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    しろ

    しろ(@w0d_46)の投げ置き場。

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    しろ

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    雪が嫌いなブ。シリアスっぽいほのぼのオクブラです。

    白い傷


    はらり、はらり。

    それは綿のように柔らかで、硝子のカケラのように煌めき、全てを白亜の世界に染め上げる。

    そんな雪が、私は大嫌いだった。



    「お、降ってきたな」

    試合後の帰り道、オクタンと並んで歩いていると隣から嬉しそうな声が上がった。
    釣られて上を見上げれば、暗雲とした空から白い粒が落ち始め、ポツリとゴーグルに付着する。

    「雪…か…」
    「どうりで寒い訳だぜ…」
    「……そんな格好をしているからだろう、まったく」

    オクタンを見れば、コートを着ているとはいえ、真冬とは思えない薄い服装に、見ているこちらが寒さを覚えそうになる。
    なんなら、いつもしているマスクすら外している。
    「あんまり着込むと、速く走れねぇだろ!!」と言い訳を叫んでいるが、貴方らしいな…と答えるに留めた。
    まともな答えが返って来ないだろうなぁという諦めにも似た境地だからではない、決して。主神には誓わないけど。
    そんな私の心の声などつゆも知らない彼は、ちらりと私を見る。

    「アンタは相変わらずあったかそうだな!」

    試合中と変わらない服装の上に、上からコートとマフラー。正直、着膨れしている自覚はある。
    彼が「雪だるまか?」と鼻先を赤くしたままケラケラと笑った。

    「寒いのは、苦手でな…」

    だってあの冷たい悪魔は、全てを飲み込んで、何もかも奪い去ってしまうのだ。

    あの日の光景を、今も忘れられない。
    あの最後の姿を、忘れたくない。
    ズキリと、奥底の傷が痛みを訴える。

    無意識に立ち止まり、ぎゅっと握りしめていた拳に躊躇いがちに手が触れて、はっと我に帰る。

    「…大丈夫か?」
    「あ、あぁ…すまない」
    「体調でも悪いのか?歩けるか?」
    「問題ない、…ちょっと考え事をしていただけだ」

    頭を軽く降って思考を振り払い、取り付くように答えれば、ゴーグル越しに優しい若草色と目が合った。先程とは違うその真剣な眼差しに、それ以上は言葉が詰まってしまう。

    「なら良いけど…辛い時は辛いって言えよな」

    春を思わせるその色には、いつも暖かさを宿している。
    それに、何度救われたことか。
    凍てつきそうになる心を、じんわりと溶かしてくれるのだ。

    「あぁ、すまないな」
    「あ、また謝ってるな!?」
    「…そうだったな。ありがとう、オクタビオ」
    「よし、どういたしましてだぜ!」

    前に、お前は謝りすぎだ!!と怒られたのを思い出す。
    感謝を伝える事は大事な事だ。想いは大事にしなければ。

    「ほら、流石の俺も凍えちまうぜ…早く帰ろうぜブラッドハウンド」

    ニコリと笑う姿に、改めて愛しさが込み上げてくる。あぁ、本当に貴方は…。

    差し伸ばされた手を取り、またゆったりと二人で歩き出した。
    グローブ越しでも分かるその温かな手に、自然と笑みが宿る。

    「今夜はポトフにしようか」
    「お!いいな!」
    「お酒も少しなら良いだろう」
    「この間買ったビール、開けちまおうぜ」

    今夜の献立話に花が咲けば、自然と足取りも軽くなる。
    先ほどよりも大粒になった雪にすら、気づけないほどに。


    雪も寒いのも嫌いだ。
    けれどそれ以上に、この暖かさが好きだ。
    どうか、どうか。
    この手が離れませんように…。
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    しろ

    DONE雪が嫌いなブ。シリアスっぽいほのぼのオクブラです。白い傷


    はらり、はらり。

    それは綿のように柔らかで、硝子のカケラのように煌めき、全てを白亜の世界に染め上げる。

    そんな雪が、私は大嫌いだった。



    「お、降ってきたな」

    試合後の帰り道、オクタンと並んで歩いていると隣から嬉しそうな声が上がった。
    釣られて上を見上げれば、暗雲とした空から白い粒が落ち始め、ポツリとゴーグルに付着する。

    「雪…か…」
    「どうりで寒い訳だぜ…」
    「……そんな格好をしているからだろう、まったく」

    オクタンを見れば、コートを着ているとはいえ、真冬とは思えない薄い服装に、見ているこちらが寒さを覚えそうになる。
    なんなら、いつもしているマスクすら外している。
    「あんまり着込むと、速く走れねぇだろ!!」と言い訳を叫んでいるが、貴方らしいな…と答えるに留めた。
    まともな答えが返って来ないだろうなぁという諦めにも似た境地だからではない、決して。主神には誓わないけど。
    そんな私の心の声などつゆも知らない彼は、ちらりと私を見る。

    「アンタは相変わらずあったかそうだな!」

    試合中と変わらない服装の上に、上からコートとマフラー。正直、着膨れしている自覚はある。
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    しろ

    DONEオクブラ前提のオク視点。というかオクが話してるだけ。冬の夜のお話。カモミール


    カシャリ…カシャリ…
    真っ暗な廊下に、自分の足音と抑えた息だけが静かに響く。

    「はーーーさっみぃ…」

    羽織ったパーカーをギュッと握りしめた後、思わずハァ…と手に息を吐き掛ければ、掌に僅かに白さが覆った。
    吸う息ですら、肺にちくりと刺すように冷たい。

    時刻は真夜中。
    こんな夜中に何をしてるのかと言うと、上手く寝付けない上に、体が寒さを訴え、そそくさとキッチンに向かっているところである。

    暖房が壊れるとかイジメだろうか?
    カミサマは俺が嫌いなんかね?
    いや、俺はカミサマなんか嫌いだけどな!!

    悪態をつくものの、ぶるりと体が震えればそんな考えも霧散していく。

    はーー…何かあったけぇのが飲みてぇな……

    昨日の帰り道、既に雪がチラついていたのを思い出す。どうりで寒い訳だ。なんなら既に積もっているかもしれない。
    世の中も、プレゼントを配る赤いアイツがそろそろ顔を出す頃だろう。

    キッチンについて、ようやく明かりを灯す。眩しさに目をしぱしぱさせながら、小さい頃は俺も信じてたなーなんて思いつつ、ポットで湯を沸かし始める。
    その間にマグを出し、普段あまり開けない棚を覗けば、 1091

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