     琥珀は椅子に座り、そっとアームカバーを外す。案の定、解けかけていた。包帯を丁寧に解くと、痛々しい傷跡が露になる。火傷らしい跡、切り傷、傷口自体は塞がっているが、触ると少しでこぼことする。それを黙ってみる。
     この傷は決して自分でつけた訳では無い。自分の母親からだった。小さい頃から虐待まがいなことをされていた、実は琥珀は元々左利きだった。今は右も使うため、ある意味両利きと言っても過言ではない。理由は知らなかったが、琥珀が左手で何か物をつかもうとするのを気に入らず、こうしてよく左腕を痛めつけられていた。だからだ、必死に右手でものを掴む練習などしたため、普段は右手で使っている。
     左腕以外にも暴力を振るわれていたが、幸運なことに綺麗に治っている。左腕だけ、こうだ。この事を知っているのは、父親と、自分の親友である創だけだ。創にバレた時はどうしよう、と泣きそうになったが、創はこの腕の傷跡を受け入れてくれた。むしろ泣いてもいい、と言ってくれた。
     その言葉に、どこか救われた。痛いって泣いていいんだ、ってその時はみっともなく泣いた気がする。
     早く巻かないと心配するかもな、なんて思っていると扉の開く音がした。

    「琥珀ー、お前の着替え持ってきたけど……なんか怪我でも……した、か……」
    「あ……」
     扉の開けた人物は、鈴鹿だった。鈴海はこの腕の傷を知らない。鈴鹿の目線の先は嫌という程わかる、腕の傷を見ている。琥珀は思わずばっ、と隠した。
     どうしよう、見られた。琥珀は頭の中が真っ白になった。鈴鹿とはこの学校に進学した時に同じクラスで出会って、そこそこと付き合いが長い。けれど、長いからと言って、受け入れてくれるかは分からない。誰が見ても、いい気分がするものでは無いのは嫌でもわかる、むしろ気持ち悪いぐらいだ。
     鈴鹿が黙ってそばに来るのが分かる、勝手に泣きそうになって思わず目をつぶった。すると、鈴鹿はスマートフォンを取り出してなにやらサイトを開いている。琥珀が目を開き、怪訝な顔をして見ていると鈴鹿は笑って画面を見せた。

    「今貼るファンデーションってのがあるんだぜ」
    「……ファンデーション……?」
     どうやら何かの通販サイトらしい。見てみると、薄いシートみたいなのを、腕や顔に貼っている女性の写真が映っていおり、謳い文句に傷跡や痣を隠したい貴方に、と書かれていた。
    「……引かないのか」
     琥珀はチラリ、と自分の腕を見る。一番自分の中で醜くて、汚い。誰にも見られたくないものだ。けれど、引かない反応は創と同じだ、なんて思った。その琥珀の一言に鈴鹿は言葉を続ける。
    「……大丈夫。どんなことあっても俺は今の琥珀しか知らないし、その傷だって、お前が馬鹿やってできたもんじゃないだろ」
    「……うん」
     うん、としか言えなかった。喋ろうとしたら涙が溢れてきたのだ。引かれなかった事に安心したのか、少しでも包帯以外で隠せれるものを、と検索で探してくれた鈴鹿の優しさに触れたのか、もしかしたら両方かもしれない。どちらにせよ、嬉しかった。
    「ほらあんま擦ると目赤くなるから、てか創が心配する」
    「……ありがとう」
     あぁ、自分はほんと人に恵まれている。と心から思った。
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