■ アニアク竜隼がチェンゲ組に合流したらどうなるか(オマケ新馬)その①「エンペラー」はそもそもが何重かの意味で激ヤバ存在だと私は解釈してるので、とりあえず「こいつらはまっとうです」と漫画サーガ版の文脈に戻すための前提。
会った瞬間殺し合いになりかねない新馬除いて状況説明、顔合わせと同居交渉まで。
【独自設定多すぎるので各キャラと世界大体こんな感じ一覧】
アニアク竜隼→基本筋漫画版。アニアクは年代がわやになっててわからないので74年始まりを一致させて解釈。
隼人の年齢は號35才前後、アニアク50前半くらい。(アニアクが西暦2010年代くらいの出来事)
竜馬と隼人は外見年齢としては40半ば(漫画版年齢)くらいでそこまで違いがない。(隼人が髪の毛白くなっただけで老けなさすぎ解釈)
通常落ち着いてるし頭もよく身体能力も高い(竜馬と隼人は大雪山に数ヵ月一人で山籠りしてピンピンしてる武蔵より身体能力も知力もテスト結果が高かったろう描写がある)しメンタルも超タフい。派生は色々あっても最強の座は漫画と東映で二強だとこれを書いた人間は信じて疑ってない。
シビアだし厳しいし怒らせると一番怖い。折れない理性の権化。
「愛するものがいる限りそのためにだけでも戦い続け」た人たち(特に竜馬)。
ゲッター線には特に竜馬は好き勝手記憶使われたので大分怒ってる。力があるからって好き勝手やって良いって話じゃねえだろ馬鹿野郎。
核の魂に生体エネルギーで肉付けしてる存在。自我と意志が外見とかにも反映される。そもそもあまり肉体の意味がない。ご都合主義やりたい放題。
竜馬はゲッター線に食われた状態から隼人の認識で個を分離して保持してる形なので隼人がいないと竜馬が存在できない。
という大義名分を手に入れ、長年会えなかった反動とかもあって竜馬のセコム化が幾分強くなってもいる。
厳密には既に死んでいる(輪廻直前に拓馬たちどうなるか待ちしてる状態)存在なので、命のやり取りをするには自分達の存在はアンフェアだと思っているし、基本戦闘に出るのは相手もチート的な場合に限られる。
本人の意思と隼人の認識で必要に応じて武蔵とか弁慶とかも出れたりするけどゲッターロボ乗るよって時くらいにしか明確な実体化は難しい。
チェンゲ竜隼(エンペラー仮)→唯一まともっぽそうなエンペラー組。よくわからん。漫画とチェンゲの間くらいの感覚。
他、弁慶とか敷島博士がいたりする。
まっとうな存在にしたかったので「5000光年の虎」と「デモンベイン旧神エンド」足して、インベーダーとの色々があった後に宇宙からの侵略者、宇宙全体の支配者へ抵抗しつつ、他種族との共存を計りながら外宇宙へ向かってる設定。「今川監督設定でのチェンゲ」の先みたいな。
虐げられたものたち(人類とは異なる知的生命体含む)を保護しつつの大所帯。
物理肉体は持っている、が、ヒト種の枠からは外れてしまっている(具体的に言うとインベーダー共生状態╱なんやかんやの後にゴウを通じて人類と共存可能なインベーダーとが和解した感じ)。
存在としては「虎」とか旧神九郎ちゃんとアル辺りのイメージ。
戦闘においての旗振り役は竜馬だけど、実統治機構は種族代表での協議制度になってたりしてその辺の調整とかの難しいことは大体隼人がやってる。
チェンゲ竜隼(本編)→魔獣戦線風味が強く、特に隼人に東映も混じってる。
竜馬は「隼人に裏切られた!?」と思って狼狽えるだけ可愛いげがある。上記の二人より落ち着きがなく荒っぽいところがあるし、一足飛びで告白通り越した激重感情の叫びに至った慎一さんの血が濃いので不器用感も強い。裏切られたとかそんなんあったっけレベルで気にしてないので隼人が時折後ろめたさみたいなもの見せるとイライラする。
隼人も東映のナイーブさとかが割りとあるので可愛いげがある方。仲直りしたとはいえ自責の念があったり。色々強かっただけで真面目で責任感強くて繊細でナイーブな割りと常人。
弁慶は基本東映版。一番一般人に近い枠。保護者感すらある。他の竜馬と隼人がナチュラルにいちゃつくのには大体慣れてる。理解できないが受容はしているし特になんか言うことでもない。いつものこと。俺の前でいちゃつくのだけ勘弁しろ。
純人類肉体持ったまま来てるので色々物理的な都合が存在する。
新ゲ竜馬→作品自体がアンチゲッターロボ(石川ゲッターと手天童子の反転構成「理性の無いケダモノは運命に抗えない」「理性╱愛の存在しない滅びる世界」)で、石川作品文脈だと「悪」の示唆が多々あった、放置すると間違いなくエンペラー(絶対悪)に一直線して取り返しがつかなくなる大問題児。端的に言って鬼(子朗や竜馬の反転存在)。
他人のことをまるで考えられない、誰も愛せないから誰にも愛されないメンタル幼児。自己中。粗暴で学もないチンピラ。自分が悪いと思ってないいじめっ子。「男らしい」を男尊女卑と暴力賛美で解釈して、支配構造でしか対人関係を理解できないとかそういうタイプ(なので親分子分とかに疑問を持たない)。
この中で唯一理性がほぼ無いし、「流竜馬の核」すら所持していない。新弁慶どころか新隼人のことすらどうとも思ってない。他の竜馬と隼人は正直理解できなくて気持ち悪いと思ってるし、同じ顔の自分がホモ(侮蔑してる╱真の愛を知らない)であることに嫌悪感すらある。セッを性欲処理とマウント取る行為くらいにしか考えてないし、「女」は見下す。
漫画版の竜馬と隼人には絶対に会わせたらいけない(間違いなく偽者判断して本気で殺そうとする)レベル。
絶対悪回避したかったら最終的に「原典武蔵(後から理性を獲得する)文脈を得てもらわないと困る」存在。(本編中で得ていたらあんな終わりになって無い)
本家本元の漫画サーガ版はアークを通らずゲッペラーにならない未来を進んでるし、竜馬と隼人は既に転生して「戦国忍法秘録」の五右衛門と半蔵になってるのと、東映とネオゲ世界はゲッター線が意思を持ってないのでここには繋がらない。
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カシャカシャとフィルムが切り替わるように数多の時空間に飛ばされては戦い続けるうちに、彼らはとある宇宙の果てに辿り着いていた。
ふっと唐突に現れた床を踏みしめる感触にまた竜馬の仕業だろうかと隼人は周囲を見渡した。
髪の毛が揺らされる気配もない無風の室内らしい空間。暗闇だったのは一瞬で、音も立てず連鎖するように視界の端まで点灯していく照明に目を細める。
目的の人物はすぐ傍にいた。が、ひどく真剣な表情で戦場の真っ只中のような緊張感すら滲ませている。そのせいか服装も気の許している時の作業用ツナギではなく、くたびれたコートに戦闘服だった。ここは彼の意思で作り出した場所では無いらしい。
どこかの艦内――クジラの内部か、そうでなければ早乙女研究所のドッグを思い出させるような金属の床と広い空間だった。
明るさに慣れた目で周囲を伺えば、格納庫には真ゲッターロボのゲットマシン三機が見え、さしもの隼人も目を見開く。よくよく見れば細部が違うようにも思える。だが、しかし。
「……ここは、どこだ」
「俺にもわからん。なんか来るぜ」
コツコツと、中にはガンガンと音を立てるような靴音が複数響き、近づいてくる。その人影たちの、その相貌を確認して二人はますます警戒心を強めた。
二人から離れて三人ずつ、よくよく見知った顔がそこに並び、その一人が歩みでて口を開いた。
「ようこそ、エンペラー艦へ」
最も新しく、最も古きに近い俺
その声を聞きながら竜馬が隼人を庇うように一歩前に出る。苦々しげに、いっそ掴みかかりそうな怒気を滲ませながら。
そうして向かい合う二人の顔は似ている、どころではなかった。
分厚い背中越し、向こう側で相対する竜馬の方が幾分若く出会った頃の面影を残しているが、雰囲気や細部、服装は違いながらも『同じ顔』だった。その後ろにはやはり隼人や弁慶と同じ顔がある。
竜馬から「ゲッター線が道具として使い捨てる武蔵の姿の人造人間」という話は聞いていても、このような状況は自分達に変装した恐竜帝国の兵士とモニター越しに対峙した時ほどにしかなかった隼人は流石に多少なりの動揺を隠せなかった。
「……エンペラー……」
薄い唇が半ば無意識にその名前を呟く。
ではここは、今自分達がいるのは、『あの』ゲッターエンペラーの中なのか。
生命を道具として使い捨て、他者を蹂躙し、宇宙のすべて食いつくし、唯一の存在となる『進化の果て』を目指す、あの。
「……お前らも『支配者』なんかになりてえのか」
俺はそんなもんごめんだ。
鋭い眼光で睨み付け、落ち着いた声ながらきっぱりと言い切る竜馬の姿に隼人は気を取り直した。
自分の前に出された腕にそっと触れながら並び、大丈夫だと声にしないまでも伝える。脇に吊り下げたガバメントの弾数とナイフの重さを確かめ、彼らが敵意ある存在だった場合のことも考えながら並ぶ顔をもう一度見渡し口を開いた。
「まあ、同感ではあるな。
選民思想の皇帝達相手に長年抵抗してきた結果が、自分達が皇帝になり全て潰して支配すればいいなどと短絡的かつダブルスタンダードな結論を出されたようでどうにも座り心地は良くない」
感情を抑え、冷静に聞こえるよう意識して発声する。慣れた行動を取れば動揺も収まりやすい。
そうして様子を見れば、今度は逆に向こうがざわついていた。
「露骨に警戒されたぞ、馬鹿」
「……最初に言わなきゃ良かった……」
「まあ、わからんではないよな」
呆れた様子でため息をついている白衣の『隼人』、最初の威厳はなんだったのかと聞きたくなるように困って頭をかいているらしいコートの『竜馬』、腕を組んで頷く『弁慶』。
「あー、俺たちはそうじゃなかったからそんなもんか程度だったけどよ」
「インベーダーもその傾向はあったぞ、自分達こそが選ばれた存在などと嘯いて」
「言われてみりゃあそうだな」
何故か一人だけ年齢が違うらしい『竜馬』、顔に傷のある『隼人』、自分が知るよりも随分落ち着いた雰囲気を持つ『弁慶』。
……彼らは一人だけ若い竜馬を除き、自分が號に会った頃の年齢に近く隼人には思えた。
何故この二人の竜馬は赤いマフラーをしているのか、とも疑問が浮かんだが、何を尋ねれば良いのか考える間に隣から剣呑な声が上がった。
「大体同じような雁首揃えて気持ち悪ぃんだよ、てめえら全員俺らの上っ面だけのクローンだかコピーだかじゃねえ保証が何処にある」
もしお前らがそうなら俺にゃ好都合だ。いい加減あいつらのやり口には頭来てたんだ、全員ぶっ潰して清々してやる。
そんな怒りの言葉と共にギュッと傍らから床を踏みしめる音が聞こえた。じわじわと怒りを募らせていたらしい竜馬が本気になりかけている。
一度本気で怒らせると容赦がないのが昔から『流竜馬』という男の常である。記憶や姿を勝手に使われ、それを止める術もなくやり場もなく沸々と溜め込んだ怒りであろう。
流石になにもわからない今ここで盛大に血を見るのはこちらにも得策ではないように感じ、隼人がその肩に手を置くのとほぼ同時に気が抜けるような大声が飛んできた。
「待った待った!」
「……一番怒らせたら怖い血筋だったな」
慌てて焦るような声は演技などには聞こえない。その横で白衣の隼人が呆れたようにため息ついて小さく首を振っていた。「素直に謝れ」などと二、三言、小さくやり取りした後、こちらに向き直った最初に口を開いた竜馬が勢いよく頭を下げた。
「すまん、こっちの考えが足りなかった!」
「ある程度の情報は有していたのにこちらが浅慮だった、申し訳ない。信じてもらえないかもしれないが俺たちはクローンなどではないし、そちらへの害意もない」とその隣の隼人も礼儀正しく、その後ろで弁慶も申し訳なさそうな苦笑いでペコリと頭を下げる。
「上っ面だけの中身違うもんに騙られるのがすげぇ腹立つのはわかる。俺もインベーダーとか叩き潰してやりたかったぜ」
「お前はそうだろうよ……」
様子を見ていたような他の三人のうち、一番若い竜馬が腕組みをして深く頷いていた。彼らにも『騙る存在』に思うところはあるのかと隼人は観察する。インベーダー、というのがそれに当たるのか。敵であったのか。
先ほどその肩に触れた竜馬は毒気を抜かれたようなひどく怪訝な顔をしていた。
「カッコつけて後先考えずに行動するからこうなるんだ、反省しろ」
「……こんなに厳しいなんて思って――」
「言い訳か」
「ぐっ」
頭を下げたままの二人からそんな声が聞こえてきて、その頭頂部を視界に竜馬と隼人はちらと目を合わせた。
「竜馬」
「なんだ、隼人」
「……どうも様子がおかしい。最初に話を聞いた方がいいだろう」
「……お前もそう言うなら仕方ねえな」
竜馬はやり場のなかった怒りを一旦無理矢理にでも納めてくれるらしい。「お前らももういいぜ、一旦話聞くからよ」と頭をあげろと促す様子に隼人はそっと息をつき、先ほどから見ていての疑問を口にした。
「ゲッター線の奴隷たるクローンなどにしては妙に統一性……画一性でもいいが、それが無い。合理性にも欠ける。支配者を気取りたいにしては権威欲が薄い。
そもそもそっちの若い竜馬が口にしていたインベーダーとはなんだ。話しぶりからは敵のようだが俺たちの世界には存在しない。ゲーム程度しか思い当たらない」
そう淡々と話せば、対峙する面々は困ったようにそれぞれが顔を見合わせた。
「やっぱ歴史から違うよなぁ……」
「最初から説明するべきだろう」
少々の相談の後、どうするか決まったらしい。どの『隼人』の声かはわからないが「ブリッジで話そう、ついてきてもらえないか」と声がかかり、二人は彼らの後ろを追うことにした。
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呼び寄せられた二人が通された場所――同じ顔の彼らがブリッジと呼んだ場所は半面ほどが半球状の透明なドームに覆われて、外の風景を視界一杯に見せていた。
足を踏み入れた途端、視界の向こうに広がる果てもない宇宙。
――「いつか、三人で」そう思いながら、生きては叶えられなかった場所。その事に隼人は心が乱れるような感覚を覚えた。
そして、(言葉を信用するなら)この戦艦を取り囲むような無数の「ゲッター艦隊」。
目を見開いての驚愕の後、そっと眉を潜めた竜馬に隼人は目配せした。
操船には一体何人が必要なのかと思うほどにこのブリッジは大きいが、そこを行き来する人々の数は極端に少ない。見覚えがある人影も見知らぬ人影も混じる中、ちらと敷島博士らしい姿を認めて今度は違う意味で竜馬がなにか言いたそうな顔をした。あの爺さん、ここでもよろしくやってるんだろうさ、と根拠もなく隼人はそう思う。おそらく、それは隣にいる竜馬も同じであろう。
広いブリッジの一角に設置されたリビングセットのソファに腰かければ、どことなく、早乙女家にあったような雰囲気が残ると彼は感じた。
この人物たちにも自分達と似たような望郷があるのかもしれない。
腰を落ち着けるなり、白衣の『隼人』が口を開いた。
「まず、これは謝罪をしたいのだがこちらはそちらが今どのような存在であるかにはある程度の理解がある。そして、今この艦内では内包するゲッター線をある程度抑制、制御する状態にある。そちらの能力は制限がかかっているようなものだ」
「今のこちらの竜馬はゲッター線の塊と言っても良いような存在だからな……メルトダウンなり暴走なりを引き起こされても困るだろう、理解しよう」
「え、俺大丈夫なんか……まあ隼人がいるなら大丈夫か」
不安そうな様子も一瞬で竜馬が気を取り直す。
そして、向こうの『竜馬』による「平行世界……ええと、パラレルワールドってわかるか?」から始まる説明を彼らは聞いた。
――西暦にして1970年代、時期は多少前後しても早乙女博士によりゲッター線が発見されることは全ての世界で共通している様子だった。話に出てくる人物の名前と人物像も理解の範疇内でほぼ一致している。(早乙女博士の様子には真ゲッターロボの事件を思いだし、なんとも言えない気分になったことは隼人が見る限りこちらの竜馬も同じ様子であった)
しかし『彼ら』の世界と『こちら』の世界には大きな差異が存在した。
『月世界戦争』『インベーダー』
そもそもこちらには存在しなかったことがあちらでは起き、歴史が大きく異なっていることを様々な映像や静止画も交えて彼らは説明された。
あちらの『竜馬』もこちらほどではないが横文字と説明が得意とは言えないらしい。途中で説明に詰まった時や、もっとわかりやすい言い方があるときには主に白衣の『隼人』が助け船を出していた。
長い話の途中では、傷のある隼人がそっとマグカップをローテーブルに差し出した。若い竜馬たちと連れだって話に加わる人間の分を用意してきたらしい。
他のものが口に運ぶのを確認して、二人もそれを手にすればどこか懐かしい珈琲の香りがした。
「『俺たち』とそっちの『若いの』は、また別の世界になる」
「若……『俺ら』はまあ不可抗力で此方に来たっていうかよ」
「こっちはインベーダーの後にも色々あって、宇宙支配を目論む輩への抵抗を重ねながら、点在する知的生命体の各所と同盟組んだり反抗組織と合併したりしながらの先って言えばわかりやすいか?」
「色々、の中には我々が物理的な肉体ではあるがヒト種の枠からは逸脱してしまったことも含まれるが。
ああ、それと、こちらで所持する最大武力がゲッターであったために、量産化に踏み切るしかなかった。外の艦隊の多くがゲッターであるのはそのせいだ」
――あの中には強大な力に蹂躙された人々も多い。最初の住居、拠点として提供しているに近い。別技術を持つ民も多いが、移住先を見つけたり、自分達で作り上げる間はといった感じだな。
そう言って白衣の『隼人』がテーブル越しに板を手渡してきた。触ればタッチパネルと同じ要領で操作できる機器であるらしい。
「すでに歴史となってしまっている情報量だからこちらに別途で用意した。タブレットはそちらの時間軸にもあるだろうが使い方はわかるか?」
こちらでも機器の名称は同じか、と思いつつ隼人は頷いた。傍らの竜馬は微妙そうな顔をしていたが情報としてはあっても生きている間には触らなかった機器だ。あとで教えてやる必要もあるかもしれない。
「どうして古今東西宇宙の果てまで力があればなにやっても良いだろみたいな輩ってのは存在するんだかよ、まったく」
これで一区切りと、コーヒーを飲みつつ向こうの『竜馬』がぼやく。
「結局、どのような形であれ、生命というものはさして変わらないということかもしれんな」
白衣の『隼人』の言葉に、本質を知る彼らは無言で頷いた。それはそうだ。結局全ての生命は同じところから生まれ、帰るものだというシステムがこの世界でも共通であるならば。
「駆け足だが説明としては以上としたいが、なにか質問はないだろうか」
今までの様子を見る限り、こちらの『隼人』達も仕切り役やサポート役には慣れているのだろう。そう尋ねられたことで、少しばかり険しい表情をした竜馬が口を開いた。
「なぜ、俺たちを補足できた。呼び寄せたのはお前たちだろう」
その問いには向こうの『竜馬』が答えた。
「まあ気になるよな。ええと、ゲッター線の解析である程度予想はついてたんだが『若いのたち』が迷い込んできた事で、平行世界の存在とそこにさ迷うかもしれない『違う世界の俺たち』が実在すると証明された。じゃあ、狭間の空間さ迷ってる『他の俺たち』にも協力を願えねえか、と。正直こっちはいつもカッツカツでよ」
「自分達のデータを解析することで、ゲッター線を通し『俺たち』の並行存在ならある程度の捜索と追跡が可能になった。ゲッター線は感情――意思に反応、作用される特性を持つからそれを利用して、こちらへの動線を開き、招きよせた」
「多分だけど、あんたもあんた自身の意思の力である程度色々『干渉できる』んだろ? それの応用と思ってくれりゃ良い。俺らにゃ到底軽々しく扱えねえ力だが、そういうものとして付き合い探してる最中だな。だから呼び寄せるにしてもこの中で一番広くてなんかあっても被害が少ないだろう格納庫を選んだ」
白衣の『隼人』と交互にされる説明は、理解できなくはない。しかし、現在提示された情報は全て裏付けを取る手段さえ自分達は持たない。一度二人だけで相談する必要があるだろうと隼人は頭の片隅においた。彼らがゲッター線をある程度解析する技術力を持っていること等も一緒に。
「……お前らも俺らに似た存在か?」
「いや、流石にあんたたちみたいなゲッター線の塊みたいな状態じゃねえ。人類の枠からははみ出しちまったが」
そこまで聞くと竜馬はふむ、と軽く眉を寄せたまま腕組みした。
表面上落ち着いて見えるが、恐らく今のこいつの頭の中は情報過多を通り越し、色々わからないから取り合えず全部置いておいてこいつらが信用できるかだけ見極めようくらいに思っているに違いない。
そう思いつつ、隼人は気になっていたことを聞くことにした。
「エンペラー、という名前は」
「……言い出したのは敷島博士じゃなかったか?」
「俺は難色は示したんだ……」
思い出すように『竜馬』が腕組みして首を捻る。白衣の『隼人』はばつが悪そうな雰囲気で目をそらした。
「俺たちが合流したときにはその名前だったから俺らは由来なんぞ知らねえぜ」
「そういえば隼人、微妙な顔してたっけな、お前」
「そりゃあ……」
それまで様子を見ながら時折口を挟んでいた一番若い『竜馬』や『弁慶』も首を傾げ、傷のある『隼人』は目をそらした。
ああ、これは、もしかして、本当に、『隼人たち』以外はそこまで考えが及ばなかったのかもしれない。
『彼ら』が自分達に似た存在だというなら理解できなくはない、が。
「……今ここは日本という国の概念も曖昧になってはいるようだが、日本でエンペラーと言ったら実在するからな」
「「……」」
考え込むような沈黙と暫しの絶句の後、『竜馬』がソファから勢いよく立ち上がった。
「――おい、敷島のジジイ!!」
てめえなんて名前つけてたんだよ!?
ずかずかと歩き去りながら、敷島博士を探し叫ぶ声が遠ざかっていく。
「……気付いていなかったのか」
「横文字は苦手なんだ、あいつは……やっぱ名付けの時に止めてやりゃよかったか……」
「なんかよくわかんねえけど強そうで通しただろ、あいつ。俺のことだからそんな気がするぜ」
これは改めてこの母艦の名前の選定をした方が良さそうだ、などと会話する彼らに「少し自分達二人だけで話をしたい」と隼人は断りをいれ、竜馬とその場を離れた。
ブリッジを出た廊下は大きさ、広さは違えどやはりどことなく早乙女研究所に似ているように隼人は感じた。壁にもたれ掛かり、同じようにして並んだ竜馬に声を掛ける。
「……どうだ、リョウ」
「あいつらが言ってた力の制限は本当みたいだ。逆に言えばこの中のゲッター線の状態なら俺も遡って確認できる」
で、気付いたんだけどよ、このエンペラー(仮)、多分俺らが見た奴より小せえ。
そんな竜馬の言葉を聞きながら隼人は手元のタブレット内部の情報をざっと確認した。この母艦のスペックや内部施設の使い方などの説明も見つかった。先程の話が本当なら難民めいたものたちへ渡すマニュアルもあるのだろう。宇宙全土に渡る統一言語があるのかはわからないが、思い返せばアンドロメダをはじめとするもの達の言葉もなぜか双方理解できていたはずだ。
人種などにあわせた自動翻訳でも宇宙規模の技術にはあるのだろうか、などと考えを巡らせつつ、そこに記載されているエンペラー艦の大きさを確かめれば、確かに自分達が見たものとは明らかに大きさが違う。
竜馬に見せれば、おそらくこの記載は正確だろう、とも返ってきた。
「……ふむ」
「ゲッター線が一方的に食い荒らしてるって訳でもなさそうだったぜ。使っちゃいるけど他の技術やエネルギーも混じってる感じがしたな」
……そもそもこっちのゲッター線が俺らの世界のゲッター線と感触違うんだよな……この辺はもう少し調べないとはっきり言えねえけど……。
ゲッター線そのものに近い位置にある竜馬ならではの感覚を述べながら訝しそうに顎に手をあてる。
同じゲッター線でも「分派」もしくは「並行存在」が「無い」という確証は存在しない。
ややこしいにも程がある、と隼人は自然皺が寄る眉間を一度押さえた。
「だから、まあ、あいつらの言うことに嘘は無さそうではある、んだけどよ」
そう言って、竜馬は再び腕組みした。
+++++
ブリッジに戻ると首根っこを捕まれて捕獲されたのだろう敷島博士が主に『竜馬』から問い詰められていた。
近寄った二人の姿を認めると「あとで会議だぜ、ジジイ」と釘をさして向き直る。
全員揃ったのを確認し、竜馬と隼人は一度顔を見合わせ、竜馬の方から口火を切った。
「……理屈はわかった」
「そちらの主張は概ね理解した」
お、と明るい顔をする彼らに向かい、二人はそのまま言葉を続けた。
「けどやっぱり気味悪ぃ」
「それは否定しない」
「っつー訳で」
くるりと踵を返し、その場を後にしようとする二人に再び慌てた声がかかった。
「いやいや待て待て待ってくれさっさと行こうとすんなよ!」
「せめて理由くらい教えてくれ」と言う『竜馬』から少々離れて『若い竜馬』を中心にした三人がボソボソと話す声が隼人の耳に届いた。
「……もう少し二人だけで過ごしたいとか」
「新婚旅行かよ」
「お前ならありうるんじゃ」
「ねえよ!」
傷のある隼人が顎に手をあて、ぽつりと呟いた言葉にひどい誤解をされても困ると隼人は竜馬と共に向き直った。一瞬、竜馬が微妙な雰囲気を出していたのは置いて。
「確かに、今の俺たちは半ば無作為に時空を漂流しているに近い。お前たちが常に切迫した状態で戦っているだろうことも理解する。しかし、そこに協力すること事態は吝かではないにしろ、毎日同じ顔を見て『個』の認識が薄れるのは私としても好ましくは無い」
「今の俺はその辺隼人にかかってるところがあるから死活問題だぜ」
「……こいつの平坦な物言いはひどく似合わなかったからもう聞きたくはないな。
それに、違う時空に深く干渉することの是非もある」
「そもそも、俺らはきちんと言や『もう死んでる』のにこの世界の普通の命かかってる戦いに出るのはズルくねえかとか」
先程の短い相談で出た疑問や懸念の幾つかをあげれば「……考えてんなぁ……」と『若い竜馬』が漏らすのが耳に入った。
「急に大きな申し出をしているのもこちらだ、無理強いをしたいわけでもない。しかし現状での疑問や懸念は解消できるかもしれないし、こちらの今後のためにも聞かせてはもらえないだろうか」
そんな白衣の『隼人』の声に竜馬に目配せすれば、ぐっと言葉に詰まったような顔を見せていた。相変わらず感情を隠すのが下手だと隼人は思う。
こちらの意思を無視するように高圧的に、もしくは「結局は同じ存在なのだからわかるに違いない」などと甘い考えでいるならば自分も竜馬も一蹴しただろうが。
「……では、改めて『交渉』させてもらおうか」
「個」とはそれぞれが違う存在であることを理解し、それを尊重しようという意思があるなら、ひとまずは信用に値するだろう。
ならば、互いに同等の存在として、互いの主張に納得できる妥協点を探すことは悪くない。
そうして彼らはもう一度、今度は説明ではなく交渉のためにテーブルについた。