社会人パロのフィガファウ『12時』
十二時きっかりに、部内の誰もが席を立った。パソコンと長い時間向かい合っていたファウストは長く伸びをして、軽く首を回す。
途中になっている仕事に後ろ髪引かれるが、十二時からの一時間という時間設定の休憩時間は動かせないのだ。渋々重い腰を上げると誰よりも遅くに室内を出た。途端、手首を掴まれてぎょっとする。
「良かった、まだいたんだね。お昼外で取ろうよ、店調べておいたからさ」
まるで出待ちのような事をする男、フィガロ・ガルシアは、同期でも無ければ、部署も異なる。研修や会議で顔を合わせる程度の、全くの他人では無いが友人とは呼べない距離感の人物の筈だ。それなのにどうしてか度々こういう事が起こる。
「あ、お弁当持ってきてたりする?」と確認をされた時に思わず正直に首を横に振ってしまったから、フィガロの提案は承諾したも同然だった。
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