独占したいのはお互い様ある日の事。
弁当作って少々疲れたので寝ていると、
タキオンが体を揺さぶって起こしてきた。
「トレーナーくぅーん、替えの服をくれよー」
「んん…なに…?服って…、Σちょ!?」
せがんでくるタキオンの勝負服はびしょびしょに濡れており、
発光していた。
どうやら実験薬をこぼしてしまったらしい。
「また徹夜してたの?」
そう聞くと、タキオンは認めて溜息をつく。
「あぁ、うっかりね。
薬品の調合中、手元が狂ってそのままバシャーン…とね。
やはり眠気があると注意力が乏しくなるねぇ。ふわぁあ~」
今日はGIレースがあるというのに、
黄色のセーターや紺色のブラウスが発光まみれ。
薬品が染みついているのが一目でわかる。
薬品の匂いもするし、ドーピングと疑われてしまうかもしれないので
これではとてもじゃないが出走できない。
「という訳で、適当でいいから出走に使えそうな服を探してくれ。」
「んー、予備の勝負服は無いしなぁ…
レースに出走できる服…代わりに出走できる服…あ!」
あるじゃないか、勝負服の代わりに
出走できる服が。
タンスを開け、
収納されてるその服を取り出す。
「あったよ!体操服!」
「体操服…?」
そう、G2レース以下で着る
あの体操服だ。
「ふぅん、体操服ねぇ…?
本来はG2レース以下で着用するものだが、
白衣を羽織れば多少はマシになるかな。
うん、悪くないかもしれない。早速その体操服をくれたまえ。」
「ほいよ~」
言われるままに体操服を渡し、
タキオンは体操服を着用する。
そして最後にゼッケンを付けようとする時、
タキオンはある事に気付いた。
「…!これは…」
「どしたの?」
そう聞いてみるとタキオンは嬉しそうに、
そして瞳に狂気を宿して笑った。
「ククク…ッ
わかってるくせに…!
君も意外と独占欲が強いねぇ…!?」
…やはりわかってしまったか。
「あー、うん…////」
バレバレとはいえ、
明らかな気持ちをゼッケンで示してしまった事に
少々後悔し、目を逸らしてしまう。
「このゼッケンの数字は君の名前そのもの…
そして数字の下には私の名前が刻まれている。
更にこのゼッケンの色はG1に使われる色だが、
この色は偶然なのか君のイメージを表した色だ。
つまり、私の思い違いでは無いなら
『私は君のウマ娘』という意味だと、受け取って良いのかな?」
もちろんYESだ。
タキオンの熱いまなざしに嘘をつける理由など無く、
コクンと縦に頷いた。
「ククク、正直でよろしい!
因みにわかっているかもしれないが、
私も独占欲が強いからね?
くれぐれも、この数字のゼッケンを
他のウマ娘に付けるんじゃないよ?」
「言われなくても」
わかってるよ と言い終わる前に、
視界が暗くなった。
気が付けば、タキオンと唇が重なっていた…
「…っ!?////」
「勝ってみせるよ、この姿で。」
アグネスタキオンの夜更かしが治った
アグネスタキオンのやる気が絶好調まで上がった
アグネスタキオンの束縛度が上がった
アグネスタキオンのうまぴょい度が上がった
「ちょっと待った!
束縛とうまぴょいは上がらなくていいから!
落ち着いてタキオーン!!」
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そしてG1レース本番。
白衣を纏った体操服は勝負服として許可してもらえたが、
トレーナーの手作りのゼッケンは
レースで決められる枠番号と混同するという事で
レース中は外さざるを得なかった。
それでもタキオンは狂気の如く
異様なハイテンションで1位をもぎ取った。
そして出走を終えた後は例のゼッケンを付け、
その姿を皆に見せつける様に袖をクルクル回していた…
「ククク…ッ
これが研究の成果さ!」
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おしまい★