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    kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5
    コンパスの86組(10、55、13、08)が好きな文字書きです。絵はかけません。
    感想、リクエスト(お断りさせていただくものもあります)はこちらへ→https://marshmallow-qa.com/kurokuro_happy5?t=ajqOjp&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

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    kurokuro_happy5

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    使い魔86ダムと魔女プレの話。魔女とサーティーンが契約した時の物語。

    羅針盤の魔女ーMake a contract with 13†Thirteen†ーこれは、羅針盤の魔女とサーティーンが契約した時の物語。




    零夜との契約後。
    魔女達はとある街に来ていた。
    「広い街ね」
    (うわー、人がいっぱいだ!)
    (踏まれそう……魔女様、肩乗っていい?)
    「構わないわよ」
    (零夜、頼めるか?)
    「どうぞ」
    あまりの人多さに、猫の姿のアタリとマルコスは魔女と零夜の肩に乗る。零夜はそっと、魔女の手を握った。
    「え……?」
    「はぐれたら困るから」
    きゅ、と恋人繋ぎになった手を魔女も握り返す。暖かい体温に自然と頬が緩み、二人は手を繋いで人混みの中を歩いた。
    「羅針盤はどうだい」
    「……この街を抜けた先ね。広い街だし、少しお買い物しましょうか」
    (そーだな!色んな物ありそうだし!)
    (色々買えたらいいね。……そういえば魔女様ってさ、服とかアクセサリーって興味無いの?)
    「え?」
    (いつも同じ感じだからさ〜。せっかくだし、何か探してみたら?)
    マルコスが言うが、魔女は困ったように笑って、
    「そうね。考えてみるわ」
    と言った。魔女は元から、あまり物を持たないようだった。街にいる女達のように着飾ることもせず、いつもの服に、いつものローブを着ている。零夜はなんとなく、魔女が自分が醜い存在だと思っていて着飾ることに抵抗を持っているのではないかと察した。魔女の過去は、あまり壮絶すぎるからだ。
    「……」
    零夜は魔女の手を強く握る。この手を離さぬように。しっかりと。
    ……そんな魔女達を見守る黒い影がいることに、気づかないまま。




    必要な物を買い揃え、街を出たすぐの森で休息をとっていると。
    「魔女」
    零夜が魔女を呼んだ。魔女が零夜の方を向くと、零夜は小さな小箱を取りだし、蓋を開けた。
    中には美しい宝石のブローチが入っていた。
    「これ……どうしたの?」
    「君にあげたくて買ったんだ。アレキサンドライト……様々な色を持つ希少な宝石。君に似合うと思って」
    「……」
    (やるじゃん零夜!)
    (よかったね、魔女様)
    初めて、人からプレゼントを貰った。その初めてが愛しの人からだということに、魔女はこの上ない幸せを覚える。
    「綺麗……私には勿体ないくらいだわ」
    「勿体ないなんてことないさ。君はこの宝石に勝るほど綺麗だよ。……あと、それから」
    「……?」
    「……過去なんて気にせずに、君は君のしたいようにすればいい。僕はどんな君のことも、全て愛しているから」
    「! ありがとう、零夜……嬉しい……」
    瞳をうるませた魔女が、ブローチに手を伸ばした瞬間だった。
    「きゃっ……!」
    「っ……!!」
    (うわっ!?何だ!?)
    突然強い風が吹き抜け、目を開けた時には。
    (!? ブローチが!!)
    「!!」
    小箱の中にあったブローチが消えていた。
    「そんなっ……!どうなって……!」
    「探し物はこれか?」
    頭上から声がし見上げると、木の上に黒いフードを被り、フェイスマスクをつけた男がブローチをチラつかせていた。
    (誰だ!!)
    「俺様?俺様はかっこよくてつよーい……」
    言いかけたところでバチバチッ!!と電気が走る音がし、男に向かってプラズマがいくつも飛んでいく。「おっと!」と男は木から飛び降り、地面に着地した。
    「あっぶねぇな!名乗りの途中で攻撃すんなよ、空気読めねぇな!」
    「零夜っ……!」
    「……君が何処の誰だかなんてどうだっていい。死にたくないならそれを返してもらおうか」
    掌の上のプラズマをチラつかせながら男を強く睨みつける零夜の腕に、魔女が抱きつく。
    「やめて零夜っ……!もしブローチに当たったらっ……!!」
    「当てないようにする、問題ない」
    「ダメよっ!あれはっ……!私が初めて、人から……貴方から貰った物だからっ……!!傷つけたく、ないのっ……!!」
    「魔女……」
    「おいコラ!人前でイチャイチャすんじゃねぇよ!!」
    魔女の懇願に、零夜はプラズマをしまう。男はニヤついてブローチをチラつかせている。
    「っ……それを返して。お願い」
    「……なら、小間使いに任せず自分で取りに来るんだな。羅針盤の魔女サマ?」
    「……」
    (狙いは魔女様か……!!)
    (魔女様、隙を作って!僕達が取り返すから!)
    「聴こえてんぞ使い魔共。そこから一歩でも動いたらこのブローチ粉々にしてやるからな」
    (!!)
    使い魔の声がきこえるということは、只者じゃない……それを抜きしても、彼の屈強な体格からしてブローチを片手で壊すなど簡単だろう。
    魔女は目配せで三人に大人しくするよう伝えると、男の前まで歩いていく。
    「……ブローチを、返して」
    「ほら。ここにあるぜ」
    「っ……!!」
    高い位置に見せつけられるブローチに手を伸ばした瞬間。男が魔女の手首を掴み、引き寄せてニヤリと笑う。
    「!?」
    「じっとしてろ。そう、そのままだ……」
    男の赤い目が光ったと思うと、魔女の力が抜け男に体を預けてしまった。
    「魔女!!っ……!?」
    (零夜!?体がっ……!!)
    (何が起こってんだ!?)
    そして零夜の体が猫の姿になってしまう。魔女の力が弱っている証拠だ。
    (僕の魔女に何をした……!?)
    「……邪視。見た者に災いを齎す力。今こいつは俺の目を見た。俺の意思が働く限りこいつは元に戻らない」
    (何でそんなことっ……!!魔女様を返して!!)
    「まぁまぁ、心配すんな。ちょっくら借りるだけだ、それまでは殺さねぇ。俺様とこいつが仲良しこよしになって戻ってくるまで、猫らしく昼寝でもしてるんだな。んじゃな〜」
    (待てっ……!!)
    男は魔女を抱き抱えると、黒い羽を散らして消えていった。
    (……)
    (魔女様の居場所はわかるはずだ、すぐ追いかけるぞ!)
    (行くよ、零夜!)
    (わかってる……待っていて、魔女……!)




    「……ん」
    目覚めると、知らない天井が視界に映る。ゆっくり体を起こすと、「起きたか?」と声がした。
    「…………何が目的なの」
    「別にとって食ったりはしねぇよ。ただ、お前に興味があるだけだ。羅針盤の魔女サマ」
    男は大仰な手振りでそう言う。魔女は特に拘束などされておらず、今は体調も悪くない。しかしここはどこなのかわからないし、未だにブローチは彼の手中だ。
    「何をしたら、ブローチを返してくれる?」
    「そんなに大事なのか?こんな安っぽいもんが」
    「値段なんて関係ない。それは私が初めて、愛しい人から贈ってもらった物……大切な宝物なの。だから、返して。私に出来ることなら何でもするから」
    魔女の真っ直ぐな瞳に男は目を細める。
    「何でも、ねぇ。なら魔女サマ、俺とお話してくれよ」
    「お話……?」
    「おっと、自己紹介がまだだったな。俺様はサーティーン…………死神だ」
    「!?」
    死神と聴き、魔女は強く反応した。魔女の旅の目的は、自身の死を探すこと……死神とは、それに直結するもの。
    「しに、がみ、ってことは……貴方は……私の命を、終わらせることが出来るの……?」
    「ん?あぁ〜……そういやアンタは、死を探してたんだっけか?あぁ、出来るぜ。だって僕ちゃん死神サマだから」
    魔女は思わず羅針盤を確認する。羅針盤の針は……
    彼を指していた。
    「……貴方が、この旅のゴールだと…………そういうこと?」
    「そうなんじゃねぇの?知らねぇが」
    「……」
    魔女はぎゅっと羅針盤を握る。彼に頼めば、死ぬ事が出来る。だが……魔女の中には迷いがあった。
    魔女が死ねば使い魔達……つまり、零夜達も死ぬのだ。
    ここで死んだら、離れ離れのまま死んでしまうことになる。
    あれだけ愛した使い魔と離れ離れのまま死ぬなど、今の魔女には考えられなかった。
    「お前にまとわりつく死の匂いに惹かれてな。あの赤い猫の餓鬼と契約する前から見てたんだぜ。ひでぇもんだな、何をしても死なずにいくらでも再生するなんざ……悪魔もびっくりだぜ」
    「……」
    「でも俺様なら終わらせられる。お前の命をな。どうだ?俺様に賭けてみねぇか」
    死神の誘いに、魔女は胸の前で手を握った。
    「……もちろん、頼みたいのだけれど。すぐというわけにはいかないわ。あの子達と言葉を交わしてからがいい」
    「あぁん?死にたがってる割にワガママだな。看取られたいってやつ?」
    「看取る間もないわ。あの子達も私が死んだ瞬間に死ぬもの。だから、その前に……色々と言いたいの」
    死神はにやりと笑う。
    「ダメだって言ったら?」
    「……諦めて、他を探すわ」
    「けどもうこんなチャンスねぇかもしれねぇぞ?死神さんに目をつけられるなんて、こんな願ってもないチャンスを棒に振るのか?」
    「っ……」
    魔女は心の底から、死を望んでいた。生まれてからずっとずっと、死を待ちわびていた……そのチャンスが今、目の前のこの男に握られている。
    「どうする?羅針盤の魔女サマ」
    「……どうして、ダメなの?あの子達にお別れを言うのが」
    気になったことを問うと、死神は相変わらずニヤついたまま、
    「俺様が気に入らねぇから。これはアンタと俺の契約で、他の介入は必要ねぇ」
    と言った。
    「アタリと契約する前から見ていた、と言っていたわね。どうして今の今まで出てこなかったの?何故今になって」
    「しつけぇぞ。アンタに与えられた答えはYESかNOだけだ。俺様はそんなに気長じゃねぇの、とっとと答えな」
    「……」
    魔女は違和感を覚える。ふと、羅針盤に視線を落とした……
    「!」
    そしてあることに気づく。
    この死神は、もしかして。
    「貴方が欲しいものは、別にあるんじゃない?」
    「……はァ?」
    「本当は、私に何をして欲しいの」
    「何言って」
    「答えて」
    「言ったろ、アンタに与えられた答えはYESかNOかだ」
    「貴方が私を殺すメリットが分からない。人助けだとも思えない。本当は……他に何か、目的があるんじゃないの」
    「……」
    「答えて、サーティーン」
    魔女に詰め寄られ、サーティーンは眉を顰める。
    「それを聴いてどうする?」
    「……私に出来ることがあるのなら、してあげたいの」
    「……」
    サーティーンは魔女の方へ歩み寄ると、魔女を座らせた。そしてその隣に座る。
    「……俺だって、わかんねぇんだよ。何でアンタをここに連れてきたのか、何でこんな取引を持ちかけたのか」
    「え……?」
    「アンタを追いかけて、ずっと見てきた。アンタが何をしてきて、何をされてきたかも見てた。……ブローチを貰って幸せそうに見てるアンタを見て、何でかムカついてよ。気づいたらブローチを奪ってたんだ」
    「……」
    「なぁ魔女サマ。何であんなことしちまったと思う?ほんとは、アンタがどうしようもなくなった時に手を貸すつもりだった。それまでは姿を見せないつもりだったんだ……なのに、何でなんだろうな」
    サーティーンが俯く。唯一彼の表情を判断できる目元が、髪で隠れて見えない。魔女はサーティーンの白い髪を、手で退けた。赤い瞳がちらりと、魔女の方を見る。
    「……寂しかった、から?」
    「!」
    「貴方は、気づいて欲しかったんじゃないの?」
    「……ハッ、何を言うかと思えば」
    「違う?」
    「……」
    魔女の言葉に、サーティーンは軽口をしまった。そして魔女の手を握る。両手でぎゅっと、包み込むように。
    「……あぁ、そうだな。チャンスを探してたのかもな。アンタと話すチャンスを」
    「貴方も、居場所が欲しかったの?」
    「さぁな。ただ……俺もアンタと同じ物を欲しがってるかもしれない」
    「同じ、物?」
    「死だよ。俺はきっとアンタよりずっと長く生きてる。だが死神である以上死は訪れない。……なぁ魔女サマ。俺達は同じで、同じじゃない。俺は独りで、アンタは独りじゃない。アンタは契約に縛られてる、俺は自由だ。けど死にたい思いは同じ」
    「……つまり?」
    「……」
    これが素直になれない彼の長い前置きだと、魔女はわかっていた。サーティーンは魔女の胸に手を伸ばす。
    「……お前の心臓を俺に寄越せ、羅針盤の魔女」
    「……」
    「それが、俺との契約になる」
    あぁ、と。魔女は悟った。
    この死神はきっと……独りが嫌だった。なのに不器用なものだから、こんな遠回りなやり方になってしまったのだろう……
    魔女は目を伏せ、頷いた。
    サーティーンと目を合わせ、顔を近づける。
    「私に、死を頂戴。サーティーン……」
    「……何でだろうな。アンタが居れば俺は何でも出来る気がするぜ、魔女サマ」
    マスクを外したサーティーンと魔女が合わせた唇は、死の味がした……





    元の森に戻った魔女を見つけた途端、零夜が駆け寄ってくるなり魔女を強く抱き締めた。
    「魔女っ……!!」
    「ちょっとっ、零夜っ……!?」
    「あぁっ、よかったっ……僕の魔女っ……!!君がいなくなったら、僕はっ……!!」
    「零夜……心配をかけてごめんなさい。何ともないわ」
    (魔女様!!)
    (無事でよかった〜!)
    魔女も零夜を抱きしめ返す。猫の状態のアタリとマルコスも魔女に駆け寄って来て、魔女は二人のことも抱きしめた。
    「良かったな、また会えて」
    「っ……」
    「待って零夜」
    「退いてくれ魔女。そいつは敵だ」
    「敵ィ?これを見てもそう言えるか?」
    「!?」
    強く睨みつけてきた零夜にサーティーンが見せたのは、瓶に入った……
    魔女の心臓だった。
    「魔女っ……!何故彼と契約を……!?」
    「……死ねると思ったの。死神と契約すれば。けど」
    「残念ながらお手上げだ。どうしたってそいつは死なねぇ」
    (どういうことだ……?死神って死を運ぶんだろ?)
    (死神ですら魔女様を殺せないの……!?)
    あの後。サーティーンは知る限りの方法で魔女を殺したが……全て上手くいかなかった。死神は鎌を振るだけで魂を狩ることが出来る、が。
    魔女の魂はどうやら、呪われた体の中に雁字搦めに縛り付けられているそうなのだ。
    「つーことで俺様にもよくわかんねぇし、けど契約もしちまったから晴れてお前らの仲間入りよ。つーわけで。これからよろしくな?」
    (魔女様!!何で契約なんかしたんだよ!!)
    (人の大切な物ぶんどるやつとこれから一緒なんて信じられない!)
    「り、理由があるの……ごめんなさい……いつか話すから、許してあげて」
    「魔女……彼に心臓をあげたのかい……?僕との契約はどうなるんだ……?あとでたっぷり聴かせてもらうからね」
    「う……わかってるわ……」
    こうして、突然現れた死神、サーティーンと契約を結んだ魔女。そしてわかった事実……死神ですら、彼女の命を終わらせることは出来ない。
    あの時羅針盤がサーティーンを指していたのは、死を与えてくれるからではなく……サーティーンも魔女の旅に必要な契約相手だったからだ。
    (……どうすれば死ねるのかわからない、けれど。進むしかないわ。それが私の旅だもの)
    魔女は胸元に手を添える。そこには零夜から貰ったブローチが光り輝いていた…………



    この後、とある戦争に巻き込まれた羅針盤の魔女一行は、銀髪の氷の騎士と出会うが……
    それはまた、別のお話。
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