Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    しろ

    しろ(@w0d_46)の投げ置き場。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 12

    しろ

    ☆quiet follow

    オクブラ梅雨話。照れ屋なブ視点。

    #オクブラ
    okvula

    染め色恋色


    しとり。しとり。
    季節はいつの間にか梅雨に入り、湿気を多く含んだ曇天は、朝から小粒な雨を振り落としていた。

    そんな空模様を小窓から覗き、再び本へと視線を落とす。
    休日の朝食後は、小窓の傍の椅子でゆるりと読書をする時間になったのはいつからか。
    ぱらりと頁を捲る動作すら、この時間では至福の時となる。

    昨夜から泊まりに来ている恋人も、この時間だけは邪魔しに来ず、最新ファッションだかの雑誌に目を向けていた。
    …はずだった。

    「なーなーブラッドハウンドー」

    いつの間にか足元に来ていた彼は、私の足に抱きつき、まるで猫の様に膝に頭を乗せてぐりぐりと甘えてくる。
    前言撤回。今日は邪魔に入るらしい。

    「…オクタン、私は読書をしたいのだが?」

    あえて視線を本に落としたまま話せば、「なんだよー構えよー」とより一層足に絡みつくばかりだった。

    …はぁ、今日はここまでか。

    名残惜しさと共に、栞を挟んで本を閉じる。

    「今日はどうした?」

    本をキャビネットの上に置き、そこでようやく若草色の瞳を見れば、待ってましたとばかりの笑顔を向けられた。

    「やっぱりアンタは優しいな!」

    その眩しさに思わず苦笑し、青葉色の柔らかな髪に指を通す。

    「貴方が催促したんだろう…?」
    「それでも構ってくれるなんて、俺様愛されてるなー」
    「惚気で我が儘を誤魔化さない」
    「…ちぇ、そこは絆されてくれても良くねぇ?」

    けらけらと笑うオクタンは、「雨だとつまんねーんだよ」と私の足に抱きつく。いつまでそこにへばりついているつもりなのだろうか。お返しとばかりに、わしゃわしゃと髪を撫でてやる。

    「雨の中走り回るのも楽しいんだけどよぉ…義足に泥が詰まると、アネキに雷落とされるからなぁ」
    「それは彼女が正論だな」
    「知ってるか?アイツ、怒るとめっちゃ怖いんだぜ?」

    やだやだー、と再び額を足に擦り付けて唸る彼。

    「元気が取り柄だものな、貴方は」

    小さくくすりと笑うと「あ、今子ども扱いしただろ!?」と反論の声が響く。

    「私は、雨の音も好きだからな。たまには耳でも傾けてみたらどうだ?」

    ーぽつり。

    ーかさり。

    ーこつん。

    小さな雨粒は、よくよく聞いてみれば様々な音色を奏でる。
    それが子どもの頃から好きだった。

    なにより、あの無音の世界を紡ぐ雪よりも、何倍も素晴らしいと思っている。

    「雨音ねぇ……俺じゃ寝ちまいそうだ」
    「ふふふ。あぁ、それに庭の紫陽花も、そろそろ見頃だろう」

    小窓から覗き見える紫陽花達は、雨に濡れて鮮やかな色を輝かせていた。紫や青のグラデーションがとても美しい。

    「あー、紫陽花って土で色変わるんだっけか?」
    「そうだな、土壌が酸性かアルカリ性かどうかで決まってくる。今回は特に調整した訳ではないが…綺麗に混ざり合ったようだ」

    花を切り取って、ドライフラワーにするのも良いかもしれない…と思案していると、「じゃあアンタは何色なんだ?」と投げられた。
    質問の意図が読めず、思わず首を傾げる私に、「それ可愛いな」と惚気られる。
    そういうストレートな所、嫌いではないが心臓に悪いから勘弁して欲しい…。

    「質問の意味が、よく分からないんだが…」

    何色?自分が?
    彼は何が聞きたいのだろう。

    「いや、紫陽花は土で色が変わるんだろ?だったらさ…」

    足元にいたオクタンが這い上るように立ち上がったせいで、急に顔が近づく。
    椅子に座ってる関係上、逃げることも叶わない。
    整った顔が目前まで迫れば、彼はいつもよりも少しばかり低く響く声で呟いた。

    「“俺”に染まったアンタは、何色になるんだろうな?」

    そっと触れた唇に、思わず若草色と視線が絡み合う。
    低く響く声色の意味を脳がゆっくりと反芻し、なんとか嚥下した頃には、頬に熱が集まるのが分かった。

    「な、っ…んん…」

    狼狽える私の姿にニヤリと笑った彼は、「ははっ、真っ赤じゃねぇか!」と笑う。

    「アンタにゃ赤が一番似合うけどよ、俺の色も受け取ってくれよ?」

    色を含んだ物言いに、思わずその頬をぴしゃりと挟む。

    「いひゃいっ!」

    「あ、あんまり私をからかうな…!」

    我ながら子どもじみた反撃をしてしまったが、居ても立っても居られず、彼が少し離れた隙に椅子から立ち上がり、足早にキッチンへと避難する。

    「ブラッドハウンド〜悪かったってぇ〜」

    後ろから掛かる拗ねた声を無視し、まだ早鐘を打つ胸を鎮めるために、とりあえず新しい紅茶を淹れ始める。
    どうやらこちらまでは、追っては来ない様だった。
    新しく湯を沸かしながら、火照った頬をパタパタと扇ぐ。
    先程の、じっと見つめる瞳が頭から離れない。低く響く声が、まだ耳元で囁かれているように感じる。
    それほどに、私は……

    そこで、ふと紅茶缶に目がいく。
    薔薇が描かれたこの紅茶は、少し前に彼が贈ってくれたものだ。
    咄嗟に出したガラスのティーカップは、赤のグラデの物と、緑のグラデの2客。これは、二人で買い物に行った際に見つけた物だ。

    「なんだ…」

    彼に言われるまでもなく、既に今の生活は彼の色に染まっているではないか。
    嬉しいような、照れくさいような、むずがゆい感覚。
    しかし、なにより心が満たされるのは、他ならぬ彼の存在だった。

    「まぁ……悪くは、ないな」

    ふふ、と口元が緩む。

    自分の色は何色だと問われた。
    自身の色は私には分からないけれど、すっかりと彼の“緑”に染まっていることは確かだった。
    実は、あの綺麗な若草色の瞳が一等好きな事は、まだ秘密だったりする。
    普段はゴーグルに隠されているが、真っ直ぐに見つめるあの瞳は、どんな宝石よりも煌びやかに見えるのだ。なによりも美しいと思っている。
    それは、刹那を生きる彼の生き様のようで…。

    砂時計が落ち切ったのを見て、二つのティーカップに、紅いローズヒップを注いでいく。

    今度は、私の色も受け取って貰おうか。
    ふわりと香る紅を持って、先程よりも軽い足取りで、リビングへと歩を進めのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖😭💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    しろ

    DONE雪が嫌いなブ。シリアスっぽいほのぼのオクブラです。白い傷


    はらり、はらり。

    それは綿のように柔らかで、硝子のカケラのように煌めき、全てを白亜の世界に染め上げる。

    そんな雪が、私は大嫌いだった。



    「お、降ってきたな」

    試合後の帰り道、オクタンと並んで歩いていると隣から嬉しそうな声が上がった。
    釣られて上を見上げれば、暗雲とした空から白い粒が落ち始め、ポツリとゴーグルに付着する。

    「雪…か…」
    「どうりで寒い訳だぜ…」
    「……そんな格好をしているからだろう、まったく」

    オクタンを見れば、コートを着ているとはいえ、真冬とは思えない薄い服装に、見ているこちらが寒さを覚えそうになる。
    なんなら、いつもしているマスクすら外している。
    「あんまり着込むと、速く走れねぇだろ!!」と言い訳を叫んでいるが、貴方らしいな…と答えるに留めた。
    まともな答えが返って来ないだろうなぁという諦めにも似た境地だからではない、決して。主神には誓わないけど。
    そんな私の心の声などつゆも知らない彼は、ちらりと私を見る。

    「アンタは相変わらずあったかそうだな!」

    試合中と変わらない服装の上に、上からコートとマフラー。正直、着膨れしている自覚はある。
    1334

    しろ

    DONEオクブラ前提のオク視点。というかオクが話してるだけ。冬の夜のお話。カモミール


    カシャリ…カシャリ…
    真っ暗な廊下に、自分の足音と抑えた息だけが静かに響く。

    「はーーーさっみぃ…」

    羽織ったパーカーをギュッと握りしめた後、思わずハァ…と手に息を吐き掛ければ、掌に僅かに白さが覆った。
    吸う息ですら、肺にちくりと刺すように冷たい。

    時刻は真夜中。
    こんな夜中に何をしてるのかと言うと、上手く寝付けない上に、体が寒さを訴え、そそくさとキッチンに向かっているところである。

    暖房が壊れるとかイジメだろうか?
    カミサマは俺が嫌いなんかね?
    いや、俺はカミサマなんか嫌いだけどな!!

    悪態をつくものの、ぶるりと体が震えればそんな考えも霧散していく。

    はーー…何かあったけぇのが飲みてぇな……

    昨日の帰り道、既に雪がチラついていたのを思い出す。どうりで寒い訳だ。なんなら既に積もっているかもしれない。
    世の中も、プレゼントを配る赤いアイツがそろそろ顔を出す頃だろう。

    キッチンについて、ようやく明かりを灯す。眩しさに目をしぱしぱさせながら、小さい頃は俺も信じてたなーなんて思いつつ、ポットで湯を沸かし始める。
    その間にマグを出し、普段あまり開けない棚を覗けば、 1091

    related works

    recommended works