一筋の光 鈴鹿さん、僕、鈴鹿さんと初めて出会った時、鈴鹿さんのこと怖い人だって思ったんです。僕から見たら、琥珀さんより背が高くて、僕を見る目がどこか怖い……そんな風に思ってしまったんです。これは僕が怖がりなせいだったから、そう思っていたんでしょうね。あの時泣いてしまったこと、本当にごめんなさい。
琥珀さんだけじゃなくて、鈴鹿さんを困らせてしまって、目つきが悪いからかな、って聞こえた小さい声に、僕は誤解をしてたんだって気づいたんです。
謝りたくて、でも勇気が出なくてずっと物陰から見ていたこと、鈴鹿さんは知ってたんですよね。琥珀さんから『鈴鹿は優しくて、ちゃんと人を見る。自分の意思があって、尊敬する。だから、リヒトにもわかって欲しいかな』って言われたことがあるんです。ずっと見ていて分かってたんです、鈴鹿さんは真っ直ぐな人なんだなって。
真っ直ぐで、まるでフレイみたい、って思ったんです。この人も、フレイや琥珀さんみたいに意思があって、眩しい人なんだって。鈴鹿さんが作品を描いている時、勇気をだしてしどろもどろになりながらも、謝った時、頭を優しく撫でて、いいよって言ってくれた時、心が安心したんです。
その時、丁度描いていた絵に、とても惹かれたんです。それは綺麗な向日葵の絵だったから。鮮やかな黄色い花弁の向日葵が、青空に向かって綺麗に咲いていたから。これが鈴鹿さんの作品なんだ、って思ったんです。今思えば、あの絵は琥珀さんをイメージして描いてたんですね。創さんから聞いてしまいました、ごめんなさい。
ずっと、その絵が忘れられなくて。僕も描いてみたい、って気持ちが芽生えてきたんです。でも、絵なんて描いたことなくて、鈴鹿さんに教えて欲しいって言うのも迷いました。でも、僕も描いてみたかったんです。鈴鹿さんが琥珀さんを見て向日葵の絵を描いたように、僕も何かを見て、感じて、描いてみたかったんです。
鈴鹿さんから教えて貰って、僕は青空を描きました。僕にとって、大切な風景。その絵を見せに行った時に、鈴鹿さんから組まないかと言われた時はビックリしました。ビックリして、本当に僕でいいのか、言葉に詰まって、考えもぐちゃぐちゃになって……。
けど、僕は決めたんです。絶対に鈴鹿さんを守りたいって。でも、僕はまた弱虫になって泣いてしまうかもしれない。守るって言ったのに、足を止めてしまうかもしれない。
……え、僕が前を向いて進むまで花でも数える……? ふふっ、ならその花を沢山集めて、花束にしたいです。その花束は鈴鹿さんにプレゼントしますね。貴方に持って欲しいなって。
……今度は星を数えるんですか? 星を数えて、太陽を見つける? そして、その先の道を見る……。……すごく心強いです。まるで、フレイと旅してるみたい。僕の足跡が残るのなら、鈴鹿さんの足跡も残りますね。
あぁ、太陽の光の先へ、歩みましょうね。今の僕は小さな光です。小さくて、弱くて、淡い光かもしれない。けど、鈴鹿さんが、貴方が隣にいてくれるのなら、僕はもう弱い光じゃないんだ、って思えるかもしれなくて。
だから、僕は。
「貴方にとって、一筋の光になります」