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    periofeel

    ペリコ

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    periofeel

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    三日月が自分の事を嫌っていると思っている一振目の山姥切国広となぜか一振り目と仲良くなれないので二振り目のまんばくんを日々孫可愛がりしている三日月宗近と二振り目ことひろくんの日常の話。
    既刊の「あしたなんていらない」の前日譚です。

    #みかんば
    mandarinPlant
    #月夜の金木犀

    ひろくんの日常俺は山姥切国広。この本丸では二振り目にあたる為、皆からはひろくんと呼ばれている

    「ひろくんや、奥の席が空いているところがあるぞ」

    この穏やかに話しかけてくるのは、三日月宗近。
    そう、天下五剣の中でもっとも美しいといわれるあの刀だ
    なぜこの名刀中の名刀が俺なんかの世話を焼いてくるのかと言えば、鍛刀直後に勘違いで忘れられていたのを三日月に発見されたことから始まる
    見た目から想像しにくいがこの三日月は大体のことをそつなくこなせ、特が付くまでの間面倒を見てもらっていたのだ
    三日月は美しいだけでなく何でもできるものかと思っていたが、個体差というものがあるらしく、他の本丸の三日月はまた違うようだ
    今では世話されるという事も減ったが、今日のように世間話をしたまま食堂に一緒に来ることも少なくない

    席に座り、食べ始めてしばらくすると食堂の入り口に見覚えのある顔を見つける
    というか同じ顔だ
    この本丸の初期刀である山姥切国広、俺は一振り目と呼んでいる
    長机を挟んで斜め向かいに一振り目と山伏の兄弟が腰を下ろした
    とたんに三日月が静かになる
    箸を止めずに隣を見れば、食べる合間にちらりと一振り目が食べる様子を見ているようだ
    自分も同じように一振り目の食べる姿を眺める

    山伏の兄弟より食べている
    しかも忙しなくしている訳でもないのに早い
    気持ちのよい食べっぷりだと思う
    これも個体差というものがあるのか自分はそこまで食べられなかった
    顕現した初日に一振り目基準の量を用意してもらったが半分もいかないうちに食べられなくなり、一振り目に手伝ってもらった
    ひろも特が付いたら食べられるようになるかもしれないと言われたが多分特が付こうが上限いっぱいになろうが難しいと思った
    話は逸れたがとにかくじっと見たくなるのも頷ける
    三日月もあまりたくさん食べてるのは見たことがないからな

    こちらが先に食べ始めたのにもかかわらず気が付けばあっという間に追い付かれていた
    これは負けられないと残りの大学芋に手を伸ばした矢先に三日月がこそこそと話しかけてくる

    「…この大学芋、ひろくんにやろう」
    「はぁ?俺は自分のぶんで十分だ」

    そもそも、食べきれるように調整してよそっているのだからこれ以上食べられないことくらい分かっている筈だ
    訝しげに断ると

    「ならばもっとたくさん食べれる者にやるといい」

    そう言って芋の入った小鉢を押し付けてきた
    誰かにやれと言われても、昼食時もすぎてちょうど人もまばらになってきたところだ
    よし、食で困ったときは一振り目のところへ行くに限る
    量の調整や苦手な物の克服の仕方その他諸々、伊達に本丸初めの刀をやっている訳ではない
    それに一振り目は甘い物も好きだったはず

    箸を置き、小鉢を片手に一振り目の机へと足を向かわせる

    「一振り目、よかったら大学芋を食べないか」
    「どうした、食べ切れなかったか?」

    なるべくまんべんなく食べられるように米の量を調整するんだぞ、と言われたので訂正する

    「これは俺のじゃない」
    「? では誰のものだ?」

    その問いに二振り目の山姥切国広はふっと笑って答えた

    「あんたが食べている姿が好きなやつから、だ」

    なんかこのやり取りに既視感があると思ったが、この間洗濯物を畳みながら堀川の兄弟と見てたドラマだ
    そう “あちらのお客様からです” 的なあれだ
    ぽかんとしてた一振り目が笑った

    「ふ、なんだそれ」

    思わず、と言った笑いを漏らしながらすいっとこちらに手を差し出してきた

    「食べるのは好きだからな。…ありがたく頂くぞ」

    小鉢を受けとる姿を側で見守っていた山伏の兄弟がうむ、と頷く

    「食べられるということは良いことだ。特に兄弟は健啖家である。見ていて清々しいほどだ!」
    「…俺もあんたのたくさん食べる姿は好きだ」
    「僕も美味しそうに食べてくれるのは作りがいがあるね!」

    ところで足りてる?おかわりいるかい?と自然に入ってきた燭台切で一気に賑やかになった事で慌てたように一振り目の山姥切国広が布で顔を覆う

    「飯時にあまり騒ぐもんじゃない………三日月が迷惑そうに見ている…」

    ぎゅっと布を掴んで縮こまる姿に、燭台切がそうだったね、少し静かに話そうかと声のトーンを落とした

    「ごめんね、楽しそうだったからつい。あ、でもおかわりの話は本当だよ。遠征の子たちの分余計作っちゃってて」

    いつもおかわりと言ったら白米のことだ。常備菜や漬物、ご飯のお供などで食べるのが常なのでおかずや小鉢はあまり余らない
    珍しいことなのだろう、一振り目の山姥切国広は目を輝かせ食べると答えた

    「本当?じゃあ持ってくるね。ついでにご飯のおかわりもよそってくるよ。一膳でいいかな」
    「あ、まってくれ」
    「ああ、どんぶりで持ってきたほうがいい?」
    「いや、大学芋のことなんだが……」

    不思議そうに小首をかしげる燭台切にぽそぽそと何かを伝えているようだが声が小さくて聞き取れなかった
    とりあえず一振り目の食事はまだ続くようだし邪魔するのは良くないだろうと思い自分の席へと戻れば、三日月の箸がまったく進んでないことに気が付く

    「三日月、集中できないくらいうるさくしていたか?」
    「いや、そう言う訳ではない……」

    席に着いて大学芋に手を伸ばせば三日月もまた手をつけ始めた
    斜め向かいでは燭台切からどんぶりご飯を受け取り、相変わらずおいしそうにもぐもぐと頬張る一振り目が居る
    いつもよりいきいきとと食べる姿を眺めていると三日月の側に燭台切がそっと近寄ってきた
    そしてコトリと大学芋の入った小鉢を机に置いた
    不思議そうに見上げる三日月に実に楽しそうに燭台切が話し出す

    「ふふ、なんかね、三日月さんのことをよく見てる子から渡してくれって」

    甘いもの、好きなんだね。気が付かなかったと困ったように微笑む燭台切に三日月が少し恥ずかしそうに笑った

    「きっと今日も誰かにあげたようだから、まだ残ってるなら…だって」

    話を聞きながら机の小鉢を手に取る三日月に二振り目の山姥切国広が声をかける

    「大丈夫か三日月、入りそうか?」
    「うん?……ああ、これくらいなら食べられるだろう。それにしても…誰かに言った覚えはなかったが……なんだかくすぐったいなぁ」

    そのまま箸で一つ摘まみ口に入れれば、香ばしい芋に甘い蜜がよく絡んでちょうど良い甘さが口に広がる
    綻ぶように笑みをこぼす三日月はほのぼのとしていいなぁと思いながら眺めていたひろくんだったがごつんと硬いもの同士がぶつかる音に思わず視線が向く
    音の発生源は斜め向かいに座る一振り目だった

    (…なぜ机に突っ伏して震えているのだろう?)

    山伏の兄弟が豪快に笑いながら『それも修行である!』と言っているから何か新しいとれーにんぐなのかもしれない

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    Replies from the creator

    periofeel

    MAIKING※刀剣破壊描写があります
    友人が木製模造刀の三日月と鶴丸を折ったことから供養的に書いた話の一つ

    -------

    主の身代わりとして遡行軍に拐われてしまった三日月と鶴丸。主が政府に掛け合ったものの要求に応えることは出来ないと言われてそれから数日後に本丸に差出人不明の荷物が届き、嫌な胸騒ぎと共に開けてみると無惨な姿の鶴丸と三日月が………
    ※刀剣破壊表現あります主はそこから寝込んで床に伏してしまい、折られた鶴丸は伊達の刀たちが引き取り三日月は三条に引き取られた。

    「鶴さんは………暗くて、狭いところに入ると前の主のことを考えてしまうって言ってたから、どこか明るくてにぎやかなところにいさせてあげたいな…」と伊達の刀により本丸の中に分からないようにひっそりと

    「三日月………あなたはいつも本丸の事ばかり気にかけて、ちっともゆっくり出来なかったでしょう……せめてよく眺めていた桜の木のそばに………」って庭の端にある大きな桜の木の下に
    それぞれ安置されたり埋められたりした

    誰もが悲しみ本丸中の火が消えたようなその夜、皆寝静まったころに桜の木の下に山姥切国広が立っていた
    新しく掘り起こされたような土跡を見つけるとそのまま無心で掘り始めた
    1107

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