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    雨月ゆづり

    @10_Libra_08

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    雨月ゆづり

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    ラジオ体操をテーマに書いたニキマヨです。
    以前Twitterでツイートした内容を小説として書き出してみたものです。

    一緒に住んでいる設定です。
    出会って最初の年の夏休みでそこまで関係が進展するかと訊かれればNOですが、そこは都合良く解釈していただけますと幸いです。

    #ニキマヨ

    ラジオ体操「おはようございますぅ……」
    「おはようにはちょっと遅すぎると思うっす」
     眠たそうに、半分閉じかけた目をこすりながら現れたマヨイに、ニキはそう返事をした。時刻はもう朝というよりはとっくに昼になっていると言ってもいい。そして、寝坊は今日が初めてではなく、この一週間の内の半分以上、マヨイは昼頃にならないと起きて来なかった。
    「それで、今日はなんでこんなにお寝坊さんなんすか」
    「ええと……都市伝説について特に興味深いサイトを見つけまして……夢中で読んでいる内に、つい明け方に」
     話している間も、マヨイはとても眠そうだ。あくびをかみ殺しながら話しているせいで、ところどころふにゃふにゃとして言葉が聞き取りづらい。
    「もう! そんなんで、夏休み終わって学校はじまったらどうするんすか!」
     高校三年生。高校生活最後の夏休みだというのに、マヨイは夜中にばかり元気に活動をしていて、昼まで起きられない日が続いていた。
    「私、夜型でぇ……」
    「マヨちゃんが夜型なのは分かってるつもりっすけど、だからって毎日お昼まで寝てたら、朝ごはんが食べられなくなっちゃうじゃないっすか!」
    「……ふふ、椎名さんらしい理由ですねぇ」
    「今の笑うところじゃないっす」
     もう、とニキはため息をつく。
    「そんなお寝坊マヨちゃんに、僕から宿題っす。はい、これ」
     マヨイはニキから手渡されたカードを見て、首を傾げる。
    「ラジオ体操出席カード……?」
    「マヨちゃんには、これから毎朝8時には起きてもらうっす」
     マヨイは渡されたカードをまじまじと見つめる。ラジオ体操出席カード、と書かれた紙はニキのお手製だ。厚紙に色鉛筆で、日付が書かれている。空いたスペースには、マヨイが好きそうな可愛らしいフォルムのくまやうさぎが描かれていた。
    「8時……は、早すぎないでしょうかぁ……」
    「学校始まったら、もっと早く起きなきゃならないんすからね! これでも大分譲歩したと思うっす!」
     マヨイはしばらく訴えかけるような目でニキの方を見ていたが、ニキの意思が固いことを察して、渋々ながら頷いた。
    「分かりましたぁ……それで、8時からラジオ体操するんですか?」
    「せっかくだからしましょうか。ネットにデータあったんで、それを借りて流しましょう。その方が雰囲気出ると思うんで。それに、マヨちゃんにもメリットがあるんすよ!」
    「メリット、ですか?」
    「ちゃんと起きられた日には、僕がスタンプ押してあげるっす。それが15個たまったら、マヨちゃんの好きなご飯を作ってあげます。そして、20個たまったら、なんと!」
    「なんと?」
    「好きなご飯を作ってあげます!」
    「……15個との差は?」
     マヨイに問われて、ニキがしばらく考え込む。
    「多分20個の方が豪華っす」
    「そこまでは、あんまり考えてなかったんですねぇ」
    「……正直、この調子でいくと、15個までたまるかどうかもあやしいと思うんすよねぇ。マヨちゃんお昼ぐらいまでは、何回声かけても、揺すっても起きないし」
    「それは……すみませぇん」
    「反省してるなら、ラジオ体操やるっすよね?」
     有無を言わせぬニキの口調に、マヨイはまた、渋々ながら頷いた。
     いつも、何でもない日にだって、お願いすれば好きなものを作ってくれるくせに、と思ったのだが、それは口に出さないでおいた。

     結局のところ、ニキが散々悩んで考えたラジオ体操出席カードの効果も空しく、マヨイはあまり朝8時までに起きられなかった。元々朝が弱いのもあり、たとえ夜更かしをしなくたって、朝ゆっくりしても学校に遅刻することはないのだという気のゆるみが、マヨイの眠りを深くしてしまうらしい。
     夏休みが終わる頃になって、体内時計を整えるためにも何とか朝8時に起きられる日が増えてきて、そして迎えた夏休み最終日。
    「12、13……14」
    「14個ですねぇ」
     マヨイの出席カードにフライパンの模様のスタンプを押して、ニキが今までにたまったスタンプの数を数えて読み上げた。
    「マヨちゃん~!」
    「は、はいぃ!」
    「何であと一日早く起きられなかったんすか! 僕のせっかくの思いつきが台無しっすよ!」
    「す、すみませぇん! これに関しては本当に、申し訳ないと思ってますぅ!」
     ニキはしばらくぶつぶつと口の中で何かを呟いていたが、やがてため息をついた。
    「もう……仕方ないっすねぇ、あと一個スタンプが足りなかったマヨちゃんには、残念賞っす」
    「残念賞もあるんですか?」
    「出来る限りで頑張ったのは認めるんで。最初がぐだぐだすぎて、追い上げが間に合わなかったのも事実っすけどね」
    「ちなみに残念賞って何ですか?」
    「……マヨちゃん」
    「はい」
    「何が食べたい?」
     まるでいつも通りの会話だな、とマヨイは思わず吹き出してしまう。そんなマヨイを、ニキはむっとした顔で見つめていた。

    「これは残念賞っすからね! 本当はもっとおっきいケーキになってたんすからね! マジパンでマヨちゃんが好きそうな動物も作ったし! チョコプレートにおめでとうって書いて載せる予定もあったんすからね!」
    「ええ、これは残念賞ですもんね。ふふ、マジパンの動物が見られなかったのは残念ですぅ」
    「マヨちゃん何か楽しそうっす」
    「え? ふふ、いえ、そんなことは……とても残念です。大きなケーキ、私も食べたかったです」
    「本当にそう思ってます?」
    「ええ、もちろんそう思ってますよぉ」
     目の前の皿には小ぶりながら、手を抜いたところのないチョコケーキが載っている。小さいホールを焼いて、その大部分はニキの皿に、そしてマヨイの皿には小さなひときれが載せられていた。
     でも、マヨイは知っている。この量の差は嫌がらせでもなんでもなくて、マヨイが美味しく食べられる量を追求した結果だ。これ以上の量になってしまうと、どんなに美味しくても、少食なマヨイは胸焼けしてしまう。
     そして、これ以上大きなチョコケーキを作ってもらったところで、マヨイは今皿に載っている量以上には食べられないということも、自分で分かっていた。
     いつだってマヨイに美味しいものを、食べられる量だけ食べて欲しいというニキの料理人としての想いが、残念賞を作らなければならないという状況に勝ってしまったらしい。残念賞とは建前ばかりの、マヨイにとって、とても嬉しくて、とても幸せなチョコケーキが出来上がっていた。
     ひとくち含めば、とろけるような柔らかさのスポンジから、チョコの芳醇な香りがたちのぼる。美味しくて、すぐに飲み込んでしまうのがもったいなくて、しばらく口の中で転がしてから飲み込む。
    「美味しいっすか?」
    「ええ、とても」
     ニキは、マヨイが嬉しそうに食べるのを見て、マヨイに気付かれないようにそっと頬を緩める。それを視界の端に写しながら、やっぱりいつもマヨイのことを気にかけてくれるこのひとのことが好きだと、マヨイはしみじみと噛みしめるのだった。
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    雨月ゆづり

    DONEニキマヨドロライさんのお題をお借りしました。

    ついマヨイを年下扱いしてしまいがちなニキと、年下扱いをやめてほしいマヨイ。
    一緒に住んでいるニキマヨ。
    「同い年」 話があります、なんて改まって言われたものだから、これは悪い話かもしれない、と思わず身構えた。

    「話ってなんすか」
     律儀にカーペットの上に正座しているマヨイに合わせて、自分も慣れない正座をしながらニキは尋ねた。
    「椎名さんにお願いがありまして」
    「はい」
    「私のこと、年下扱いするのをやめていただけないでしょうかぁ……」
    「……はい?」
     マヨイは視線をさまよわせた。
    「ええと、その……言葉の通りですぅ。ほら、私今日誕生日じゃないですか」
    「うん、おめでとうっす」
    「ありがとうございますぅ。……このやり取り何度目でしょうか」
    「何度目だろ、数えてないっすね」
     日付が変わった時に一回、朝起きて目が合った時に一回、あとは朝食後に、前日からこっそり用意していた誕生日のケーキを見せた時にも一回。マヨイが誕生日を迎えたことを実感するたびに自然とお祝いの言葉が出てしまい、そのたびにマヨイがお礼を言う、というのをもう今日になってから何度も繰り返していた。
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    雨月ゆづり

    DONE5月23日はキスの日……でしたが盛大に遅刻しました。
    いわゆる事故ちゅー。

    ニキに昔彼女がいた描写を含むため、苦手な方は要注意です。
    キスの日のニキマヨ 礼瀬マヨイは混乱していた。
    「ど、どうしましょう、あれ、絶対、その……キス……しちゃいましたよねぇ……!」
     置き去りにしてしまったニキの顔を、今更振り返って見る勇気はなかった。マヨちゃん、と呼ぶ声が聞こえた気がするものの、そんな呼びかけすら振り切るようにして天井裏にもぐりこんで、出来るだけ遠くへと這うようにして逃げた。
     これは、ニキとマヨイがうっかりキスのような、そうではないような、一瞬の触れ合いをしてしまってからはじまるお話。

     いつものように天井裏から降りようとした時のこと。降りようとした場所にニキが立っていて、とっさによけようとしてよけきれずにぶつかった。それでも最初から唇が触れた訳ではなくて、額をぶつけたらしいニキが額をさすりつつ顔をあげた瞬間と、ぶつけたところを確認しようとマヨイがニキの顔を覗き込んだ瞬間、そして二人の顔の角度が、奇跡のように合わさって、そうとは分からないほど一瞬だけ唇が触れた――ような気がしただけのこと。
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