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    Ordet_er_frit_

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    以前ツイッターにあげたフォラクレフォラ、その2。
    しくじった若クレーバーくんの保釈金を払ってくれるフォラーさんはいるよね、という鉄板ネタ。

    ##フォラクレ

    フォラクレ② My dog どうやら俺は捨てられたらしい。
     留置所の冷たい床に座り込んで、何日たっただろう。一週間以上たったかもしれない。すぐに彼が助け出しに来てくれると楽観的に思い込んでいた数日前までの自分を殴りつけたくなる。汚い床から小石をつまんで指先で弾く。
    「おい!」
     石が当たったらしく、同房の奴が睨む。
    「あんだよ、お前がそこにいるのが悪い」
    「てめえ……!」気色ばんだ相手が立ち上がる。
    「お、やるのか?」俺もすっと立ち上がって相手の襟元を掴む。
    「おい! お前ら離れろ!」
     ガン! と乱暴に鉄格子をたたかれ、しばらく睨み合ったあと俺が勢いよく突き放すと、奴はいとも簡単に倒れて不格好に尻もちをついた。やれやれ、足元も覚束ないヤク中かなんかだろう。なんでこんなクズと一緒にされなきゃならないんだと、一層苛立ちがつのる。
     部屋の隅にいって、ごろりと横になる。どうせ俺はなにをやってもうまくいかない。
     彼が手に入れたがっているある物をある人物からちょっと拝借する、そんな簡単なことだったはずが、無様にここにぶち込まれるなんて。考えてみれば、彼は俺に命令したわけでもないのだ。それなのにわざわざこんな間抜けを助けてくれるわけがない。
     彼に拾われて少しは俺もマシになるかもなんて、なんで思ったのだろう。
     昼メシか晩メシかもよくわからないが、突っ込まれたトレーからガツガツ食べていると、外で誰かの声が聞こえる。朝から晩までここが静かだった試しがない。
    「おい、イヌ公」
     無視してスプーンを口に運ぶ。食べられる時に食べておく主義だ。
    「おい、お前だ、クレーバー!」
     名前を呼ばれて顔をあげると、職員がドアを開けて立っていた。
    「出ろ。ご主人のお迎えだぞ、ワン公」
     一瞬言われている意味が飲み込めず、とりあえず口の中のものを飲み込む。
    「さっさとしろ」
     彼が今さら来たのか? いや、敵のほうが俺を始末しに来たのかもしれない。訝しがりながらのろのろと房を出て、職員についていく。だが、廊下を曲がると、受付窓口の前にスーツを隙なく着た見慣れた姿が立っていた。
     嬉しい気持ちと怒りがないまぜになって胸に襲い掛かり、足が止まる。
    「どうした。まったくお前みたいな野良犬に保釈金を払ってくれる御仁がいるなんて、世も末だな」
     彼が保釈金を? と驚きながらも、とりあえず本人の前でそんな口をきくなと睨みつける。
     窓口から呼びかけられ、彼——フォラーはそちらに行った。何か書類にペンを走らせている。
     じゃあな、と乱暴に背中を押し、職員は戻っていった。
    「なぁ、初めて聞いたぜ。私の犬を返してもらおうか、なんてセリフ」
     他の奴と笑いながら話しているのが小さく聞こえた。
     しばらくすると、フォラーは斜めに掛けたバッグに書類を突っ込みながらやってきた。
    「クレーバー、遅くなってすまなかった。ちょっと私も身動きがとれなくてね」
     久しぶりに近くで見る彼の顔はやけにやつれて見えた。それに片目の周りにうっすらとアザが見える。聞きたいことが色々ありすぎて、半開きの口からうまく言葉が出てこない。
     彼は髪を撫でつけて帽子をかぶった。
    「外に車がとめてある。行くぞ、クレーバー」そして何でもない事のように付け足す。
    「お前の力を借りたい」
     そうだ、俺は彼の犬だ。そう思うと途端に誇らしい気持ちになった。
     湧き上がってきた熱を留めるように、俺はぐっと奥歯を噛みしめた。
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    Ordet_er_frit_

    DONE[准牧] まぷまオンリー第3回のワンドロ企画のお題「〇〇しないと出られない部屋」の短編。
    題して「協力しないと出られない部屋」。
    史上最高に健全な出られない部屋ができました。
    デザイナーマンデル君と、モデルプレストンでおおくりします。
    協力しないと出られない部屋「喜べ、プレストン」
     その声にプレストンはめんどくさそうに振り向いた。マンデルが笑みを浮かべて立っている。
    「例の部屋がとれたぞ」
    「ほんとうか?」プレストンも思わず目を丸くした。

     ファッションウィーク中は、文字通り目が回るほど忙しい。
     ショーの前日の準備を終えたマンデルとプレストンは、足を引きずるようにホテルの部屋へ転がり込んだ。
     街でもトップクラスの高級ホテルのスイート。それに相応しい地位を築いたことへの誇らしさを感じる余裕すらないほどだ。だが、荷物を置いて一息ついたプレストンは部屋を見回して溜息をついた。
    「すごいな」
     ドアを開ければ、少しばかり廊下などがあってから、広々としたリビングが二人を迎える。テーブルには、花が生けられた大きな花瓶。床には現代彫刻のようなオブジェ、洒落たランプ。部屋を横切ってドアを開けると、これまた広々としたベッドルームと、五人くらいは寝られそうなサイズのベッド。ふわりと清潔感のある香りが漂う。ベッドルームを横切るとバスルームの白い扉。その中もこれまた広々としていて、蛇口とボウルは二セットだ。さらにバスルームとは別にシャワーブースもある。奥の扉を開けるともう一つベッドルーム。今日のベッドは別々だろうか、という疑問がプレストンの胸によぎる。
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