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    kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5

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    コンパスの86組(10、55、13、08)が好きな文字書きです。絵はかけません。
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    kurokuro_happy5

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    とある旅館に泊まった羅針盤の魔女一行のお話。

    羅針盤の魔女 旅館紅薔薇編魔女の死を求め彷徨い歩く彼女らにも、一時の安寧は必要だろう。
    今回は過酷な旅路の中に訪れた、休息のお話​───────。





    「困ったわね……」
    「困りましたね……」
    羅針盤の魔女一行は羅針盤に導かれとある街に来ていたのだが、ここはどうも魔女や使い魔が好かれる場ではなく。何処の宿にも宿泊を断られてしまったのだ。
    「野宿しかないかしら」
    (えー!最近宿にしか泊まってなかったから今更野宿なんてやだよ!)
    (仕方ねーだろ、泊まれるとこがねーなら……)
    (俺様もお布団で寝たいぜ〜)
    (魔女をそこら辺の地面で寝かせるのはね)
    (どうしましょうか……この近辺にはもう宿屋はないのですか?)
    「もう一度聞き込みして参ります。夜までまだ時間はありますし」
    「……」
    「魔女様?」
    「……バラの香りがするわ」
    「えっ?ま、魔女様!?何処へ!?」
    どうするかと頭を悩ませていれば、魔女が急にふらりと歩き出してしまった。ついて行くと、辿り着いたのは……
    「旅館、紅薔薇……」
    「旅館……?こんな所にもあったのですね」
    美しい風装の旅館だった。周りには赤い薔薇が至る所に咲いている。
    「入ってみましょうか」
    (だな!もうここしかねーし!)
    (泊まれるといいね)
    (いい感じのとこだな〜!温泉はあるのか?)
    (? アダム、どうしたんだい)
    「……」
    (兄様?)
    「どうかしたの?」
    「……いえ。きっと、気のせいです」
    アダムが何やら足を止めたが、そう返され気にせず入ることにする。魔女達を出迎えたのは、緑の短い髪に着物を着た綺麗な女だった。
    「旅館紅薔薇へようこそ。お一人様と……使い魔6名様ですね」
    「泊まってもいいの?」
    「もちろんです、大事なお客様ですから。我々紅薔薇は、お相手がどなたであろうと差別致しません。そういう時代は終わったのです。……そうでしょう?消えた騎士団長の坊や」
    「えっ……?」
    緑の髪の女は穏やかな表情から一変、鋭い視線を魔女の隣にいるアダムに向けた。
    「……何故貴様がここに」
    「あの戦争の後、生き残った面々でこの旅館を建てたのです。……団長の提案で」
    「そうよ。私が考えたの、素敵でしょう?」
    その声と共に後ろから出てきたのは、これまた美しい赤い髪に赤い瞳の着物の女だ。
    「やっぱり生きてたのね」
    「……お前もか」
    「アダム……?知り合いなの?」
    (か、かつての、敵国の猟兵団です!)
    (敵国の猟兵団?)
    (それって、アダムとソーンが巻き込まれた戦争の……)
    「……あら。貴方の弟、どうしたの?そんな所にいるなんて」
    どうやらこの女達にはソーンがアダムの中に居ることもわかっているらしい。恐らく、相当な手練だ。
    「貴様には関係ない。早く手続きを済ませろ」
    「んもうっ、こんな冷たい男が隣にいて貴女大丈夫なの?私が今日……熱い夜にしてあげましょうか?」
    「魔女様に触れるな!穢らわしい!」
    「貴様こそ気安く団長に触れるな!」
    (にっ、兄様をバカにしたら僕だって怒りますよ!)
    突然始まった四人の喧嘩に遠い目をする魔女と使い魔4人。途中で見かねた魔女が間に入ることにより、手続きの話に戻すことが出来た。
    「部屋まではあの子……アミスターが案内してくれるわ。使い魔専用のお風呂もあるから、利用してちょうだい。ただし人の姿には戻らないこと、いいわね?」
    (はーい!)
    「夕食は18時からうちのシェフが食堂で振る舞うわ。食べ放題だから好きなだけ食べてちょうだいね」
    (マジかよ!最高だな!!)
    (旅館なのにシェフって……)
    「それと……魔女さん。貴女のお風呂なんだけど」
    「?」
    女将が申し訳なさそうに眉を下げる。
    「この間、女風呂の方が一部設備が壊れちゃってね。指定された時間以外は混浴になってるのよ。いつ入るか教えてくれたら」
    「問題ないよね、魔女」
    「混浴で構わないわ。この人と入るから」
    (はっ!?いつの間に!?)
    (反応速度えぐ)
    話を聞き付けいつの間にかアダムが猫に、零夜が人の姿に入れ替わっていた。それを見た女将は目をぱちくりとさせ、口を手で抑える。
    「あらあら、もしかして……そういう関係?」
    「えぇ。この人は私が人生を捧げた人よ」
    「もし出来るなら、時間は言うから他の客を入らないようにして欲しい。魔女の体を他の男に見られるなんて言語道断だからね」
    「ちょっと零夜、そんな無理を言っちゃ」
    「いいわよ。調整してあげる」
    「えっ」
    「団長!!また貴方は勝手に!」
    「団長じゃないわ、女将よ、女将。……君達に興味が湧いたわ。夕飯の時、ぜひ話を聞かせてちょうだいね。アミスター、案内してあげて」
    女将はニコニコとしているが、反対にアミスターは深く溜息をついた。そして「こちらへどうぞ」と魔女達を案内する。初めて来た場所だが、アミスターがあの女将に苦労させられているのは今のを見ただけでわかった。随分好き勝手している女将のようだ。だが、魔女や使い魔への偏見が多いこの街で、ここまで手厚くもてなしてくれるのは有難くもあった。
    (なんか色々と騒がしい場所だけど……泊まれてよかったね、魔女様)
    「そうね」
    (何だか腑に落ちませんが……まぁ、魔女様が良いなら良いです)
    (今は敵意もないようですし……戦争は終わりましたからね。争う必要も無いです)
    ふと、零夜が魔女に手を重ねる。魔女は慌てて手を引っ込めた。
    「零夜、まだ人がいるから」
    「……すまない。久しぶりに君とゆっくり過ごせそうだから」
    「お部屋はこちらになります」
    アミスターに案内された部屋は、綺麗な畳の部屋だった。広々としていて、ゆっくり寛げそうだ。
    「時間になりましたら布団を敷きに参りますので。それまでは心ゆくまでお寛ぎください。何かありましたらお電話の方でお願いします。それでは」
    ストン、と襖が閉まる。瞬間使い魔達は各々好きに寝転んだり走り回ったりした。
    (うおーー!!広い部屋!!)
    (畳だ!!懐かしいな〜!!)
    (飯はまだか!?)
    (落ち着いてください皆さん……)
    (兄様!変わった床ですね!!うわぁ、景色もとても綺麗です!!)
    (お前も少し落ち着け)



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