手紙 手紙が届いた。差出人の名前はない。
だが筆跡や書簡のところどころに墨が飛び散っているのを見ると差出人は間違いなく満寵だ。恐らく罠作りの合間に急に思い付いたように筆を執り、そこら辺に転がっていた書簡にさっと書いたのだろう。その光景が容易に想像でき、徐晃は自ずと口元に笑みを浮かべた。
『徐晃殿、新しい罠を開発したんだ。試してみたいんだけど誰も相手してくれなくて困っててね。徐晃殿、修行がてら相手をしてくれないかい?』
手紙に目を通してみればいつも通りの内容で、最早拍子抜けすらしない。
徐晃と満寵は同衾するぐらいの仲のはずなのだが、常日頃から触れ合っているわけでもなく、同衾だって月に一回、下手したら数ヶ月に一回あればいいほうだった。徐晃はそれで構わないと思っているし、満寵も頻度なんかは気にしていないだろう。時間があれば兵器や罠を作りたい、と言うような御仁だ。
1052