蝶の華の「ーープロデューサーちゃん?」
仕事の説明をする声が途切れたプロデューサーに華村翔真が呼びかけると、彼ははっとなって「すみません」と頭を下げる。
「珍しいじゃないの。どうしたの?」
「いえーーその、」
恥ずかしげに伏せられた目が翔真に向けられる。瞳は顔ではなくその脇、頬に添えた手へと向けられていた。
「お話しされている間の手が、綺麗だと思って見ていました……」
「――」
「すみません……話を戻しますね」
慌てたように資料を繰り、プロデューサーは話の続きに戻る。
仕事の打ち合わせをする間、華村翔真の五指はひらりと揺れては彼の頬に添えられる。翔真にとってはただの癖だとしても、優美そのものの動きはプロデューサーの目を奪うには充分だった。
「当面のスケジュールは分かったわ。忙しいことは良いことじゃないか」
微笑みは花の綻びを思わせる。きめの細かい膚には彼の長年の努力が滲み、この美しさは315プロを見渡しても彼にしかないものだ。
「でも、お肌のケアをする時間は確保できるようにして頂戴な」
「もちろんオフの時間も確保します」
大きくうなずけば翔真の金髪も柔らかくうねり、事務所の窓から差し込む陽を浴びて麗しい。
微笑む姿に見惚れる気持ちを抱きながら、眩しい思いでプロデューサーは翔真と打ち合わせを続けるのだった。