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    kitanomado

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    kitanomado

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    さとみくんのバイト先の高校生となりたさんのお誕生日

    好きな人はどんな人?バイトのお許しが出た代わりに親から出された条件は二つ。
    「今の成績を落とさない」「学業優先にすること」
    そんなのとりあえず返事するに決まってるでしょ。もちろん努力はちゃんとするつもりだけど。でないとバイト続けられなくなっちゃうし、成績だってこれ以上落ちたらさすがにやばい。
    バイト先はマックのカウンターとか薬局のレジとか、何個か候補はあったけど時給とか学校帰りに寄れるのとかを考えて、駅前のサイゼリヤにした。それにまかないでドリア食べられるの結構良くない?
    とりあえず、バイト代は自分のスマホ代と、あとはいちご侍のために貯めなきゃいけない。推しにはお金がかかる。載ってる雑誌も買いたいし、ライブあったら行きたいし。そしたらグッズ全部欲しいもんね。

    応募の電話は緊張したけど、とりあえず履歴書持って来てくださいって言われて、コンビニで買ってきた。書くのに2枚くらい失敗しちゃったけど、履歴書は店長さんに「字が綺麗だねえ!」って褒められて、あとはあっさり採用された。シフトは平日の部活のない日の夕方17時から22時までと、土日の昼で入れる時はって感じにしてもらった。
    支給された制服着たら本当にバイトするんだって気持ちになった。まぁ似合ってるかどうかはこの際置いといて。
    バイトは始めてみたら、鉄板重た!とか親指軽率に火傷したとか、みんな呼び出しチャイム鳴らしすぎとかドリンクバーのグラス補充常にしまくりとか。あと時々友達が店に来たり、ちょっと変わったお客さんに当たったり、まあ色々あるけど今のところはちゃんと続いてる。成績は上がりも下がりもせずにキープ中。

    バイトを始めて三ヶ月ちょっと過ぎた四月の日曜日。
    休憩室でスマホを開いた瞬間、思わず声が出てしまった。
    「うわ、ツアー決まった…!!」
    会員アプリの通知には「全国ツアー決定!」の文字。すぐにツイッターを開くと皆の悲鳴がタイムラインを流れていく。うわー楽しみ。マジでちゃんと稼がないと。その前にチケット取れるかなぁ。インスタを開くとメンバーのストーリーも更新されてた。みんなかわいい。
    「みんなスマホよく見てるよね」
    「あ、お疲れさまです。みんな?」
    休憩室に漫画雑誌とペットボトルを持った森田さんが入ってきた。独り言聞かれなくて良かったーって思ったけど、森田さんも常に独り言多い人だから、まあ聞かれても大丈夫だったかも。
    「岡くんもいつもスマホ見てるからさぁ」
    森田さんはそう言いながら、向かいの椅子に腰掛けた。
    「え、岡さんそうなんですか?」
    森田さんは雑誌を捲りながらペットボトルのお茶を一口飲んだ。
    「岡くんいつもすごいライン気にしてるからさー。前に一回「彼女?」って聞いたら「親戚のおじさんです」て言ってたけど。親戚のおじさんとラインするって相当仲良いよね」
    「確かにそうですね」
    「うち、親ですらたまにしかしないよ〜。…はっ?!待て待てこんな展開ありかよ〜!先週からこんなの予想出来ないって……」
    森田さんは更に「信じらんねぇ……」とかぶつぶつ言いながら、片手でスマホをいじってる。たぶんあれはツイッターで呟いてるな。
    岡さんとはシフトが被った時にたまーに休憩室で会うけど、言われてみれば確かにいつもスマホ見てたかも。あれも親戚のおじさんとラインしてたのかな。自分もいつもそうだから全然意識してなかったけど、スマホ見るの癖になっちゃってるからな。親にもよく怒られるし。

    岡さんは大学二年生で、基本夜勤シフトに入ってる人。シフトの入れ替わりの時に引き継ぎでちょっと話したり、バックヤードで顔合わせたりとかしてる。
    去年、進学と同時に関西から上京してきたらしい。
    眼鏡かけてて頭よさそうな人だなっていう印象通り、最初の頃に時々仕事教えてもらったけど教え方が上手で、わかりやすい。あと淡々としてるけどぼそっと面白いこと言うし、ツッコミが鋭い(特に森田さんに対して)
    岡さん出身が大阪っていってたし、親戚のおじさん甥っ子が心配なのかな。どんな人なんだろう。岡さんみたいな人かな。なんか学校の先生とかそんなイメージ。きっと岡さんみたいに真面目そうな人なんだろうな。
    ていうか岡さん彼女とかいるのかな。ライン、彼女ともしてたんじゃないのかな。森田さん知ってるのかな。もしいなかったらワンチャン、どうかな。年下は無理って言われちゃうかなー。
    「あ、やば。休憩終わる」
    勝手な妄想を色々膨らませながらフロアに戻った。



    「えー岡さんて 法科専攻なんですか。すごいですね」
    「そんなすごないよ」
    日曜日。昼のシフトで岡さんと久しぶりに一緒になった。
    ランチのピークを過ぎたあたり。ちょっと余裕が出来て呼び出しチャイムもならなくなった頃。話す余裕ができたからチャンスとばかりに話しかけちゃった。
    大学どこかって聞いてなかったけど、あそこの法科とかめちゃくちゃ頭いいじゃん。それで夜勤バイトしてるとか尊敬でしかない。
    「いや、すごいですよ。いいなぁ頭いいの」
    「なにそれ」
    そう言って岡さんは笑った。あ、笑顔可愛い。
    「あの、岡さんお願いがあるんですけど…」
    「え?なに?」
    「今度時間ある時でいいんで、もしよかったら勉強教えてくれませんか?英語と地理がほんとだめで」
    「お願いします!」と胸の前で手を合わせると「大げさやなあ」て笑ってくれた。あーほんと可愛い。岡さんは「僕で教えられるんならええよ」って言ってくれた。ラッキー!
    今度の連休中の祝日、お互い昼シフトに入っていたからその終わりに教えてもらうことにした。「その日は18時半までなら空いてるけど、そんでもええ?」って。全然いいです。充分すぎます。岡さんに一時間以上勉強教えてもらえるなんて嬉しすぎる。あんまり嬉し過ぎてバイト終わりテンション高めに家に帰ったら、弟に「きも」て言われたけど。



    連休中の祝日は、家族連れとかカップルとか、あと高校生らしき集団とか。とにかくお客さんが多くてあちこちのテーブルから呼び出しチャイムが鳴りまくり。めちゃくちゃ忙しかった。
    17時に交代のシフトの人に代わる頃にはすっかりへろへろになりながら、着替えて休憩室に入っていった。先に休憩室にいた岡さんが「お疲れさま」って声をかけてくれる。
    「お疲れさまです。今日やばかったですね〜。GWやばすぎません?」
    「ほんまな。連休の昼あんななんやな。久しぶりに味わったわ」
    休憩室の椅子に腰掛けちょっと休憩してから「ほな始めよか」って最初は英語から始めることにした。取り出した英語の教科書を見て「うわ、高校の教科書懐かし」て岡さんが呟いた。

    「やっぱり岡さんて教え方上手いですよね」
    「そうかな。普通やと思うけど」
    「そうですよ。家庭教師とか向いてそう。あとー、なんか生徒会長とかやってたイメージあります」
    「そんなんしたことないわ」
    岡さんはそう言って「ふ」と笑った。岡さん笑うとほんと可愛い。いや、笑わなくても岡さん結構イケメン。眼鏡しててそんなに目立たないけど、目も大きいし。あと色白いし、細くてスタイルもいい。なんか服なんでも似合いそう。
    「でも部長とか、学級委員とかーそういうのやってたんじゃないですか」
    「ないない。中学の時に合唱部の部長やったことあるけど、そんくらいしかないわ」
    そこまで話すと机に置いてあった岡さんのスマホが振動した。岡さんは画面をちらと見る。そのしぐさに森田さんの言葉を思い出してつい笑ってしまった。
    「え?なに?」
    「あ、すみません。前に森田さんから岡さんよくスマホ見てるって聞いたの思い出して」
    「ああ…、あかんな。癖になってしもうてて」
    「親戚のおじさんとラインしてるって聞きました。仲良いんですね」
    「……よう連絡くんねん」
    「なんのお仕事されてる方なんですか?」
    「んー、ブラック企業務め」
    「え、マジですか」
    「ほんま。あ、そこ綴り間違うてる」
    「あ、」
    そこから教えてもらいながら、お互いの家族のこととか、地元のこと、あと岡さんの大学のことも色々話せた。あー楽しい!
    この流れなら聞ける。一番聞きたかったこと。なるべく軽い感じで口に出した。
    「岡さんてー彼女とかいるんですか?」
    「付き合うてる人はおるよ」
    すんなり、あっさり。
    そう答えるのを聞いて、そりゃいるよなぁとちょっとがっかりした気持ちと、岡さんが付き合ってるのどんな人かっていう好奇心。さらに突っ込んで聞くのは今しかない。
    「大学の人ですか?」
    「ううん。地元の人」
    「じゃあ高校の時?」
    「中学ん時やな」
    「へー幼馴染ですか」
    「いや、幼馴染みちゃうねんけど知り合いみたいなもん。全然、年上やし」
    意外。年上か〜。やばいもっと興味湧いてきた。こういう時じゃないと聞けないしもっと聞きたい。もっと突っ込んでいいかな。
    「何きっかけで付き合ったんですか」
    「ナンパされた。カラオケ行こ!て」
    「えー!岡さんそれついてっちゃったんですか?中学生で?」
    「ついてったな。今考えると何でついてったんやろって思うけど、あの時は普通に車乗ってカラオケ行ったわ」
    ついてっちゃうんだ。え?しかも岡さん中学生で相手が車ってことは結構年上じゃない?それで初対面の車に乗っちゃうの結構ヤバくない?相手めちゃくちゃ美人とか?岡さん、慎重な人かと思ったけど意外で面白い。
    「お相手、年上ってことは社会人の方なんですか?」
    「まあ、そんなとこ。こっちにも仕事かなんかでよう来るし。今日もこっち来てんねんけど」
    「じゃあこのあとごはんとか行くんですか」
    「一応。向こう誕生日やし」
    「え!そうなんですか。おめでとうございます」
    だから今日18時半までって言ってたんだ。
    それならあんまり引き留めてても悪いなと思いながらスマホの時間を見た。
    18時41分。約束の時間からもう10分以上すぎている。
    「えっ岡さん時間すぎてますよ!すみません。彼女さんに怒られちゃうんじゃないですか」
    「気にせんで。別にええねん、こないだケンカしたし」
    そう言って岡さんは視線をノートに落としたまま、ちょっと不貞腐れたみたいに答えた。
    「えーケンカですか?なにでケンカしたんですか」
    「ほんまくだらん、どーでもええこと」
    「内容気になります」
    「ほんまくだらないねんて、アホみたいなこと。いつもそういうのでケンカしてん。……そんで、怒ってんのもいつも自分だけなんやけど。だから余計に腹立つねん。やからあんな奴ちょっとくらいほかっといたらええわ」
    岡さんはその時のことを思い出したのか、眉間にシワをよせた。岡さんこんな顔するんだー。ていうかそもそも岡さんてケンカなんかするんだ。いや、そりゃするだろうけど、なんかいつも淡々としてて怒ったりとかそんなことあんまりしなさそうな感じだったから。余計に何でそんな怒ってるのか内容が気になる。そこまで話すとテーブルに置いてあった岡さんのスマホが振動した。
    「……しつこ」
    岡さんは顔をしかめた。
    「ほんましつっこいねん。普段から」
    振動は一度収まって、もう一度震えた。それからすぐに今度は着信音が流れる。それでも岡さんはスマホを取らない。
    「しつこいて、もしかして束縛系的な?」
    「近いかも」
    「それやばくないです?」
    「やばいねんほんま」
    そこまで言ってから岡さんは、苛立った感じで鳴り止まない電話を掴むと、画面をタップした。
    「もしもし?ちょっと待っとって言うたやろ」
    わ。彼女には結構強めに言うんだ。意外〜。
    そう思った瞬間、スマホの向こうから微かに低い男の声が聞こえた。

    え?

    思わず岡さんの顔を見るけど、会話に夢中でこっちの視線には気づかない。
    「今バイトの子に勉強教えてんねん。は?代わる訳ないやろ」
    待って、彼女さんと話してるんじゃなかったっけ?聞き間違いかと思って、思わず耳を澄ます。聞き耳たてるの良くないと思いながら、聞かずにはいられない。微かに聞き取れるのはやっぱり低めの男の声で「聡実くん」とか「ごめんて」とか、そんな言葉。
    「なんやねん。……は?いっつもいっつも551で機嫌直るなん思わんといて。はぁ?食べるけど!」
    食べるんだ。まあ、食べるよね。551おいしいし。前にお父さんが出張のお土産で買ってきてくれた事あるけどおいしかったな。いいなぁ。お父さんまた出張ないのかな。て、違うか。ていうか自分の誕生日なのにお土産で551買ってきてくれるの結構優しくない?詫び551?
    続けてスマートフォンの向こうからぼそぼそと低い声がする。あー聞き取れない。いや、聞き取っちゃ駄目なんだけど。だけど気になる。しばらく黙って聞いていた岡さんは、俯いて口を尖らせた。
    「そんなん言うて、ほんま、いつもいつも……。なんやねん……。大体狂児があんなこと言わんかったら僕かてこんな怒ったりせえへんのに、ほんま腹立つ」
    それからまたぼそぼそとしばらく話す声がして、岡さんの耳たぶが赤くなった。
    「……やけどケーキ、まだ買うてないし…」
    段々、最初の言葉の勢いはなくなり、尻すぼみになっていく岡さんの声の向こうで微かに「そんなんええよ」という声が聞こえた。小さく聞こえたそれがあんまりにも優しくて、こちらがどきりとしてしまう。
    「ようない。……うん、うん。…ほな、一緒に買お。狂児の好きなん僕が買うから」
    強張っていた表情が段々ゆるんでいくのがわかった。
    「うん、わかった。……ほな今行くから」
    岡さんはそこまで言うとスマートフォンをタップし、通話を切ると「はあ」と息を吐いてから顔を上げた。
    「ごめん。続きまた今度でもええ?店の前まで来てるいうし」
    「え?あ、はい!全然大丈夫です!こちらこそ長い時間ありがとうございます。またお願いします」
    「うん、また」
    リュックを背負って立ち上がった岡さんに慌てて声をかける。
    「あの、岡さん」
    「え?」
    「今のって…彼女さんじゃなくて、もしかして親戚のおじさん?…ですか?」
    声は、明らかに男性のもので。聞き間違いな訳はない。だったらお相手が彼女さんだって勘違いしてたのかもしれない。あれ?でも待って、途中までずっと彼女の話ししてたよね?だって付き合った経緯とか束縛系とかそんな話してたし。束縛系な親戚のおじさんてなに?自分で言っててわからなくなってきた。
    よっぽど変な顔をしていたんだろう。岡さんは一瞬不思議そうな顔をしてから、ちょっと首を傾げた。
    「どっちやろね」
    岡さんはそう言って、小さく笑う。
    やっぱり、その顔はすごく可愛かった。





    高校生は男の子でも女の子でもどっちでもお好きな方で読んでください
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